ゲルニカ2016
クローン技術で自分の複製を作られるようになった
現在。
俺は、20体までの「自分」を作ることが認められている。
それは適性検査と年収と階級で決まる。
サイボーグ化が進み、知能、身長、容姿、など
自由に決められるようになった。(じぶんの頭を悪くしたり、
不細工な怪物になる自由も認められたのだ)
始めは、ほんの小さな「変化」だった。
「複製一号」には不倫をさせた、自分の変わりに。
自分の部下の若い女子を口説かせた。
その様子を自宅の居間で、妻と鑑賞していたのだ。
妻は、彼女は何も言わなかった。むしろ、
彼女のほうが先に、クローンを造っていたのだ。
次に、俺は大嫌いな上司を殺させた。ピストルで撃たれると、
上司は、芝居がかった様子で倒れた。死さえも楽しんでいる。
彼もまたクローンなのだ。
上層部は、ほとんど、外国に脱出して、モニターで
見ている。
街では戦争が始まっていた。銃撃の音が、とぎれとぎれに響いている。
俺は、レストランに入って、じぶんでコーヒーを淹れて飲んだ。
若い、サーカスのクラウンが、瓦礫の上に腰掛けている。
彼はピエロになりたかったのだ。ここじゃ、彼の芸など、誰も見ない。
2週間後の星間光速艇で、エンターテイメントの盛んな惑星に行くつもりだ。
怪我をした馬が、街を歩いている。自然の馬ではなく、おそらく、改造した
人間だろう。
我々は、死から開放された。
折り重なるように死体が置かれてある。
死者の口は開かれている。何か叫んでいるように見えるが
何も聞こえない。