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未練があるなんて、思わないで下さい  作者: みん


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22 加護持ち

ブレイザー家に嫁いだ時、領地の収穫量が減ってきている状況だった。それを、領民と一緒になって土地の改良に取り組んだ。そのおかげで、収穫量も少しずつもとに戻り、更に良くなってきて安心していた。

それに、私が育てる花はどんな種類でも綺麗に咲いてくれたし、切り花にしても他の花よりも長く綺麗な状態を保っていた。


「それは……私が居たから良くなっただけで、根本的には何も変わってないという事ですか?」


もしそうなら、これからのブレイザー領はどうなるのか?アシュトンやフラヴィアさんに思うところはあっても、領民に被害が出るのは望んでいない。


「100%精霊の力のおかげだという事はないと思う。土地の改良とは長い時間を掛けて繰り返し続ける必要があるから、マリレーヌが居ても居なくても暫くの間は不安定だろうし、これからも研究や改良を続けていかなければならないものだ」

「問題は、その研究をブレイザー伯爵ができるかどうか──だな」


伯父の言葉に少しホッとしたけど、リシューさんの言葉でまた不安になる。きっと、アシュトンでは無理だと分かるから。『土いじりはマリレーヌの方が得意だろう?』と言われて、私が仕切っていたから。だから、領民もいつも私に報告をあげていた。勿論、アシュトンにも報告を共有していたけど、アシュトンがちゃんと聞いて理解していたかどうかは別問題だ。


「アシュトンには……特に、()()アシュトンには無理だと思います」


以前のアシュトンなら、領民に話を聞きながら自分でも調べようとしただろうけど、今のアシュトンはアンセルや領民に任せて、『自分には無理だ』と逃げるような気がする。


「土地に関しては、領主や領民達で頑張るしかない。改良に失敗しても、それはマリレーヌのせいではない。ただ、加護があったおかげで成果が早く出ただけに過ぎない。だから、マリレーヌが責任を感じる必要はないよ」


伯父の言っている事は分かるけど、割り切れない気持ちもある。とは言え、私はもうブレイザー夫人じゃないし、もう住んでいる国も違うから、私が何かをするという事はない。


「後は、ブレイザー伯爵が“馬鹿な事をしない事”を祈るだけだな……」


“馬鹿な事”とはどんな事なのか?この時の私には、何も想像する事はできなかった。




「ブレイザーの事は置いといて、とにかく、マリレーヌの一人暮らしは危険だから、やめてもらいたい」


その危険だという理由が、“私が土の精霊の加護持ちだから”だった。

今はもう、魔力持ちも少なくなり、加護持ちとなるとお伽噺のレベルで珍しい存在となっている。だから、加護持ちが現れると、その加護持ちの争奪戦が起こる事もある。その加護によっては国同士の争いになった歴史もある。


「土地が豊穣になる──なんて、争奪戦勃発の未来しかみえない。だから、アレッサの加護持ちの事は秘匿とした。アレッサの娘のマリレーヌも加護持ちだと分かった時も、秘匿とした。アレッサも、いつかはマリレーヌに伝えるつもりだったんだろうけど、伝える前に死んでしまったんだろう」


生まれた時から与えられていたから、与えられた本人の私自身も気付かなかった。


「ただ、加護を受けた者や場所の近くには、蝶が現れる事があるから、それを知っている者が居れば、加護持ちが居るという事がバレるんだ。そうなると……だから、マリレーヌは一人暮らしはしないでもらいたい」

「はい。やめておきます。でも……」


かと言って、ナルターレル家でお世話になるのもどうなのか……。


「マリレーヌは私の大切な姪だから、遠慮せずに我が家に来てくれれば良いよ」

「もしくは、護衛を雇うか……ですよね」


伯父やリシューさんに頼めば、口が堅くて腕の良い護衛を紹介してくれそうだし、その方が伯父にも迷惑をかけずに済む。


「それなら、このままコペリオン(ウチ)で過ごせば良いんじゃないか?」

「それは……」


ー寧ろ、駄目なやつじゃない?ー


未婚の優良物件のリシューさんと、離婚歴のある女性が、職場も住居も一緒となると、あらぬ噂になってコペリオン家に迷惑がかかるだけだ。


「スカレティアでウチより安全な場所は、皇城以外にはないし、私がマリレーヌさんの事情を知っているし、口外する事は絶対にない。マリレーヌさんとなら仕事も捗るし、むしろ会話するのも楽しいから、ウチに居てくれるのなら、正直に言うと嬉しい」

「な…………」

「なるほど……」


ある意味困惑している私をよそに、伯父はニコニコと何かを納得しているような顔で頷いている。


「その提案は、私にとってはありがたいものだけど、大切な姪には、これ以上傷付いて欲しくないという気持ちがある。だから、手放しでこの提案を受け入れる事はできないし、マリレーヌが望まないのであれば断るしかない」

「それもそうですね……なら……マリレーヌさん、私の婚約者になってくれませんか?」



とんでもない発言、いただきました。





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