汐見燕は残念美人0
初投稿です。
連載はきまぐれですが何卒よろしくお願いいたします。
【登場人物】
・汐見燕
・若咲しらす
とある昼過ぎのお洒落なカフェにて。
オープンテラス席の爽やかな木々が見られるところ。
そこが私のお気に入り。
穏やかな気持ちで涼しい風を感じながらコーヒーを飲む。これがいつもの習慣。
そして今日はひさしぶりに会う元同僚の若咲しらす(ワカサキ)と
女子会なので私は少し気持ちが高まっていたのです。
「え・・・っ。」
ガシャン・・・!
「え・・・っ!?しおちゃんっ!?」
「け・・・結婚・・・?」
「お客様!!大丈夫ですか!?すぐにおしぼりをお持ちいたしますので・・・!!」
「ふ、ふうん・・・そっか・・・結婚ね」
「っ、店員さんすみません・・・、おしぼりお願いいたします!」
その騒ぎが耳に入るや否や抜けていく。
そりゃそうよ。若咲しらすは私と同い年、幼馴染。
彼氏だって今まで一度も居た事なかったんだもの。
「急にごめんね・・・そんなに驚くと思わなくて。」
「驚くに決まってんでしょうが!!彼氏の“か”の字さえ聞いた事なかったのに
いきなり結婚なんて話をされた日にゃあんた!!」
「あはは・・・まあ私もこうなると思ってなくて。色々初めてだったから・・・戸惑ってて。」
「色々はじめてねぇ・・・それで?どんな人なの。」
「・・・普通に優しい人。えへへ。」
そう笑ったしらすは本当に可愛いかった。
幸せオーラ全開、といったところ。
「はぁーーーー。良かったわね。」
「えっ、なっなに?ため息・・・?」
「ちょっとオーラに当てられただけ。まぁでもしらすは逆に今まで男が居なかったのが不思議よね。可愛いし、普通は男がほっとかないでしょ。」
「あっ、それはほら。私の傍にいつもしおちゃんが居たから。」
「だからなによ。」
「しおちゃんって本物の美人だし、顔も小さくて可愛くてスタイルもいいから普通の男の人じゃ
声かけずらいんじゃないかな。」
「まーたしらすはそんな事言って。私を悲しませる気?」
「ふふ。ほんとしおちゃんは自分の事全然わかってないんだから。」
「はぁ・・・。」
私は昔からよくしらすにお世辞を貰う。
顔が小さい・スタイルが良いとか・・・他にそんな子たくさん居るし。
私はしらすと違って可愛い服も似合わないし。何より――
「それにしおちゃんは昔からモテモテだったよ?」
「っ!それはないっ!」
「え?」
「私は昔っっからモテないのよ!!」
「しおちゃん・・・」
そう。私は昔からモテない。
遠巻きに見られてると思いきや目があった瞬間そらされたり
おつりをもらうときに手が触れたら汚いものでも触るかのごとくサッと手を引かれる。
好きな人ができてめでたく付き合うことになっても
男の趣味が悪いのかまったくうまくいかない。
“やっぱり無理”とか“そんなのと思わなかった”とかなんとか。
じゃあ何と思ったのよ。
「はぁ・・・。」
思い切りため息をつきながら周りを見渡すと
テラス席で突っ立っている私を目を丸くして見上げていた。
ハッ。
「そうだった・・・ここってお洒落なカフェだった。」
そう呟きすとん、と席に座る。
「うーん、なんで気づかないのかなぁ・・・。」
「失礼致します、お客様こちらお使いください。」
「ああっ!すみません!私、コーヒーこぼして・・・!」
「お、お客様!落ち着いてください・・・!」
――若咲しらすはこのとき、私の事を本当に
“残念美人”だと思ったそうです。