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日本を救った男

作者: さきら天悟

不幸が似合う男がいた。

名前は言えない、だからAと言う。

なぜかって言えば、同姓同名の人がいれば悲しむからだ。


どんなことかって言えば、まず軽いところから行こう。



車を洗えば、雨が降る。

これはよくあることだ。



好きな人に告白すると、婚約したと言われた。

1人、2人ではない。4人もだ。

言っておくが、彼は不幸が似合うと言って貧相な男ではない。

見た目は悪くない。俳優のKに似ている。Kの名前ももちろん明かせない。



競馬をやろうと彼を誘った。

彼の不幸を知っていたから、それを利用しようと思った。

それはこうだ。

彼が買う馬券を外せば、当たる確率が高くなると思ったからだ。

思惑通り、春のG1を2つ続けて当てることができた。

でも、ダービーは外した。


まさかと思った、直後だった。


『ダービー取った!』

彼からメールだった。

万馬券で30万円弱になるとそうだ。


その日、地震が来るのかと心配になって、

なかなか寝付けなかった。


次の日会社に行くと、彼は恥ずかしそうな顔をした。

馬券を買い間違えたということだった。


そうだ!

ダービーは10レースだった。

ダービーやジャパンカップなど一部のレースを除いては、

メインレースは11レースなのだ。

彼はいつもと同じと思って、ネットで11レースとしたそうだ。


それで、密かに胸をなでおろした。



こんなこともあった。

『アナと雪の女王』のことだ。

もちろん、彼は映画を見に行っていない。

彼が見に行って好きになったら、こんなにヒットするはずもない。


その頃、珍しく気に入った新人女優がいた。

一度、テレビで見かけただけだったが、気になったそうだ。

その後、彼女の主演映画が上映されると知った。

彼は心待ちにしていた。

しかし、近くの映画館の上映情報を検索しても見つからなかった。

一番近くても東京まで行かなければならなかった。

結局、仕事も忙しく行けなかった。

上映予定が無くなったのは、皮肉にも大ヒットした『アナと雪の女王』のためだった。

予定外のロングラン上映となったため、系列でない映画はキャンセルされていたのだ。


彼はそれから女性タレントや女優に興味を示さなくなった。



会社の方は順調っだった。

ブラック企業に近く、人使いが荒かった。

働くのが快適だったらすぐに倒産していただろう。



しかし、東京オリンピックが終わった頃から日本は変わってしまった。

一気に景気が後退し、失業者が世間に溢れた。



久しぶりに彼と会った。

彼は真剣な顔をして言った。


「俺が日本経済を救う」


株を買ったそうだ。

買ったというより、正確には売ったということだ。

いわゆる『売り』だった。

普通は株が上がると儲かる。

しかし、逆に掛けることができた。

そして、株が下がると儲かる方に財産のほとんどをつぎ込んだのだ。


すると景気が上がりだした。

原因は不明だった。

少し、景気が上がると人の心が明るくなり、一気に景気が回復したのだ。



「…これが、日本を救った男の話です」

俺はニヤリとした。彼を称えるようなことはしなかった。

そんなことをしたら、今度は俺が不幸に襲われるだろう。

俺は会社を辞めた後、前から誘われていた芸人になった。


彼の話を面白おかしく語ると、急に仕事が舞い込んだ。

そして今や一流のランクに位置していた。



ある番組でその後の彼を追った。

彼は病死していた。


俺は心の中で彼の冥福を祈った。

彼の不幸を恐れたからだった。



10年、経った。

驚くべきことがおきた。


彼を称える碑を建てたのだ。

彼の故郷の町が観光目当てに建てていた。

俺は不幸が訪れるのを心配した。

しかし俺の心配とは裏腹に観光客は増大していた。

願いが叶うというのだ。


ある番組で俺が彼の碑を訪れる依頼があった。

しかし、俺は断った。

俺はまだ彼の不幸を恐れていた。



さらに、10年経っても、日本の好景気は続いていた。



さらに、20年経った。


俺は死の床にいた。

心の中で彼を謝ったが、口にはしなかった。

そこまで彼の不幸を俺は恐れていたのだ。

彼の死後も日本に何事もなく、日本の繁栄はつづいていた。


今日も、彼の碑に訪れるが客を作っている。



1000年後、人類は滅びた。

資源を使い果たし、わずかに残った資源を奪い合い、戦争が起こったのだ。

日本がけん引し、世界経済を引き上げたため、資源不足が問題となっていた。



彼の不幸は人類の滅亡を数千年早めいていた。

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