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乾燥豆子と弁当男子  作者: ムトウ
3.プロポーズ
38/58

38.プレ新婚(婚約とも言いますが)

 諒が仕事から帰ってきた。

「ただいまー」

「おかえりなさい。お疲れさま」

 玄関先に出迎えると、くたびれ顔も露わだった様子が、驚きに目を瞠ってまじまじと私を見つめてくる。

 ははは。どうだ驚いたか。

 いったい何事?と尋ねてくる視線を無視して、しゃらっと言ってみた。

「ごはんにする? お風呂にする? それとも私?」

 諒は、ぷっ、と吹き出して「ベタだな」と笑いながら私を抱き寄せた。

「あい子にするよ」



 ……とは言ったものの、そこから暗転して寝室のシーンにカットが切り替わったりするわけではなく。


 お疲れの諒は「やっぱ先に風呂入ってくる」と浴室に向かったのでした。

 しかし、その途中で「あ」と足を止め、

「その格好、後でゆっくり見せてよ? まだ着替えるなよ?」

 と念押ししてくのを忘れませんでしたよ。


 では問題です。

 あい子さんはいったいどんな出で立ちでお出迎えをかましたのでしょーうーかー?

 答えは2700字ほど後で(遠いな!)。




 さてさて。

 高橋諒と芹沢あい子(←me!)は現在、絶賛婚約中でございます。

 ここまで来るのはホント大変だった。想像はしてたけど、その倍以上、というか、大変さの方向性が違った。

 親と揉めるとは予想しなかったんですよ……。だって、結婚すんのって私と諒じゃん。当事者間で解決すりゃいいじゃん。とか思ってたけど、甘かったんだなー。思い出すだけで疲労。


 揉めたのは、主に新居の件でございました。

 諒は実家を出るつもりでいたのだけど、修くんが「職場が遠いので実家を出て一人暮らしする」と言い出したのをきっかけに、

「そんなら、あい子さん同居しちゃえば? 修の部屋を使えばいいよ」

 と、博至父さんがえらくあっさり言い出したのでした。

 それな。あい子さん、週3とか週4で高橋家に入り浸ってるからな。その発想もわからんでもない。

 実家を出るとしても、高橋家の近隣に居を構えるつもりでいたので、だったら同居すれば住居費を抑えられるよ。というのが博至さんのおっしゃる論旨でした。

「それに、あい子さんとならみんなで暮らしても楽しそうだしね」

 博至さん、軽やかすぎる……。


 でも、悪くないかもな? ひょっとしてそれもアリ?

 と、のんにかまえる私とか、「あー、いんじゃね? そこいらへんはあい子さんとみんなで決めてよ」と既にヒトゴト態勢な修くん、「簡単に言うよなー……」と呆れ顔の諒、という並びに対して、

「そんなのダメよ」

「無茶言うなよ」

 と、反対したのが聡美さんと圭さんでした。


 聡美さんいわく、

「せっかくの新婚なのに、舅・姑・小舅もくっついてくるなんて気の毒でしょ」

 圭さんいわく、

「いくらしょっちゅう遊びに来てるからって、いっしょに住むのはまったく違う話だろ。ある程度距離があるからこそ親しくつきあえるってこともあるんだからさ」

 とのこと。


 うーん。聡美さんも圭さんも私のことを考えてくれてのことだし、ごもっともなんだよね。

 かといって、博至父さんの気軽な提案も実は嫌じゃない。えーい!って思いきってやってみないとわかんないことってあると思うのよ。

 そして、諒は諒で、自分が実家を出てからのことを気にしてるんだよね。私にはあまり言わないけど、なんとなく察してる。ずっと諒が台所担ってきたからねー……。


 そこに

「差し出がましいようですが」

 と静かに提案を申し出たのがうえはらよしさん、高橋家で11年家政婦を務める方です。


 物静かで優しげなおばさまなんだけど、たぶんこの方の正体は女ターミネーターです。未来から訪れてこっそりハイテクギミックで家政婦してるんじゃないか、というくらいのオーバースペック気味に完璧な仕事ぶり。

 掃除用具とか決めポーズで構えて「Mission terminated」って渋くナレーション入れてもらいたい。って、言ってみたら、似合いすぎるから止めて、って諒や修くんが吹き出す感じの完璧超人です。

 上原さんは「ご家族のことにご意見申し上げる立場ではありませんので」と、遠慮してたんだけど、高橋家の家事運営にも関わることなので、と、オブザーバー参加してもらってたのでした。


 で、そのターミネーター・上原さんがおっしゃるには。

「失礼ながら、あい子さんのご実家にはご相談なさったのでしょうか?」


 おっと。忘れてた。

 いや、忘れてた訳ではないのですが、芹沢家は飛行機での長距離移動を要する遠方の他県でして。

 別に仲悪いとか複雑な事情とかじゃないです。単に、学業の都合上、実家を離れて卒業後そのまま就職して定着した、っていうだけの話で。

 それに、もとからわりと素っ気ない性質の人たちなので、そんなにしんみり相談とかしたことないんだよね。つか、実家から出た成人家族なんてそんなもんじゃない?

 後で報告すればいいかな、と思ってたんだけど、さすがにそんなわけにいかないか。


 と、電話で報告・相談してみましたら。

 激怒されました。母に。

 び、びっくりしたー。

 父は母の激怒っぷりにヒいて逆に冷静になっちゃったものの、「ちゃんと説明しなさい」と強めに要求してきて、弟はいつもの半笑い対応ではなく、心配混じりに呆れた様子で「バカじゃねーの」とか言ってきやがる。



「当たり前よ」

 と、聡美さんは諒に向かって、呆れ果てたとばかりに言い放つ。

「自分の娘のことなのに、相手の家の都合だけで決められるとか、ふざけんな、って話でしょ。あい子さんもダメじゃないの。とっくに話してるのかと思ってたのに」

 う。私も怒られた。当然ですね、はい。

「だいたいね、病気の姑と男兄弟3人いる家に同居するかもしれない、とか言われたら、家事に看護介護、身の回りの世話全部押しつけてこき使う気だ、って思われてもおかしくないでしょ」


 ……その発想はなかった。

 そっかー。そうなるかー。


「こういうのはどれだけ口で説明しても伝わりゃしないから、まずはお目にかかってちゃんと態度で示してきなさい」

 と、聡美さんwithターミネーター上原さんに促され、ふたりで即日、芹沢家に飛んだのでした。




 あ、クイズの答え?

 すいません、次話に持ち越しで。


 待て、次号!(ごめん!)




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