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乾燥豆子と弁当男子  作者: ムトウ
4.芹沢家にご挨拶
51/58

51.ガールズトーク。または、搾糖

 旧友と賑々しく再会し、しみじみほのぼの?と語らっておりますところに現れたのが我が弟でございます。

「健史?」

 なんだどうした。


 健史は、茸子・海苔子に軽く会釈すると、諒に向かって告げた。

「諒さん、よかったらこの辺の案内するけど、どうかな? 土産物とか買うんならつきあうし」


 どうやら、てんこさんあたりが気遣って迎えに寄越してくれたらしい。

 女子トークに巻き込まれて所在ないだろうから連れ出してあげなさい。あんたのお義兄さんになるんだし、どっか連れてってあげれば。的な。


 諒は頷いて、

「そうだね。そうさせてもらおうかな。あい子も久しぶりに友達に会ったんだから、積もる話もあるだろうし」

 あらら。すまねえな、気を遣わせて。

 茸子も海苔子もすまなそうに頭を下げた。

 

「お会いできて嬉しかったです。これからも、あい子共々よろしくお願いします」

 そう言って彼はニッコリ微笑んだのでございますが、諒よ、それはキラースマイルというやつだぜ。今、このふたり、確実にやられちゃったよ! 罪な人ね!


 諒と健史が連れ立って行くのもなんだかフシギな組み合わせだなあ、と後ろ姿を見送りつつ、目の前の友人ふたりが手ぐすねひいてるのにまったく気づいてなかったあい子さんなのでした。


 コーヒーお代わりしよっかなー(のん)。




茸「ちょっと豆子、くっそイケメンじゃないの!なんなのどういうことなのきっちり説明しなさいよ!」

海「この際あらいざらい吐いてもらわないとねえ」


 諒がハケた瞬間、我が友人どもは牙と爪も露わに襲いかかってきました(比喩)。がおー。

 あんな爽やかで性格もよさげな美男とように出逢い、愛を育んで結婚まで至ろうというのか、きりきり白状せい。

 ということらしいです。


 そんなこと言われましても。なんなんだよどいつもこいつも。

 これもすべて諒がムダにイケメンなのが悪い(八つ当たり)。


 ていうかさー。私だってよくわかんないのよ。

 全然釣り合ってないと思う。私は美人でもないしかわいいタイプでもないし、集団に埋もれがちの並程度、といってはそれすらおこがましいかもしれない程度の容姿に過ぎず、だからこそ最初はあまり近づかないでおこうと思ったし。


 もっとも、諒とふたりで過ごしているときは、そんなこと微塵も感じないんだけどね。そりゃそうだ。いちいち引け目感じながら付き合ってられるか。

 彼は、そりゃもうきれいな顔立ちですげーカッコいいけど、そういう、諒の姿かたち佇まいも大好きだけど。私にとっては、小やかましく説教かましてくる面倒くさい相手だったり、家族思いの優しい人だったり、他愛ない話をする気のいい男だったり、じゃれついてくる大型犬みたいだったりするし。

 要するに、諒は諒だし。ってだけのことなんだよね。


 なので、平素は完全に忘れ果てておりますが、端から見ると“釣り合ってない”と思われがちなことは存じております。

 そういう気配、諒は露骨に不機嫌になる。私としては、まあ無理もないかなーって諦めてるけどね。



茸「いや……。釣り合ってない、って感じはしないよね。ふたりの空気感ができてる」

海「うん。コンビ感というか、バディ感というか。ここから地続きで夫婦になるんですねえ、って感じするよ」

茸「例えば別々に個々の写真見せられたとしたら、ないわー、って思っちゃうかも知れないけど」

豆「……おい」

茸「でも、ふたり並んだとこ見ると納得するよ。自然な感じで」

海「うん。それに、さっき諒さん、私たちとわーわー話してるときの豆子を“しょーがねえなこいつは”って感じで見てて、あの慣れてる感じはラブいよね」

茸「うんうん。かなりあからさまに置いてけぼりにしたのに、イヤな顔ひとつしないで“豆子だしなー”って笑ってた」

 なんですと。君ら、さっきのわざとか。放ったらかしちゃったのは私もだけど、わざと諒のわからない話題を振った訳ね。


海「ごめんって。ちょっと試してみたかったんだよ。狭量な男だったりしたらイヤだし」

茸「いくら男前でも友達蔑ろにするような態度は危険信号だぜ、って高校んときにもよく言ってたじゃん」

豆「……そりゃ、わかってるけどさ」

海「そんな膨れないでよ」

茸「うわ、かわいい。豆子めちゃくちゃイケメンになついてんじゃん」

 懐いてるよ! 悪いかよ!


 まったくもう、こいつらは。長い付き合いだけあって、私をおちょくりからかう機会を決して逃がしません。

 その後、馴れそめから付き合う経緯、デートの様子やら痴話喧嘩の内容まで吐かされ、ひゅーひゅーだよ(古)的に全力で囃したてられたのでございました。

 チカラワザで糖分を絞り尽くされたような気分 (げんなり)。


 覚えてろよ。いつか盛大に仕返ししてやるからな!



 昼を挟んで夕方近くまでつきあわされ、ていうかこっちが呼び出してんのにつきあわされるもないもんだけど、喫茶店からファミレスに移動してドリンクバーでダベり、気づいたら夕方、ってお前ら高校生か!


 ……懐かしいなー。

 だらだら喋ってたら時間忘れてた、って、こういうの久しぶりだな。



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