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まもなく終点、ターミナル

本作品はカクヨムにも投稿しています。

「──て。──きて」

「ん……」

「──起きて」

「ん……?」


 ゆさゆさと体を揺さぶられて、さらには声をかけられて。

 俺は自分が寝ていたことを自覚した。

 たしか、ゲームをしていて……。


 じゃない!?


「ッ……!?」

「おはよう、蒼斗。よく眠れた?」

「……っ、はぁー……。俺、寝てたのか? えっと……」


 目を覚ましてすぐ声をかけてきたのは、白髪に白い軍服を身にまとった少女。

 たしか、リーゼ……リーゼロット? リーゼロッテ?


「リーゼリット。間違えて覚えられることが多いから、リゼでもいいよ」

「……リゼ。俺、寝てたのか? なんか記憶があいまいなんだけど」


 ゲーム中に寝落ちして、目が覚めたらリゼがいて……世界が、終わったとか言われて。

 このあいまいな記憶が夢だったらいいのに、なんて。


「まぁ、うん。そうだね。寝てたよ。体が能力の負担に耐えられなかったんだと思う」

「能力……なんか、言ってたっけ」

「説明の途中だったね。……でもまぁ、その辺りは専門家に聞いたほうがいいよ。ちょうど着くから」

「着く? 着くってどこに」

「この世界線の幹、世界樹ターミナルだよ」


 その言葉の直後、急に陽の光が差し込んできて思わず目をすがめた。

 寝てたせいか、眩しさにすぐ適応できない。


 少ししてようやく明るさに慣れた目が、窓の向こうの景色を捉えた。


「ここが、世界樹? なんつーか、思ってたのと違うな」


 視界に広がるのは、白基調の建造物が立ち並ぶ街並み。

 なんていうか、こう、いやでも、よく見るとファンタジー世界系のデザインの建物が多い気がする。


世界樹せかいじゅって言っても、実際に樹木ってわけじゃないからね。あくまで世界の中心と、そこから枝分かれした世界の例えとして使われている言葉だし」


 そんなことを話していると列車は徐々にスピードを落としていって、いつの間にかちゃんとした線路の上を走っていた。

 それからすぐにホームが視界に入ってくる。


「さ、行こっか」


 列車が止まりきる前にリゼは言って、俺の手を取る。


「おい」

「ん?」

「ガキじゃねぇんだから、1人で歩けるっての」


 気恥ずかしくて、俺はその手を振り払った。


「ならいいけど」


 リゼはさして気にした様子もなく、扉のほうへ歩いていく。

 

 なんつーか、調子狂うな。

 世界がぶち壊されたこととか、俺の体の状態とか、いろいろ理解が追い付かなくてイライラしてるのもあるんだろうけど。


 そういうときにああも静かっていうか、淡いっていうか、穏やかっていうか。

 そういうの見ると釣られて黙らざるをえないっていうか、なんていうか。


 むしろ調子整ってんのか?


 くだらないことを考え始めた頭を振ってリセットして、俺もリゼに続いた。

 扉の前で待っているとやがて列車は停止して、リゼがホームに降り立った。


 俺もそれに続いて──。


「動くなッ!」

「……は!?」


 いきなり銃口を向けられた……!?


「お、おいリゼ……! どうなってんだよ!?」


 リゼの肩を掴もうとした途端、銃口が近づけられてフリーズする。

 辺りを見回すと、ホーム中にリゼと同じようなデザインの軍服を着た連中が待機していた。

 その中の何人か、俺たちを取り囲む連中が銃を手に取っているわけだ。


「はぁ……」


 俺が呼吸すら止めて突っ立っていると、リゼがため息を吐いた。

 それから、銃を持っている連中の指揮官らしい男に向かってリゼは歩み寄る。


「警戒しすぎ。銃を下ろして」

「エメローゼさん。こいつが火種と、そう報告したのはあなた自身だ」

「たしかにそう伝えたけど、能力は非覚醒状態なことと、私の氷で制圧可能なことも伝えたはず」

「しかし……!」


 なおも食い下がる男に対し、リゼはさらに一歩近づいた。


「蒼斗は今、故郷の世界を滅ぼされた直後なの。身寄りも世界もなにもない、そんな地獄を生き延びた生還者に対する扱いがこれ? 私たちはこの世界樹に属する世界を、その世界に属する人たちを、守るための組織でしょ?」

 

 ──抑揚の薄い、けれど凛として通るその言葉に、男はなにか思うところがあったらしい。

 深く息を吐くと、手振りで部下たちに銃を下ろさせた。


 ……もう、俺も動いていい……んだよな?


 詰めていた息を吐きだして、リゼに近づく。

 

「ごめんね、突然。怖い思いをさせて」

「は? 全然怖くなんかなかったけどな?」


 こいつ、とことん俺のことを子ども扱いしやがる。

 顔をしかめていると、リゼは改まった様子で俺を見つめてきた。


「改めて……ようこそ、ターミナルへ。キミは火種として、厄災の獣の力を刻まれてしまった。これからその力についての検査とか、いろいろな手続きをしてもらうことになるから」

「……力、ね」


 脳裏によぎる、意識を失う前に見た頬のヒビ。

 今更疑ったりはしない。


 検査ってリゼは言ったけど、実際にはどうなんだ?

 今は銃を収めたけど、この先俺はどうなるんだ?


 ドクン、と体の内でなにかが跳ねる。

 不安か、恐怖か、それとも。


「じゃ、行こっか」

「……おう」


 よくわからない感覚に気持ち悪さを覚えながら、俺に決定権なんてあるわけなくて。

 リゼの案内に従って、ついていくことしかできなかった。

ようやく世界樹の中心に当たるターミナルに到着した蒼斗。

着いて早々トラブルに見舞われてはしまいましたが、果たしてこれから先の彼の扱いはどうなってしまうのか……。

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