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赤いスター  作者: ゆーくりうすきゃる
第一章 『話題のアイドルグループ』
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第一章1 『話題』

著名活動を行う裏で残酷な所業を行う者の物語


「は゛ぁあぅあぁあぁぁぁぁぁああぁあぁあぁ..!!!!!!」


「―ダ... ずげ...て.........」


豪勢な雨粒が無慈悲にも声の出所に突き刺さる。

地につく雨音と共に恍惚ともとれる足音が遠のいていく。その音の持ち主はせせら笑いながら雨音のカーテンコールと共にその場を後にした。


※※※※※※※※※※※※※


「かわいいよね、この娘」

「どれ?」

「これこれぇ!最近話題のアイドルグループの!」


そう言いながらキヨミはスマホに映る4人組のアイドルグループを卑しいほどに見せつける。


「あーなんか話題みたいやね。うちさ、そーいうのあんましそそられんかも。みんなおんなじ顔にしかみえないし。」

「ねぇ〜そんなおっさんみたいな事言わんでぇな。ムイミはかわいいJKでしょ〜?」

「これ誰が誰とか分かるん?区別できるんすごいね。それよりうちさ、最近目とか耳にする猟奇事件の方が気になってるんだわ。」

「そんな暗い話よりキッッッッラキッッッッッラ!のアイドルグループのお話するほーが絶対たのしーから!。」

「はいはい。おっけーおっけーこんな時間だし、かえろっか。」

「もー!」


最近話題のことを雑談しながら親友のキヨミと薄く赤みがかる公園を後にして帰路についた。公園という割には遊具はブランコしか見当たらず、トイレがあるだけ。そんな質素な公園は二人にとっては揺籠のような安らぎを与えてくれる。幼き頃からの思い出が詰まっている。


家について開口一番に「ただいま」が出るよりも先に「遅い」が鼓膜に突き刺さった。


「あんた、こんな時間までなんしてたん?時計、読めへんかったりする?」

「だって誘われたから」

「それって断れへん誘いやったん?」

「いや別に.....。でも...」

「もうええ。言い訳なんか聞きたないで。はよ部屋行け。これ以上気に障らすな。」


母は最近門限に神経質になっている。心当たりは最近頻発している連続猟奇殺人事件だろう。母の身にもなってみればあそこまで赤い感情を露わにするのも仕方のない事だ。だからこそ相対的にみて明るい例の人気アイドルグループの熱が来ているのだろうか。


「そーいやキヨミって誰が推しとか言ってたっけ。」


あの時聞きそびれていたことを家についてようやく思い出した。


「明日聞けばいっか。」


そう言ってスマホを覗きあの時の話題に出たことを調べてみた。例のアイドルグループは最近できたユニット。特徴的なのは危険的なパフォーマンスで観客を魅了するというアイドルとはかけ離れた大道芸のようなマーケティングを行っていること。これがSNSにおけるバイラルヒットを果たし今時の話題に持ちきりという訳だ。


「アイドル....?これがアイドルなん?....」


得られた情報から驚愕の音がもれる。アイドルと言えば歌やダンスといったパフォーマンスを磨きあげてそれらを観客に感動とドラマを提供するのが一般的なセオリーだろう。しかし、例のユニットは投げナイフを用いたり、ブレイクダンスをしていたりとパフォーマンスがやけにアクロバティックなのだ。これがアイドルグループと銘打っているのだからバズったのも妙に納得してしまう。


「はぇ〜...アイドルってもっとキラキラしとるもんやと思っとったけど、こんなのもあるんか。変なファンとかストーカーとか、そーゆー危険もあんのにさらに危険を上乗せしてる。」

それに相対するように連続猟奇殺人事件のことも調べてみる。最初に起こった事件はコンサート会場付近のトイレ。被害者は男性。おぞましいのは遺体の眼球、鼻、口全てが抉られていたこと。そのコンサートは話題のアイドルグループもライブを行っていた。時系列はライブ開始前。その後メンバーの一人が5分の遅刻をえてライブは行われた。遅刻の理由は詳細には語られていなかった。


「ん...?なんかおかしない?...考えすぎか....」


目に疲労感が募り眠気が襲う。脳が休憩を促す。時刻は気付けば9時を下回っていた。その後瞼を閉ざし活動を休止した。

______________________

「みなさん、今日もお疲れ様でした。それにしても素晴らしいパフォーマンスでしたね。みなさんの日々の歌とダンスレッスン、アイソレーションがあれ程の完成度を届けてくれたようです。それと魅惑的な危険を伴うパフォーマンス。この調子でキャリアを磨いて行きましょう。本日は本当にお疲れ様でした!」


ライブ後の総括をマネージャーに伝えられた後、各々のメンバーは成功の余韻に浸る。マネージャーが楽屋を出た後も賑やかなムードは続いた。ある一つの疑問を投げかけられるまでは。


「何で遅れてきたの?」


この一言によって各メンバーが静止する。5分もの遅刻はプロにおいて絶対に許せなかった。


「言わなきゃだめ?」

「何で言わないの?時間にルーズなのプロ意識欠けてない?恥ずかしいと思わないの?あれだけ大衆の面前で醜態を晒してるのに。」


ライブに遅れてやってきたアイドルグループ『ルーベル』の一人、ミナに同メンバーのアヤが遅刻を咎める。刺々しい空間がライブ後の楽屋を覆う。他メンバーのシイナとコロミがアヤを宥める。


「二人とももうやめなって。ライブは見ての通り成功した。結果的にだけど...」

「ミナは時間厳守を意識しよ....社会人として一番大事だから...」


宥める二人の掌とその周辺が赤く馴染んでいる。長時間のライブによる度重なる過激なパフォーマンスで血が滲んでいる。


「あんた達、その手拭いたら?」

アヤはドスの効いた声で二人を威圧する

「あたし、もう帰るから。やることある」


「は?特典会とかどーする訳?マネージャーには何て言うの?5分遅刻して小っ恥ずかしい思いしたから帰りますとでも言うの?」


バチン!!!!


「いっ......何すんだよゴラァァ!!!!」

「ちょ、ちょっと!!!二人とももうやめて!!!」 

髪を引っ張ってとっくみ合う二人をシイナが仲介する。


「もう...分かったから...マネージャーには都合よく伝えとく....かえって...いいから...。」

そう言われてミナは椅子に縮こまって座るコロミを押し除けてドアを強く打ち付けて楽屋を去った。その一連を見たアヤがこう呟く


「クソアマが....」


ヒリついた余韻がただミナの消えた楽屋を包む。


「...はぁ..もう何なの.....お楽しみの時間が...減っちゃったじゃん.....」


ヒールの音を立ててトイレ鏡に映る自身に向かってそう呟く。肩掛けバックからパフォーマンス動具を取り出して第二のパフォーマンス(おたのしみ)の準備をはじめた。人気のなくなった楽屋でただ一人ご機嫌な鼻歌をともしながら淡々とルーティンの一つであるもう一つのパフォーマンスを披露する観客選びに胸を躍らせて外へ飛び出した。


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