49.粉モノ大会
リビングダイニングの食卓は、天板の真ん中が四角い蓋状にポコッと外れ、内部に仕込まれたガスコンロに鉄板をセットできるようになってます。ご家庭用なのでそんなに大きくないけど、鉄板焼き屋さん的なアレね。
鉄板の脇には、タコ焼き器もセットされております。
先ほどからゴトゴトと、父と弟が準備してたのでした。
これだけで食卓テーブル満載な感じになっちゃってますが、キニシナイ!
飲み物や取り皿の準備などは引き続き父と弟に任せて、あい子さんは調理にとりかかりますよ。
焼くぜ!←柴田恭兵で(母がファンなの)。
鉄板に火を入れて温めつつ、丼にキャベツ、お好み生地をとり、わしわしかきまぜます。1枚分ずつ、その都度その都度仕立てるのがポイント。キャベツ多っ!生地少なっ!混ぜづらっ!ていうくらいでちょうどよいです。
鉄板に油を敷いて、丼の中身を一気にあける。こんもり盛りつけるようにワサッ!と鉄板に載せ、小山状にモリモリ整えます。平らに広げないほうが、出来上がりがふっくらするよ。
諒に手伝ってもらって、鉄板の上に人数分の山を築きました。ふふふふ。裾野のほうからじゅわじゅわ湯気が立ち始めてきましたぜ。
それぞれの山の頂に豚バラスライスをひらひら被せ、底が一定固まったようなら、コテorフライ返しなどを使ってくるっとひっくり返します。側面を寄せ寄せして形を整えつつ。ここでぎゅーっと押しつけて潰したくなるんだけど我慢。ぎゅー禁止。ぎゅー厳禁。
これね、先に焼いた面が屋根になって、内部のキャベツが蒸される状態になるのね。
火加減を少し弱め、蓋をして内部にまで熱を通していきます。最初の面より、ひっくり返した面のほうを時間かけてじっくり焼いていく感じ。
隣のタコ焼き器では、てんこさんが生地に具を放り込んでるところ。くるくるひっくり返すのは健史の役目。
「お好み焼き久しぶりだなー。目の前でこうやって焼くのって、わくわくする」
諒が楽しそうに言う。
「あれ。そういえば高橋家ではやったことないね。とりあえず私はご一緒したことないな。滅多にしない感じ?」
「道具の問題だな。うちには鉄板をセットできるコンロがないし、ホットプレートも2台はないと追い付かない。かといってわざわざホットプレート買い足すのもなあ」
「そう言われればそうか。鍋ならよくやるよね。あの土鍋10号?だっけ? 大っきい土鍋2つもあるもんね」
10号土鍋がふたつ食卓に並ぶ様はなかなか壮観なんだぜ。
母が、私と諒の会話を聞いて口を挟んできた。
「あい子、あんたそんなにしょっちゅう高橋さんちにお邪魔してるの?」
え。……あー。まあその。口ごもる私に代わって諒が、
「週3は確実にうちで夕食とってるよね」
苦笑交じりに応じる。うわーん。そんなに正直に答えることないじゃないか。
「「「週3!?」」」
案の定、両親と弟がそろって驚き&呆れのリピートアフターヒム。
いや私もどうかと思うんだよ? でもさー、諒のごはんおいしいし。居心地いいんだもん。
「あい子さんからは毎月食費と雑費をいただいてて、却って申し訳ないくらいなんですよ。僕だけじゃなくて、両親や兄弟もお世話になってるんです」
諒が慌ててフォローしてくれる。
いやいやいや。お世話なんてしてないけど。その場で手伝えることは手伝うけど、キホン普通に過ごしてるだけで。
聡美さんとゲームしたり、圭さんとお茶したり、修くんに漫画借りたり、博至さんと時代劇見たり。
「実家かよ」
ぐむむ。健史にしては的確なツッコミだな弟よ!
「そりゃ、同居したらどうか、なんて言われちゃう訳よねー。そんなに仲よくしてくださってるの」
一度ちゃんとご挨拶しなくちゃ。などと、両親が顔を見あわせて頷き、呆れを拭えないまでも、安堵というか納得の表情をのぞかせたものでございます。
うう、もぞったい。なんだろう、この気恥ずかしさは。
そしてタイミングよく、お好み焼きも火が通ったようですよ!
蓋を外すと、ぺたんと平坦に、標高を失った元・キャベツ山が湯気を立てて現れます。さてさて、仕上げだぜ!
もう一度ひっくり返して、豚バラ面を上にします。肉はじっくり焼かれてカリカリ気味に香ばしくお好み生地と一体化しており、こいつに甘口のお好みソースをたっぷり塗ってやるんだぜ。端っこから垂れたソースが鉄板で焦げてじゅうじゅう音を立てる。
「うわ、この匂い。堪んない」
さらに、ひらひら踊る花鰹と青海苔粉の追撃。
「できあがり!」
お好みでマヨネーズ、味変に辛子でどうぞ!
「タコ焼きもできたよ。これがレギュラー、こっちの列がキャベツ入りね」
タコ焼きくるくるだけは自信のある健史がドヤ顔で勧めてきます。
目の前にお好み焼きとタコ焼きがダブルで盛りつけられ、
「美味そう。すごいな。いただきます」
諒は嬉しそうにニコニコ受けとった。
まずはお好み焼きにかぶりつき、「熱ッ、あひ」とハフハフしてます。焼きたてだもんね。
「旨いです!」
ビールビール。ぷはー。堪んない。至福。
すっかり相好を崩す諒に、母はもちろん、何故か健史までほんのり頬を赤らめております。そうだろうそうだろう。ニコニコするイケメンってめちゃくちゃかわいいんだよ大変な破壊力だよ(激しい惚気)。
父も母も弟もつられるように、がぶり→ハフハフ→ビール→ぷはー。の至福コース入り、もちろん私もばっくりいっちゃうんだぜ。
諒はお好み焼きの断面をしげしげと観察しながら、感心しきり、といった表情。
「すごいねこれ、絶妙にふわふわ。山芋がいい仕事してるんだな。外側はカリカリで豚肉が香ばしくて、キャベツたっぷりだし、生地もダシが効いてて、それに、やっぱりソース味最強」
「気に入ったんならよかった。タコ焼きも食って食って。こっちはまたダシの配分が違うの」
「うん、どれどれ。いただきまーす」
「うわ、これもヤバい。カリふわとろとろ。タコぷりぷり。ビールビール」
ハフハフが止まらないぜ。
「ウマい。キャベツいいね。お好み焼きとはまた全然味が違う。これヤバい」
イケメン大喜びです。やったー。
好きな人においしいものを食べてもらうのって、なんでこんなに嬉しいかな。
しかも、両親や弟もいっしょに。
楽しい。嬉しい。
おいしいものって、幸せだ。
「さてさて、どんどん焼くよ! いっぱい食べてね!」
結局その日は、キャベツひと玉ぶんのお好み焼きを余裕で平らげ、他にも牛ヒレの肉塊やらビチビチの車エビやら各種新鮮野菜などをご用意くださっていたので焼きまくって食いまくり、もちろんタコ焼きも瞬殺の後に黒ゴマ餡+もち粉生地のゴマ団子などもデザートに拵え、もちろんもちろんビールも焼酎もくいくい干して、結構な宴でございました。




