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商談 練習会

「……お嬢様。本日の御予定ですが……」


 成宮がいつものように予定を伝えようとする。

「あー面倒だからその都度言ってよ。どうせ真琴まことは来週の日曜日だし」

「いやまあそうなんですが……桐生様のご意向で今日、ワーグス社と商談の練習を組んで頂く事になりました」

「えー……」

 説明が遅れたが、真琴とは私の許婚だ。桐生は私のお父様。お母様は弥生やよい

「……はぁ。あ、でもワーグス社ってことは羽音はのんも来るのかな? そうするとキャノンもくるのか……。で? 何時からなの?」

「仰る通り、羽音様と華音かのん様もいらっしゃいます。ええと、午後の二時から……ですね」

「分かった。じゃあ、近くなったらまた言って」

 成宮が一礼して下がる。それと引き換えに慌てた様子で影原が入ってくる。

「お嬢様! 大変です!」

「……あんたがいつも大変にしてるんでしょうよ」

 影原は出鼻を叩かれ、勢いを失う。

「う……。で、ですが、今日はなんか勝手に壊れたんですー!」

「何が壊れたの? ていうか、何を壊したの?」

「言い直さなくても……。それが、いつものように洗濯機回していたら突然ガシャン! っとか言って止まっちゃったんです!」

「あーはいはい。……楠木。いる?」

「この美しい僕にご用でしょうか? お嬢様」

 近くに控えていたであろう楠木を呼び寄せる。案の定すぐに出てきた。

「一言余計よ。洗濯機の修理を頼むわ。無理なら新しいのにしておいて」

「かしこまりました。……まあ、僕が直す訳ですから直らないというのはないですよ!」

「分かったらさっさと行きなさい!」

「はっ」

 全く……。

「影原ももういいわよ。仕事に戻りなさい」

「はい……」

 楠木のテンションに大して、影原は沈んでいるようだった。

「……さて、と。どうしようかな……」

「お嬢様」

「うわっ! いきなり出てくるんじゃないわよ!」

「いや、驚かそうかと……。それより、今から十分後にピアノのレッスン、その後絵画のレッスンとなっておりますが……」

「分かったわ。準備しておいて」

「かしこまりました。……あ、真琴様の件ですが……」

「真琴がどうかしたの?」

「『ヴァイオリンが上達したんだってね。是非聴いてみたいな』……だそうです」

「……誰からそんなこと聞いたのよ。真琴は」

「上達した、というのは私が」

「やっぱりかぁぁ! 勝手に言うんじゃないわよっ! 全然上達してないわよ!」

 残念ながら、私はヴァイオリンが大の苦手でギィギィ嫌な音しかでない。

「真琴様にいいところを見させてあげようという、私なりの心遣いで御座います」

「嘘つくな! ……あーもぅ。練習するしかないじゃない!」

「それを狙っておりました」

「分かってるわよ! いいから早く準備しなさい!」

「かしこまりました」

 成宮を追い払った後、大きな溜め息をついた。

「なんで成宮は……あーていうかどうしよ。真琴に嫌われたらどうしよう……」

 許婚なのだが、なんだか遊んでいるうちに本当に好きになってしまった。まあ、向こうも私のことは嫌いではない、らしいけど。

「うーん……」

 考え込もうとすると、ピアノのレッスンがあることを思い出し、慌てて部屋をでる。「うー……もういいや、頑張ろう」


「二分遅刻ですよ。お嬢様」

「うっさいわね! どうせ成宮が教えるんだからいいでしょうが!」

「ええ、なのでここでは私は教師で御座いますから。私のルールに則ってお嬢様の遅刻は許せません」

「うっ……。ま、まあいいわ。早く始めなさい」

「ではまず先週だした課題がこなせているか確認させて頂きます」

「あーあの簡単な曲ね。完璧よ」

「よほど自信があるようですね。では、始めてください」

 出されていた課題は『月光』の第一楽章。暗い曲で、私はあまり好きじゃない。

「……流石、長年弾いているだけはありますね」

「じゃあ、合格?」

「ええ、まあ。ですがここの部分、少々リズムが狂っています。まだまだ上達の余地はありそうですね」

「いいのよ別に。学校じゃこの位出来れば文句はないわ」

「……自信だけはあっぱれですね……痛っ」

「黙ってなさい」

「かしこまりました」

 一礼して、途端に一言も喋らなくなる成宮。

「…………」

「……私が悪かったわよっ!」



「……お嬢様。竹松たけまつの者がお見えです」

「あー……。羽音が来るのはいいんだけど華音が来るのはなー……」

「お通ししますよ?」

「いいわよ」

 成宮が楠木に連絡して羽音達を迎え入れる。

「そう言えばおもてなしの準備は出来てるんでしょうね」

 応接間へ向かいながら傍に控える成宮に聞く。

「ええ。勿論です」

「ならいいわ。それで、私が練習している間、羽音達はどうするの?」

「ご心配は無用で御座います。あちらも練習の為にこちらへいらしておりますので」

「え? 誰が練習相手になるのよ」

 成宮は自分の胸に手を当てて答える。

「私以外に適任がおりますか?」

「……あーはいはい。練習場所はそっちで用意してあるのよね?」

「はい。万端で御座います」

 応接間の前へ立つと、成宮が扉を開ける。そこにはスーツを着て、眼鏡を掛けたいかにも重役っぽい雰囲気の若い男性と、姿形が瓜二つに少女達が座っていた。

「羽音! ……とキャノン」

「華音です。相変わらず名前を覚える程の頭ではないのですね」

 見下したように笑う方がキャノン、もとい華音。

「こんにちはですよ。元気そうでなによりですよ」

 で、こっちの大人しいんだけど少し喋り方がおかしな方が羽音。

「……初めまして、竹松グループ秘書、|村雨<むらさめ>|直人<なおと>です。本日はよろしくお願いします」

 男性が名刺を差し出す。それを受け取り、成宮へ渡す。

「私は神崎麗耶。こちらこそよろしくお願いします」

「……早速ながら、これより商談の練習会を催させていただきます。羽音様、華音様はこちらへ。村雨様はこちらでもよろしいですか?」

「構いません」

「かしこまりました。ではお嬢様。私は羽音様、華音様をご案内いたします。御用の際は楠木をお呼びください」

「分かったわ」

 そう言うと、成宮は扉を閉めた。

「……さて、早速始めさせて頂きたいと思います。まずは商談の手順、その後はロールプレイングをしながら練習させていただきます」

「はい」



「……以上、商談の流れになります。今後もこういったことがあるかも知れませんので、どうか頭に入れて置いてください」

「はい。ありがとうございました」

 ……終わった。やっと終わった。この人、真面目すぎて無理。成宮の方がよっぽど気が楽だわ……。

「……羽音達も終わってるかな……」

「麗耶ーー!」

「わっ!?」

 私のつぶやきと同時に応接間の扉が勢い良く開き、羽音が飛びついてきた。

「会いたかったですよー! 長かったですよー!」

「分かった、分かったから! 離れようって!」

「全く、神崎家は随分とお気楽な執事がいたものですね。まあ、話術はお上手ですたけど」

「お褒めに預かり光栄です」

 続いて成宮、キャノンも入ってくる。

「あ、羽音は夕食どうするの? 私の家で食べてく?」

「そんな……。お夕食までおもてなししていただくなど……」

「いいじゃないの。親には連絡しておくから。ね?」

「うーん……。どうする? 華音」

「別にどちらでも構いませんよ。最も、メニューにもよりますけれど」

「キャノンもか……。まあいいや。村雨さんはどうします?」

 ずっと立っている村雨さんにも話を振る。

「いえ、私はここで失礼させていただきます。では」

「では車までご案内いたします」

 そう言って成宮は村雨さんを連れて出て行ってしまった。

「……じゃあ、私たちは遊んでよっか」

「分かったですよ」

「仕方ありませんね。余り幼稚な遊びはやめてくださいよ?」

「しないわよ!」

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