自らに宿る力
この話のジャンルって分かりづらい……。
開斗は1人、ぼんやりと考えていた。
一体、これは現実なのだろうか。
突然両親がいなくなって、花が現れて、さくらと再開して・・・。
確かに、花やさくらの姿は記憶にはっきりと残っているし両親の部屋もほとんど物がなくなっていた。
その光景を見れば確かにこれは事実なのかもしれないと思える。
つまり、花だってちゃんと存在するということ。
花が自分の家に住むことになったこと。
全て事実だということだ。
そう思ってしまったら、もう花のことしか考えられない。
早く帰って来てほしい。
ずっとここにいてほしい。
今まで女子が周りにいなかったことで、その反動は大きかった。
「花・・・。」
「何?」
「うわっ!!」
まさか花の名前を呟いた時に花がいるとは思わなかったのだろう。
「もう帰ってたんだね。あはは・・・。」
開斗はつい動揺してしまう。
「あのね、開斗、これから、私がここに来た意味を教えてあげる。」
そこでなぜか花は開斗に急接近してきた。
「ちょっと、なんでそんなに近づくの?」
「いいじゃん、もっとくっつこうよ、・・・ねぇ?」
その時の花の可愛らしい顔を向けられて、開斗が耐えられるはずがない。ただ、花の方から接近してきたというのに、それを断ることもできなかったため、このまま花は話し始めた。
「実は、開斗には、ある『力』が宿っているの。」
「・・・え?」
あまりにも突然過ぎる発言に、開斗は花との距離を気にしていられなくなった。
「ただね、力っていっても、その力に関することを知っていなければ使えないんだ。」
それだから自分にこのことを伝えに来たのだろうか?
「これを『絶対既知の法則』っていうんだ。」
花が言うには、全ての人間は何らかの『異能の力』を持っている。しかし、その能力に関する法則として『絶対既知の法則』というものがあり、自分の持つ力がどのようなものなのかを知っていなければ能力を使えないというのだ。
『知っている』とはどの程度かと言えば、それが抽象的に『どんな能力か』だけではいけないらしい。
「それでね、絶対既知の法則において『既知』とされるには3つの要素が必要で、その3つを『名称』『詳細』『程度』。これを『既知判定の3要素』っていうんだ。覚えられる?まぁ、こういう名前は覚えなくてもどうにかなることにはなるから気にしないで。」
開斗は自分の中で少しずつ整理しながら、花の話についていこうとする。
「でさぁ、その3要素の内の名称ってやつ、それってつまり、それぞれの能力には何らかの名前がつけられていて、その名前を知っていなければいけないっていうことだよね。」
「そうだね。」
開斗の推測も入れながら、花が説明を開始する。
「そして、詳細というのは文字通り、能力に関する詳細な情報、詳細といっても、そこまでくわしくなくていい。『効果:能力を使うと何が起こるのか』と『条件:どういう条件の下で能力を使えるのか。』。この2つをおおまかに理解していれば大丈夫。」
「『程度』っていうのは力の強さのこと?」
「まぁ合ってるんだけど、強さって言っても2種類あって、『レベル』と『ランク』があるんだ。」
「強さを表すだけでも2つ、ねぇ。」
「どちらも数字で表すことには変わらないんだけど、レベルは『能力の強さ』を表して、ランクは『能力者の強さ』を表すんだ。口で説明するのはこれが限界かな?それじゃあ、スマホとか持ってる?」
「うん、あるよ・・・。(まっ、まさかこれは!?)」
開斗は、連絡先の交換だと思い込んだ。だが、実際はそうではない。ここで連絡先を交換するのは話の流れとしておかしいからだ。
「はい、アプリ入れといたよ。」
「アプリ・・・?あぁ、そう・・・。」
連絡先の交換ではなかったことに少し落ち込んだりしながら、開斗はアプリを開いた。
そこには『種田開斗・秘密の種・レベルE・ランク2578490』と書かれてあった。
「やっぱりレベルエクストラなんだ・・・。」
「レベルエクストラ?」
「そう、そこにレベルEって書いてあるでしょ。これは能力の強さをレベル1~レベル10で表しているんだけど、時々うまく表せない能力があるんだよね。そういう能力はレベルエクストラに分類されるの。」
「表せない・・・?この『秘密の種』って能力が?」
「読み方としては『ミステリアス・シード』ね。」
秘密の種、自分が生まれた時から持っていた能力、しかし今まで存在を知ることなく、使うことができなかった能力。それが、これから使えるようになるということに、開斗は気分が高ぶるのだった。
「あ、あと、その能力使うのには私が必要だから。」
この発言で、開斗の顔は一気に赤くなった。
今回は全然出ませんでしたが、幼馴染みヒロインのさくらの名字は西宮ですが、執筆段階では別の名字を使っていました。修正できてなかったら指摘してもらって構いません。