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ビビ俺  作者: タイキ
第1章
6/7

page.6 Re:迷宮攻略

「迷宮攻略?」


 迷宮攻略を翌日に控えたアカリは、街の集会場にカイトを呼び出していた。。カイトの支援魔法があれば、あの規格外のモンスターに勝てると踏んでのことだ。

まさかとは思い迷宮について尋ねてみると、本当に知らないことに驚く。


「その強さで迷宮攻略も知らないって・・・。カイトってやっぱり少しおかしいわよね」

「まあその辺は置いとこうぜ?で、迷宮攻略って何なんだ?」


 カイトがおかしな人であることは前々から承知していることなので、話を迷宮攻略へと移す。


「まずカイト、迷宮ってわかる?」


 迷宮とは桁違いの強さを持つボスモンスターがいる場所であり、ダンジョンと違うのはボスモンスターが一度倒せばもう湧かなくなることだ。

 ボスモンスターはモンスターを生み出し、そのモンスターが迷宮外に出ていくことで一般市民への被害も報告されている。迷宮があることで近づけない未開拓の土地も多い。ギルドに課せられる義務の一つとして迷宮攻略があり、名誉と国からの莫大な謝礼金を受け取ることができる。

だが、一度攻略を始めた迷宮を放棄することはギルドの信用に関わる。ヴァルが死人が出てまで攻略を進めるのもそれが理由だった。

 

 カイトに簡単に説明すると、なるほどと手を打った。


「あー!緊急依頼クエストのことか!!」


 SMOのゲームでは緊急依頼クエストといった名前のそれは、規格外のボスモンスターを倒さなければならないという点で迷宮攻略ととても類似していた。


「緊急依頼クエスト??」

「ああ、いやなんでもないよ。忘れてくれ」

「それならいいんだけど」


ゲームの話をしたところで理解されるはずもないので、カイトは1度話を打ち切った。


「それでなんで私がカイトをここに呼んだかなんだけど」


迷宮のことをカイトが理解したようなので、アカリは本題に移る。

迷宮に規格外のモンスターがいること。そして、カイトの支援魔法があれば今度こそ誰も死なずにあの場面を切り抜けられるのではないかということ。


「いいよ、アカリには世話になってるしな」

「ほんとにいいの?」

「いいってことよ」


 死人が出たことを伝えても参加を即決してくれたカイトに感謝よりも驚きが先に出る。

普通ならばギルドメンバーでもないのに、こんな話を受ける義理はない。まして死人が出ている迷宮だ。


「じゃあうちのギルドまで来てもらってもいい?迷宮攻略に向けて、全体のミーティングがあるから」

「分かった!」


 二人は集会場を後にして、聖魔術同盟のあるニクリアへと向かった。



「君がアカリの言ってたカイト君だね?」


 聖魔術同盟本部。カイトはアカリとともにヴァルの部屋に通されていた。机を挟んで、ヴァルと向き合うような形だ。


「はい」

「アカリから今回の迷宮攻略の力になると聞いたのだが、私はギルドの長として見ず知らずの君を今回の迷宮攻略に加えることは抵抗がある。迷宮攻略組は隊形やチームワークなど今回の攻略に向けてたくさんの訓練を積んできた」

「団長!でもカイトの支援魔法があれば・・・!」


 話の流れ的にきっと断られるであろうヴァルの話をアカリが遮る。


「まあ、最後まで聞け。本来ならさっきも言った通り急に参加させてと言われて参加させはしない。だが、他ならぬ前回の戦いに参加しているアカリの提案だ。しかも支援魔法の使い手といったな?後方なら前線程連携も必要にならない」

「じゃあ!」


 さっきまでとは打って変わった明るい話にアカリの顔が晴れた。


「ああ。カイト君、迷宮攻略に力を貸してくれるかい?」

「もちろんです!」


 ヴァルは椅子から立ち上がるとカイトに右手を差し出した。一瞬それが握手を求めるものだとわからなかったが、遅れて理解したカイトはしっかりとその手を握り返した。



―――迷宮攻略当日。

 迷宮の前に集まった攻略組。ピリピリとする緊張感が何となく嫌で、カイトは少し離れた場所に移動する。

 人数は40人と前回と同じだが若干盾役を厚くする編成で臨む。さらに、40人を率いるのはギルドマスターであるヴァルだ。日頃前線に立つことがないヴァルの参加で、迷宮攻略組も士気が上がる。


「まさか団長が参加するとはね」


 一通りメンバー達との話し合いが終わったのだろうか。アカリはカイトに近づくと独り言のようにそう呟いた。


「いつも参加してるわけじゃないのか?」

「ええ。ギルドマスターになると国への書類の提出とかいろいろ事務作業があって、迷宮攻略に参加することは珍しいの。でもレベルはカイトより50くらい上だから、ここにいる誰よりも強いわよ」


 アカリに伝えた嘘のレベルではなく実際のレベルであれば、カイトはヴァルよりもレベルは高い。

 それもそのはずだ。

 SMOの世界でカイトより強いプレイヤーは存在しないのだから。

 リリース当初からSMOをやり続けているカイトは、高難易度クエストや緊急依頼クエストをクリアし続け、気づけばトッププレイヤーとしての称号を手にしていた。

 そんなことを今ここにいるメンバーに伝えたとして、見ず知らずの人が自分のギルドマスターよりレベルが高いのはいらぬ混乱を生んでしまうだろう。


「その強いヴァルさんが先頭を行ってくれるなら安心だな」


 カイトはそう言うと周りの雰囲気に合わせて口を噤んだ。


「それではこれより迷宮攻略を行う!!」


 ヴァルの号令が響き、メンバー達も雄たけびを上げる。


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