四条 彰
頑張って書いたら一区切りついたので、上げてみます。
まだ手探り状態なので、修正とか入れるかもしれません。
ストーリーは考えつくのに手がついていかない。
文章が下手すぎて思ったように表現できなくて苦しんでいます。
どんだけ小説読んでも書くとなると難しいですね。
「さて、久しぶり~彰。元気そうで何よりだよ」
にっこりと笑った伊織が場を仕切る。いいのか、お子様ほったらかしで。
「これから刀夜を探そうとしていたんだけどな。会えて良かった」
彰が伊織を無視して俺に話しかける。お前は伊織を無視かい!
「とりあえず、この子何?」
気になっていた御影を指さして聞いてみる。さっきからほとんど気の毒なほどの爪弾き状態だけどな。
「やっと私を話に入れる気になったようだな。このメンバーではお前が一番話が通じそうだ」
重い言葉とは逆に暗い中で一筋の光を見つけたような表情で御影が俺の方を向く。すまん、このメンバーは話し方間違えると全然話し通じない奴らだから。
「彼はね。このステーションのアエルの流れを守る『守護者』という役割をしている人だよ~」
初めて聞くステーションの単語を拓海の記憶から掘り起こす。
「えーと、ステーションは確か7個あるんだっけ?」
そう、何から何まで始まりの世界に似ているこの世界、実は一つだけ大きく違っている事がある。それはこの世界が宇宙に浮いている巨大なステーションだという事だ。俺も拓海の記憶で知ったときは驚いた。だが、『守護者』の単語は拓海の記憶にもない。
「まあ、ステーションはボールみたいな形で上半分が透明になっている感じだな」
彰も自分の体の記憶を掘り起こして整理しているようだ。
「そうそう、その上半分が居住地になっていてボールの真ん中あたりに街がある感じね~」
まあぶっちゃけ昔の人が思っていた丸くない平らな世界が透明な物質で覆われているイメージだ。その透明な部分に空が投影されて宇宙にいるとは思えない快適な日常を送れている。
「なるほど、お前たちは記憶は見れても実際に見ていないので擦り合わせが必要というわけか」
この世界の人間にとっては当たり前の事を念入りに確認する俺たちを御影が納得したように見ている。
「そういうこと。この人物が知らないことは俺たちも知りようがないということだしな」
御影は子供ではあるが、かなり思慮深く頭がいい。柔軟性もある。
「で、その『守護者』が守るこの場所が~アエルの流れの重要な箇所って事なんだよね~」
伊織が足元の板を指さして言う。つまりはこの屋敷が重要拠点ということなんだな。
「そしてここにいる伊織は『守護者』である私とアエルの流れる大事なこの場所を守る『護人』という役目を担っているんだ」
つまりこの場所ごと『守護者』を守っているのが伊織ということになる。御影の説明で伊織の役割も分かった。
「あんたらの役割は何となくだけど理解した。だけどあんたらは一体何からこの場所を守っているんだ?」
そう、敵がいなければ守る必要がない。単なる警備員って雰囲気でもない。
「そうそう、拓海はそうじゃないと♪ 話が早くて助かるよ。敵は拓海もよーく知っている奴らだよ~」
俺が知っていて人を襲ってでも世界を破壊しようとしている奴ら、
「また『影』が来ているのか」
俺の言葉に伊織が頷く。
「この世界の何十年も前にやってきてステーションを襲い始めているよ~。これは極秘だけどね、7個あった内の2個は奴らによって破壊されている。残りのステーションはこの『グラークルス』を含めて5個だよ」
一般にはステーションの破壊は発表されていない。まだ行方不明の状態なのだ。結局は破壊されていたという事か。
「他のステーションの位置は把握しているのか?」
2個のステーションが破壊されて混乱が起きていない事から他のステーションとここのステーションとの通信及び交通は遮断されているのだろうか?
「お互いに干渉しないようにして位置がバレないようにしている。まあ、『守護者』同士には位置を知らせてはいるんだが」
他のステーションがやられても自分の所は守るようにしているのか。そんな事を考えなければならないほど追い詰められているのだろう。告げる御影も辛そうな表情だ。
「つまり、敵は各個撃破出来る状態が出来上がっている訳だ」
敵は一個ずつ確実に潰していけばいいので楽である。援軍は決してこないのだから。
「そうなんだよね~。愚策である事を何年も言い続けているんだけど、聞く耳もたなくて~」
伊織はお手上げとばかりに肩をすくめた。
「こいつの記憶にも他のステーションに行った記憶はないな。昔は行き来があったようだが」
沈黙を保っていた彰が口を開いた。やっとエンジンかかってきたか。
「まずはそのステーションに通達して助けに行ける範囲に集まってもらう必要があるよな。そんで、アエルの流れを遮断された場合の対処法もいるし」
俺の言葉を聞いて伊織がにやりと笑った。嫌な予感がする。
「じゃあ拓海、新しい『護人』として一緒に頑張ろうね!」
「承認しよう。睦月拓海、四条彰お前たち二人をこの『グラークルス』の『護人』とする」
俺は驚いて彰の方を見ると片手で顔を覆っていた。
「……だから、嵌められたんだよ拓海は。頭良いのに人も良いから」
どうも呆れられているようだ。そしてまたしても逃れる事が出来ない事にまた巻き込まれたのを自覚した。
「まだ葵を探してないのに」
今日一日で色んな知識を詰め込んだらもう夕方になっていた。流石に今日は家に帰ることにして俺はまたしても高そうな車に乗って家まで送ってもらった。
「お帰りー拓海。体は大丈夫なの?」
俺を迎えに出てきた母さんが玄関に出た途端に固まった。
「ねえ、拓海そちらはどなた? え、まさか」
俺の後ろに当たり前のような顔で立っている彰を見て母さんが頬を染めている。おい、父さんに見つかったら怖いから止めて。
「友達。今日は泊めるから」
俺の言葉を聞いて彰が頭を下げる。
俺たちは呆けた母さんを玄関に残して急いで俺の部屋に移動した。
「にゃあ」
部屋の扉を開けると子猫の鳴き声が聞こえてきた。
「ただいま」
拾ってから面倒を見ていると段々と元気を取り戻し、今やヤンチャ盛りである。
「猫を飼っているのか?」
続いて部屋に入ってきた彰がじーっと猫を見ている。
「シャーッ」
彰が手を出すと子猫が威嚇した。あれ、こいつこんなに人見知りだっけ?
「なんだろう、こいつ見てるとムカつく」
彰まで臨戦態勢になり、まずい雰囲気になってきた。
「彰、この子に手を出したら許さないからな」
猫に言っても無駄なので、彰の方に釘を指しておく。何故か彰が捨てられた子犬の様な目で俺を見てきた。いや、イケメンにそんな顔させたら俺の方が悪い気になるって。
「仲良くしろよ」
子猫と彰を無理やり握手させ、俺は部屋の床にどかっと座った。この世界でも家では靴を脱ぎ、床に座る生活が出来るのは有り難い。
「結局、拓海は『護人』を受けるのか?」
俺の前に同じように座った彰は俺の部屋を懐かしそうな目で見ている。そう、この部屋は始まりの世界の俺の部屋によく似ているのだ。
「なんか厄介ごとに巻き込まれるのは宿命の様な気がしてきた。葵を見つける前にステーションが破壊されて終わりっていうのは困るからな」
実際ステーションの7個の内2個はすでに破壊されている。他のステーションもどうなるか分からない。
「この世界の人間はどうしてアエルの事を聞かされてないんだ?」
さっきから引っかかっていた疑問が思わず口をついた。
「それを狙う人間がいるからじゃないのか? 御影とかいうガキはいわゆるこのステーションの命運を握る人物って事でまあ重要人物だ。もしかしたらその地位を手に入れたい人間が出るのを恐れているのかもしれな」
俺のつぶやきに彰が律義に答えてくれる。確かに御影の地位を手に入れればこのステーションの中の人間は逆らう事が出来ない。そういうのに憧れる人間がいないとは言えない。
「極秘裏にステーションを護るか。だが、今までの経験でアエルの流れを止められると人間は生存することが出来なくなるからな。うーん、その事について考えはあるんだが、技術的に出来るかどうかが俺には分からないんだよなー」
俺の言葉に彰は驚いた顔をした。
「何か思いついたのか? また突拍子もない事を言い出すんじゃ」
困ったように彰が言うのがちょっとムカつく。俺が常識がない奴の様に言うが、お前と葵に比べたら俺すっごい普通の人間だからな。
「お前には教えない」
ちょっと意地悪してやろうと怒ったふりをすると、彰が途端に捨てられた子犬の様な顔になる。うん、ヤバイこれ癖になりそうだ。
「……俺が悪かった。拓海怒らないでくれ」
項垂れる彰の貴重な様子が見れて満足した俺はこれ以上彰をイジるのは止めにした。
「わかったよ。それより伊織や御影に話す前に聞いてくれないか。お前に話して整理したいんだ」
まだまだ内容が固まっていないので、彰と話して俺の考えていることを軽く纏めて使える部分と使えない部分を考えて貰いたいのだ。
「そうか、俺が一番最初に聞くんだな。分かった話してくれ」
機嫌を直した彰が張り切って姿勢を正した。さあ、これから自分の考えを話そうとした途端、
「拓海―、ご飯できたわよ」
母親の声が階下から聞こえてきた。そういや腹減ったなと思って彰と頷きあった。
母親は始終ご機嫌、父親は不愉快そうな顔。そんな地獄の夕食を終え、俺達は部屋で再び向かい合い、真剣に話し合いをしていた。予定外の。
「だから、客間があるからそっちで寝ろよ。ベッドあるから」
俺の言葉に彰は思いっきり首を振る。何故か子猫も必死で首を振っている。
「ここで寝る。床でいい」
もうちょい高度な話し合いがあるのだが、この話題が片付くまでお預けである。
「分かったよ。この世界にも布団はあるから、それでいいか?」
俺の言葉に彰は早速布団を探してクローゼットを調べ始めた。どうやってもこの部屋で寝るっていう意思表示だな。
「それより、彰は家はどうしたんだ?」
こいつは一応人気俳優の体に入ったんだから豪華な家があるはずなんだが。
「こいつの家は家庭崩壊してて、両親はほとんど帰ってこない。父親が俳優で有名人だったから乗っかって俳優やってただけだ。最初はやる気のないダメ人間だった」
つまりあれだ、2世タレントってやつなんだな。
「でも、拓海の記憶ではそいつの演技はなかなか良かったけどな」
そう、結構な頻度で映画やドラマに出ていたが、演技はかなり上手かった。あれがやる気のない奴の演技だとは思いたくないんだが。
「……まあ、やる気はなくても天才だった。そこが奴の幸運だった」
四条彰は事故にあった。実際その事故で本物の彰は亡くなっている。せめて彼の最後が安らかであったらいいのだが。
「大丈夫。最後は満足してたよ」
俺の顔を見て、彰がそう言った。何もかも恵まれているように見える人間でもそうでもない。人間ってやつは実に複雑である。
「そういや金髪にしてたけど、あれもキャラづくり?」
テレビでは金髪をキラキラなびかせて王子様キャラやってたんだが。
「そうそう、実際は両親に反発して染めたんだが、予想外に似合ってたみたいでそのままデビューしたんだ」
芸能人の裏事情は俺ら一般人では計り知れないもののようだ。
「両親っていうとあの俳優の四条光が親父さんなんだよな」
俺の言葉に彰が嫌そうな顔をした。こりゃ本物の彰の感情をそのまま継いでいるのだろう。
「そうだよ。『かっこよすぎるおじ様』で有名な」
おじ様ってあたりが微妙だが確かにワイドショーを度々賑わせていたな。
「モテすぎて浮気し放題みたいだ。母親もやたらボーイフレンドが多くてな。滅多に家に帰って来なかった。だからまあ当然息子も荒れ放題。記憶を覗くだけで馬鹿らしくなるよ」
とんでもねー家庭だ。テレビでは四条光は妻や息子と仲良くやってますー、みたいに言ってたのにな。家庭事情が最悪じゃねーか。
「最後まで親には認めてもらえなかったけど、周りのスタッフが優しくてな。徐々に心を開いていたみたいだ。あの交通事故もスタッフを庇って自分が車に轢かれたんだ」
最後の最後に満足して死んだのなら救われる。彼の魂が満たされたまま次の世界に行くことを祈ろう。
「さて、布団はひいた。四条彰の事はここまでにして、拓海の考えを聞かせてくれ」
何故か布団の上で正座している彰がこちらをじっと見ている。今は自分たちの出来ることを最優先にしよう。俺は彰にまだ纏まっていない自分のぼんやりとした考えを話し始めた。
メインキャラの彰の過去編。
どんどん犬化しているような気がします。