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作戦会議

ようやく纏まった文字数になったのでUPします。

私にしては結構マジメに更新してるなと感心しております。

 部屋に全員が入ったのを確認して伊織いおりが扉をそっと閉めた。


「さて、睦月拓海むつきたくみ。お前の考えを聞かせてもらおうか」


 俺の目の前に御影みかげ、御影の横に伊織、俺の左隣にあきらがいる。昨日彰と話し合った後、やっぱり御影と伊織に話してみようという事になって、朝早くから屋敷に出向いた。例の屋敷の奥の部屋で四人は向かい合っている。


「まず、今のステーション状況は俺から見てかなり悪い」


 各ステーションが協力せず、各々勝手に動いていては敵の思う壺である。俺の言葉に御影も頷いた。


「確かに。お互いの位置の確認は常にしているが、すぐに駆け付ける事が出来る距離ではない」


 どれだけの距離が空いているか分からないが、まずお互いが干渉できる位置に移動するのが第一だ。一体各ステーションの『守護者しゅごしゃ』達は何を考えているのか。


「ですけど~他の『守護者』って人の言う事素直に聞く人たちじゃないですよね~」


 伊織がのんびりした口調で困ったことをいう。その言葉を聞いた御影が頭を抱えている。どうやら『守護者』とやらは変人の塊ばかりのようだ。普通一直線の俺の言葉に耳を傾けてくれるだろうか。


「そうだがまあ、それはこちらの提案次第だろうな。変人だらけだが馬鹿ではない……はずだ」


 確かにここにいる御影も年齢の割にはちょっと大人びていてある意味変人だ。最後の語尾が気になるが、相手が御影程度で言葉が通じれば何とかなるだろう。


「あ、そういや聞くの忘れてた。御影っていくつなんだ?」


 気にはなっていたが中々聞く機会がなかったので、思い切って聞いてみた。


「言ってなかったか? 10歳だが」


 俺は驚いて思わず彰の方を見ると、無表情だがわずかに驚いている。確かに小さいとは思ったがそんなに幼かったとは。こんな子供にステーション1つの命運任せるってどういう世界だよ。そりゃ性格もしっかりするよな。


「全然可愛くないけどね~」


 横で楽しそうに手を叩いて笑っている伊織に、御影は敷いていた座布団を投げつた。クリーンヒット!


「ぐ、座布団一枚……」


 伊織が渾身のギャグをかまして倒れこんだ。


「まあ、馬鹿はほっといてそろそろ話したらどうだ? 拓海お前の考えを」


 ほとんど空気と化していた彰が先を促してくる。確かにちょっとのんびりしすぎたか。


「じゃあ、聞きたいこともあるから始めるな」


 俺の一言でここにいる全員が姿勢を正した。なぜ普段からこの空気出せないんだろうコイツら。


「まずステーション内のアエルの流れについてだが、一定の法則があるのか?」


 俺の質問に御影が少し考えて口を開いた。


「アエルの流れに法則はない。大体各ステーションの『守護者』が効率のいい流れを作って循環させている。だからステーションによって流し方は違うと思う」


 特に決まった道がある訳ではないようなので、一つ目の課題はクリア。


「じゃあ、次にこのステーションから別のステーションにアエルを流すことは可能か?」


 今度は伊織が考えて御影に目配せすると、御影はゆっくり頷いた。


「物理的に繋がっていれば可能だと思うよ~。やったこと無いけどね~」


 伊織が答えるとその間に何かを考えていたのか、御影が発言を求めて挙手していた。俺は軽く頷いて先を促す。


「お前の言いたいことは何となく分かる。1つのステーションのアエル供給が絶たれた場合に、他のステーションから供給する方法だな。出来ない事ではないし、今までに考えた事もあるが、一つのステーション分のアエルを吸い出し供給するだけで私たち『守護者』は精一杯だ。多少余力があると言っても、もう一つのステーションを支えるほどの量は供給できない」


 これも事前に予想済みの答えで二つ目もクリアだ。


「こっからは本当に未知の考えだと思うんだが、1つのステーションに2つもしくは3つのステーションからアエルを供給した場合はどうだ?」


 俺の言葉に伊織と御影が驚いた顔でこちらを見ていた。


「いや、可能かもしれんが、どうやってアエルを流すつもりなんだ?」


 御影の顔色が変わっている。今までこの世界の人間はこの世界の在り方が普通になっていて考えつかなかったのだろう。


「さっき伊織が言っただろう。物理的に繋がっていれば可能だと」


 伊織が彰の言葉にようやく気付いたようだ。彰には昨日のうちに俺の考えは聞いてもらっている。二人で他にも方法を考えたが、多分これが一番成功率が高いだろうという結論に達したのだ。


「何かステーション同士を物理的に繋げる方法はあるか?」


 最後の課題をクリアするべく、俺は質問を投げかけた。


「鉄道と車を各ステーションに送る通路がある。設置場所の移動も可能なのである程度の自由はきく」


 これで最後の課題もクリア。御影の答えに俺は思わず笑みを浮かべた。


「つまりどういうことだ?」


 さすがに御影でもこれより先は想像がつかない様だ。困った顔をしている。


「俺の考えはこうだ。まず5つあるステーションの1つ目を真ん中に置き、残る4つのステーションをその周りに置く。真ん中のステーションから通路を4つ伸ばし、他のステーションに繋ぐ。他のステーションは左右にどちらかの通路を伸ばして隣のステーションと繋ぐ」


 俺の考えに伊織と御影が口を開けたまま固まった。


「つまり、1つのステーションがアエル供給を絶たれた場合、左右のステーションと中央のステーションからアエルの供給を得ることが出来るというのか?」


 呆れたような顔の御影が俺を見ている。まあ確かにかなりの力業だが、出来ない事ではないだろう。


「真ん中の重要なステーションが絶たれた場合も周りのステーション4つから供給が可能だし~、周りのステーションも最低でも左右2つのステーションから供給してもらえるから~、確かにギリギリ保つね~」


 完全に普段のアエル量とはいかないが、生存するのに必要最低限の量が一時期確保できればいい。


「アエルの供給が絶たれた場合、復旧までにどれくらいかかる?」


 俺の言葉に伊織と御影が顔を見合わせた。苦そうな顔をしている。


「言いにくいことだけどね~。『守護者』が生存している場合は2、3日で復旧出来るけど、『守護者』が生存していない場合は『守護者』を探すことから始まるから、何年かかるやら」


 つまり何が何でも『守護者』を護るのが最優先のようだ。


「お前の考えは分かった。だが出来れば専門家に一度検証してもらったほうがいいだろう」


 俺の考えを聞いてしばらく考えてから御影が口を開いた。


「専門家?」


 彰が伊織に尋ねる。


「いるんだよね~アエルの研究しているちょっとマニアックな人」


 面倒臭そうに伊織が答える。


「それは何処にいるんだ?」


 出来ればすぐに訪ねて聞いてみたい。身を乗り出して聞くと御影と伊織が実に気まずそうな顔をした。


「すぐには会えないのか?」


 不審に思った彰が尋ねる。困ったようにため息を一つ吐いた伊織が口を開く。


「このステーションにはいないよ~」


 ……それってつまり。


「別のステーションに行けってか?」


 俺の言葉に伊織と御影が同時に頷いた。結局他のステーションに行かないと話が始まらないという事か。


「ステーションの場所は常に極秘の信号で把握しているが、『守護者』同士が連絡を取れる訳ではないので通信での説明は出来ない。それこそ敵にステーションの位置がバレてしまうからな」


 つまり御影の言葉から、アポを取って行くことは出来ず、出たとこ勝負で乗り込んで行かなくてはならなくなる。


「5年前に全ステーションが一度だけ連絡を取ったことがあってな、5つの内1つのステーションが再び襲撃を受けた。その時はステーションを護りきれたが、状況を確認するために短い時間だが通信で会合を開いたんだ」


 御影の話によれば、その時にお互い名乗りあい、各ステーションの状況を報告しあったらしい。その中にアエルの研究を専門にしている人間がいたというのだ。


「よく連絡を取る覚悟が出来たな。下手すれば敵に位置がバレるだろうに」


 それだけその時の敵『影』が脅威だったという事か。


「最大出力の信号を出して連絡を取ったんだ。なんせ最初の襲撃から時間が経っていて何人か『守護者』も交代していたからな。奴らの事を詳しく知らない『守護者』もいた」


 話には聞いていても実際にその時代の『守護者』に聞いたほうが対処法が練りやすい。他の『守護者』にとっても願ったりの会合だったのだろう」


「そこで~話をした一人がステーションを継いだばかりのアエル大好き少女だったわけ」


 伊織が楽しそうに語っている。いや、アエル大好きって言われても研究対象として好きなんだからな。アエルは一種のエネルギーだからな。


「それが第1ステーション『アンセル』の『守護者』リグレット・フェザーという女性だ。まだ10代の若さだったが、かなり切れる女性だった」


 思い出すように御影は目線を上に向ける。


「美人だったしね~」


 伊織の言葉に御影が顔を真っ赤にして焦っている。おい、子供をからかうなよ多感なお年頃なんだから。


「……って待てよ5年前って、御影は5才だろうが!」


 さすがに当時5歳の子供が聞く内容じゃないだろう。


「まあ、話自体はあまり記憶に残っていない。私がこのステーションを継いだのは2年前で、その会合には先代が出ていた。私は傍らでその様子を見ていただけだ」


 いや、それでも8歳で継いでんの? 親は何してんの?


「つまり、俺らは第1ステーションにまず行く必要があるって事なんだな?」


 俺の言葉に御影が頷いた。仕方がない、それしか方法がないなら行ってやろうじゃないか。ってなんだか彰が難しそうな顔をしている。


「まあ、行くのはいいんだが。拓海が行くとこならどこでも付いて行くし。ただ、行ったはいいが、入れませんでしたは困る」


 そこ考えてなかったわ。たどり着いたら開けてもらえなくて門前払いじゃ話にならない。


「そこは私の紹介状を持たせる。近くまで行けば通信は使えるからそれを提示すればいい」


 御影の言葉に少し安心した。とりあえず中には入れそうだ。


「ただ~嫌われたら入れてくれないかもね~」


 伊織が酷い事を言いながらケラケラ笑っている。


「ちょっと待て伊織の態度見て思ったんだが、お前一緒に来る気ないだろう!」


 元々真剣味にかける奴だが、さすがにちょっと他人事すぎる話し方だ。


「そりゃそうだよ。『護人』が一人もいなくなったら誰がこのステーション護るんだよ~」


 言われてみればそうだった。流石に伊織まで連れて行ったら御影とステーションを護る者がいなくなる。


「いいんじゃないか? 多分こいつを連れて行ったら相手を怒らせるだけだ」


 伊織を指さしながら彰が言う。確かに正論だ。これ以上ないくらい説得力あるな!


「その意見には私も賛同する」


 何故か御影が力強く同意した。





「シャトルの方はすぐに準備できる。ただ」


 ちょっとまて御影、その最後の言葉が異様に不安を煽るんだが。


「「ただ?」」


 思わず俺と彰が聞き返した。良かった不安だったのは俺だけじゃなかったみたいだ。


「長年シャトルを運用してなかったからね~。パイロットがいないんだよ~」


 それ絶対ヤバイやつじゃないか。俺たちに操縦も覚えろって事か? 言ってる伊織はやっぱり笑顔。ここ緊張感漂う場面だからな。


「さすがにお前たちだけで飛ばすのは無理なので、最新のAIを積んどく。そいつに任せてくれたらいい」


 おお、この世界にもAIあるんだ。でも感情とかなさそうだから、基本の操縦だけ任せる感じなのかな? まあそれは見てみれば分かることだ。他に選択肢もなさそうだし。


「家の人間に挨拶もあるだろうから、2日後にまた来てくれ」


 なんだかゲームとかで危険な場所に向かう人間の最後の挨拶みたいな時間くれるなっ! だが、家族に話が出来るのは有り難い。


「父さんと母さんに何て言おう……」


 さすがに本当の事を話すわけにはいかないから、何か言い訳考えとかないと。


「そうそう~、二人が住めるように部屋用意しといたから、出発までに引っ越しといて~」


 伊織がさらーっと無茶なことを言ってくる。


「は? 引っ越し? 聞いてないぞ」


 俺の言葉に伊織が不思議そうな顔をして、


「あれ? 言ってなかったけ」


「一言も聞いてねーよ!」


 つい最近聞いたセリフが俺の口から自然に迸った。


「すまん。こいつに任せたのが間違いだった。敵の襲撃がいつ来るか分からないから、家族と一緒という訳にはいかないだろう。だからお前たち用に部屋を用意した」


 確かに夜とかに襲撃とかあったら、家を抜けだすの大変だからな。その理由を聞かれても絶対答える訳にはいかないし。


「で、二人一緒の部屋だろうな?」


 彰が真剣な声で御影に尋ねる。いや、そこ重要か?


「ああ、その方がいいだろう。もちろんプライベートも大事だから各自の寝室は別にあるぞ」


 得意げに御影が胸を張っている。部屋が別なのは当たり前だ。雑魚寝は嫌だぞ。彰は仕方がないという顔をしているが、いやホント当たり前だからな。


「じゃあ、家族への説明と引っ越し一気にやんなきゃいけないのか……」


 考えただけでぐったりしてきた。


「引っ越し業者は手配済みだからね~」


 そのいい仕事したって顔止めてくれ。


「えっと、明日の午前中~」


 伊織の言葉に俺と彰までも一瞬固まった。


「「聞いてない!」」


 思わず俺と彰の声がダブった。

「あははは、うんうんこれは言ってない~」


 笑顔で言っている伊織を指さして御影に訴えると、頭を抱えながら頷いてくれていた。ホントこいつ、人に説明するって事をナチュラルに省略するよな。

今回の話の計画全貌です。

最終的にはここを目指します。ようやく伊織の性格が掴めて来たところなので、忘れないうちに頑張って続きを書こうと思ってます。

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