白の少女は助けたい
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コテンと、意識を失った蒼斗が寄りかかってくる。
すると背後で車両のドアの開く音がした。
「お前さん、そんな繊細な能力操作ができたっけか?」
「車掌さん、見てたの?」
振り返った先で、車掌さんが肩をすくめている。
「どう?」
「車体のチェックは済ませた。空間断裂に巻き込まれかけたからな」
「ごめんなさい。見通しが甘かった。半日くらいは滞在できると思ってたんだけど」
「お前さんが謝るようなことじゃねぇさ。それくらい、今回の獣が規格外だったってことだろう?」
そう言って歩み寄ってきて、車掌の目が私の腕の中で眠る蒼斗に向いた。
目は閉じているけど、顔半分に走るヒビからは琥珀色の光が微かに明滅しているのが分かる。
「どうするんだ、その小僧は。今凍らせたのは、刻印が活性化したからか?」
「うん。火種だからね。無力化くらいはしておかないと、多分ターミナルは受け入れてくれないから」
蒼斗を席に座らせて、私も向かいの席に腰かける。
彼のことは能力で意識を奪っただけで、殺してはいない。
(……ちょっと調整を間違えたけど、大丈夫だよね)
繊細な能力操作は苦手だ。
「受け入れるって、本気か? 今回の獣の特定のためにも、どうせそいつは拘束されて解析行きだろうよ」
「させないよ、そんなこと」
食い気味に首を振る。
「この子は私とおんなじだから」
「あぁ。そういやそうだったな。捨て子だったお前さんは、養父に拾われて剪定士になったんだったか」
「うん」
力の使い方も知らなかった時を思い出す。
自分を人にしてくれた恩人がいた。今はもういないその人のように、今度は自分が。
助けてもらったから、人にしてもらったから。
同じようにしてあげようと思う。
傲慢かもしれない。けど、見殺しにするような真似より何倍もいいと信じて。
「上はうるさいだろうがな。お前さん、事と次第によっちゃかなり揉めるぞ?」
「誰に何を言われても、どれだけ酷い目に遭っても、やり遂げるよ。そのくらいはね」
ヒビが薄れ始めた蒼斗の顔を見つめながら、私は応じた。
「そうかい。ならいいさ。ひとまずターミナルまでまだ時間はあるし、のんびりしてな」
言うと、車掌さんは先頭の汽車へ戻ろうとする。
行きはかなりスピードを出したけど、帰りは通常運転だ。
代り映えしない車窓に目を細めながら、頬杖をつく。
「……眠らせるの、少し早かったかな」




