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ウザい姉

 及川秋穂視点です。

 ウザい。

 それが姉に対しての私なりの評価だった。

 お父さんの再婚相手には連れ子がいた。

 母親似のとても綺麗な顔立ちとスタイルでとても小学生とは思えないほどに美しかった。かわいいかわいいともてはやされて育ってきた私はそんな姉をいつも疎ましく思っていた。

一緒の小学校にいたせいで、いつも比較され続けた。どんなにかわいい服を着ても、アクセをしても姉には全然かなわなかった。大好きだった男の子は姉に夢中になっていた。私は、それなりにかわいい自分が姉の引き立て役でいるのが耐えられなかった。

 その姉の母親もウザかった。

 お父さんが再婚してから、私は母の愛玩人形になった。

 かわいい服をたくさん買ってもらって、おいしいレストランにたくさん連れて行かれた。

 いつも二人っきりで、自由なんてなかった。

 母親、里美さんは姉以上に綺麗で美しかった。そのせいで外に出かけると周りからは「似ていない」と言われ続けた。

 新しいいらない家族が出来てから、私の生活は苦痛と嫉妬だけになった。

 お父さんが交通事故で死んでからもその生活は変わらなかった。

 いつしか、へらへら笑う姉がそんな醜い生き方をしてる私をあざ笑ってるようにみえてきて、ある日とうとう私は姉に暴力を振るってしまった。

 気持ちよかった。心の中の何かが満たされてるみたいで本当に気持ちよかった。

「やめて」って姉が言ってくれたらやめるつもりだったのに、「ごめんね」っていつまでも言い続けるからいつまでも殴り続けた。涙と鼻水と鼻血で姉の顔はぐしゅぐしゅになっていた。姉が中学の二年生の時だった。

 それからしばらくして姉は家に帰ってくるのが遅くなった。大抵は私と里美さんが寝ている時にこっそりと帰って来ていた。扉の開け閉めの音がうるさくて、それを姉に注意しても姉は聞かなかったから、合鍵をこっそりと持ち物から抜き取っておいた。翌朝、私が開けるまで姉は玄関の前でひざを抱えていた。

 そんなことが何度も続いた。

 私も里美さんもどうでもいいと思っていた。

 帰ってきた姉からはお酒の匂いや香水の匂いがしていた。高校生のバイト程度ではとても買えなさそうな高級な服を着て帰ってくる時もあった。

 その綺麗で美しい身体で夜な夜な男を誘惑してるんだと思っていた。

 姉が外で何をしてようが私達には関係がなかった。

 半年が過ぎる頃には、姉の姿は玄関前から消えていた。

 何日も家に帰らない日が続いていた。

 最初は2,3日間で、それから20日間さえ続く日もあった。

 時々には、ふらっ、と帰ってくるから警察の人も真面目には姉を探さなかった。

 もうその時には姉はげっそりと痩せていた。言動もおかしくなっていた。

 姉は壊れた、そう思った。

 でも、その美しさだけは気持ち悪いほどに何一つ衰えたりはしていなかった。

 姉はそれから高校へ入学した。勉強もしてないのになんで入れたの、と私は思った。

 それからの姉は以前のように夜中に帰ってくることはしなくなった。そのおかげでレトルトの食事が手作りの食事に変わった。

 姉も少しだけ変わっていた。

 前みたいにヘラヘラ笑うのが少なくなった。外出をしなくなって、休日でも家にいるようになった。私と里美さんの身の回りの世話を何から何までするようになった。

 正直、ウザいと思った。

 それからしばらくして姉は死んでくれた。

 自殺だった。

 駅のホームに自分から飛び降りて・・・。

 警察の人が死んだ姉の姿を見せようとしなかったから、多分、姉はひき肉みたいにぐちゃぐちゃになって死んだんだと思う。

 姉の自殺は電車を遅らせてたくさんの人に迷惑をかけた。

 結局、最後まで姉は誰からも必要とされていない「いらない子」のまま終わった。

 葬式は私と里美さんだけが出席した。火葬だけだったから半日もいらなかった。

 静かだった。

 小さかった。

 悲しみなんてなかった。

 お墓参りには行かなかった。

 それから数日後、家にお客さんがやって来た。

 姉と同じようにヘラヘラと笑うウザい人が。


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