冒険の始まり
「ここだ。 狭いかもしれないが、まあ、一日二日は我慢してくれ。 明日、昼頃にまた呼びに来る。 」
と、踵を返し、、かけてまた戻ってくる。
「そうだ。 言い忘れていたが、鍵はしっかりかけておけ。 治安が悪いわけじゃないが、まあ念のためな。 」
じゃあ、と男は来た道を帰って行った。
今度は戻ってはこなかった。
ЖЖЖ
広くはない、と釘を刺された部屋だったが、木床2室に大きめのベッド、シャワールーム付きのこの部屋は一人で過ごすにはむしろ快適すぎるくらいだ。
(おっと。 そうそう。 鍵、かけないと。)
忘れかけていた。
ここがどこで、何故ここにいて、自分が誰なのか、何一つわからない以上、リスクを冒しに行く理由は無い。
保険はかけておくべきだろう。
カ チャッ
無事、本日最後のミッション " 施錠 " を終えたと同時に急激な睡眠欲に襲われた。。
安心からか 。 。
いや、不安は残ってはいるが。。
ああ、シャワーは朝起きてからにしよう。。
靴脱がなきゃ。。
「ふゎあぁぁぁ…っ。 」
混濁する思考も
ごつごつしたベッドも
頭に馴染んでいない枕も
通常なら寝にくい装束でさえ
大きな あくび が 包み こんで いった 。
ЖЖЖ
コン コン
目覚まし代わりとなったノックの音に跳ね起きる。
やばい、もうそんな時間かと内心焦りながらドアを開け、一言詫びてから、室内で支度を待ってもらう。
まあ俺も休みの日はこれくらいまで寝るてるな 、とか、よほど疲れていたんだろう、と入れられるフォローが逆に心に痛い。
さて、ようやく男と話せる状態になった。 と思った矢先、思いがけず大きな欠伸が出てしまった。
「よく寝れなかったのか? 」
「いや、そんなはずは…。 」
「ノックの音で目が覚めるくらいだ。 それはぐっすり寝れたとは言わない。無理はしなくていいから、頑張って少しだけ聞いてくれ。 」
なんだこの男。 神かよ。 絶対、社畜じゃないな。 こんな上司が欲しいわ。
などと思っているうちに、男は話し始めた。
ЖЖЖ
おばあ … 長老の話によれば、ナナ、お前は記憶喪失だ。 そして、原因はおそらく魔気の使いすぎらしい。 でな、その記憶を戻す薬は作れるそうだ。だが、生憎、材料が切れていてな、自分で取りに行けとのことだ。
ああ、あともうひとつ。 長老から話があるらしいから、もう一度お前を連れていくが、 、 いいな?
俺は黙って頷く。
ついて行くしかないのだから。
ЖЖЖ
「来たね、ナナ。 」
長老はくるりと椅子の向きを変え、少し神妙な面持ちで言った。
「セノ。 少しだけ、外してくれるかい。 」
セノ、というのは横のこの男の名だろうか。
男は、必要があれば呼んでください、 とシンプルに答え、部屋を出た。
「…ふぅ。 さて、ナナ。 どこまで聞いた? 」
俺はさっき聞いたそのままを話した。
「…が、俺が聞いた内容です。 」
「ま、その通りさね。 じゃあ少しだけ補足だ。 」
長老が付け加えた内容は
・俺と同時にこの世界に転移してきた人がいること
・そいつを見つければ記憶喪失を解決し得ること
余談として、長老自身も転移者であること。 自分としては、これが一番驚きだったが。
「…少し時間はかかるがね、お連れさんが今何処にいるのか探し出しとくよ。 そうだ、その間に学園に行って薬を作ってもらいな。 ついでに、アオイに会ってくるといい。 」
正直、混乱していた。
が、解決策はそれしかない。
「わかしました。 それで、その魔導学園(?)はどこに? 」
「ああ、学園はここから結構東だ。 正直、遠い。 怪物も出るし、一人で行かせるのは危ないね。 。 」
長老はそう言うと、セノ-例の男-を呼んだ。
そして、男が入ってくるなり
「セノ。 ナナの護送を任せる。 魔導学園までだ。 薬を作ってもらう。 今から書く材料も道中で調達しておくれ。 武器なら武器庫から好きなの持っていって構わないからね。 頼んだよ。 気をつけて。 」
ЖЖЖ
こんにちは。
イルミネです。
冒険の始まり(ほんとに始まっただけ)
はい。
ここからちゃんと冒険させます。
次の更新は土曜かな。