ゲームオーバー
本作品はカクヨムにも投稿しています。
すっかり夜も更けてきて、街が静けさに包まれた頃。
そんな夜の静寂とは反対に、俺──杠葉蒼斗のテンションはヒートアップしていた。
「っし、いけるいける!」
パソコンのモニターを凝視しながら、口角を吊り上げる。
ヘッドホンからは断続的な銃声が聞こえていた。
「はぁっ!? 雑魚が出しゃばんなカスッ……!」
台パンしたくなる衝動を抑えて、俺はコントローラーを操作する指を加速させる。
画面に映るのは1人称視点のFPSゲームの画面。
狭まるエリアの中で生存をかけて戦うこのゲーム、既に試合は最終局面だ。
残りは自チームを含めて3チームで9人。
三つ巴の戦場はかなりごちゃついてるけど、俺たちは優位なポジションを取ってる。
このままなら勝てる──そう思った矢先、バカが先走った。
「ざっけんな!」
残ったもう1人と共に高所を維持しながら、犬死した馬鹿はこの際無視する。
この盤面じゃ助けに行く価値はない。
「引きずり下ろしにくるよなーこれ……」
味方のデスボックスから目を背け、投げ物が飛んでこないか警戒する。
けど、下の連中はこっちにグレを投げてくるような気配はない。
「あ? これもしかしてグレない? じゃあ勝ち確じゃん!」
最終エリアは俺たちのいる高台だ。
下の連中はダメージエリアを突っ切らないとここには上がってこれないし、その隙を見逃すほど俺も間抜けじゃない。
その上ここへはかなり無理しないと射線を通せないしグレもないとくれば……。
「よしよしよし……はいウルト!」
最後に残った1チームにウルトを吐いて爆撃!
You Winの文字が画面にでかでかと映る。
「オッケーイ! バカ1人抱えても勝てちゃうんだよな~俺はさぁ~!」
ニヤニヤと笑いながらリザルト画面を眺め、俺は背もたれに寄りかかった。
ちらりと画面端を見れば、21時をすぎたところだ。
防音室でもない部屋で声を荒げるのが躊躇われる時間かもしれないけど、俺には関係のない話だ。
なにせ今この家にいるのは俺だけだし、両隣の家に聞こえるほどの大声はさすがに出していない。
と言うか、そんな大声はさすがに出ない。味方2人がとんでもないトロールだとか、縮小エリアが終わってるとか、ラグとかチートとかそういうのが絡まない限りは出ない。多分。
「んー……っ」
背もたれに寄りかかり、俺は大きく伸びをする。
それからキーボードの横に置いていたチョコに手を伸ばし、雑に口に運んだ。
「……風呂入る前にもう1戦やっかぁ」
背もたれに寄りかかったまま、マッチングを開始する。
明日は土曜日で、帰宅部の俺は高校に行かなくていい。
2年に進級したての春ともなれば、ついこの前終わったテスト以外に心配事なんてなにもないし、今日はオールでもしてやろうか。
なんて考えていたらマッチングしたようでキャラクターの声が聞こえた。
味方運はどんなもんかな──。
「おっ、まぁまぁ使えそうじゃん」
両隣に映るキャラクターとバッジに笑みを深め、俺は前のめりになって──。
「えっ」
なんで急に、画面が真っ赤に──。
「──て。──きて」
「ん……」
「──起きて」
「ん……?」
ゆさゆさと体を揺さぶられて、さらには声をかけられて。
俺は自分が寝ていたことを自覚した。
たしか、ゲームをしていて……。
「やばっ、試合中に寝落ちし……?」
跳ね起きた俺は、飛び込んできた光景に言葉を失う。
なんか、そこら中燃えてるんだが……?
「………………は?」
「おはよう。良かった、目を覚ましてくれて」
抑揚の控えめな声がして、俺は声のする方へ顔を向けた。
するとそこには、1人の女の子が片膝をついていた。
肩より長い白髪に、綺麗な青い目。背丈は俺と同じくらい。そこまではいい。
細い鼻筋に形のいい眉や唇やら、一目で可愛いと分かるその女の子は何故か──軍服みたいな恰好をしていた。
「えっと……は? 誰? なに? どういうこと?」
「リーゼリット」
「……は?」
「リーゼリット・エメローゼ。それが私の名前」
穏やかな、静かな口調で少女は名乗る。
炎が揺らめいていた。
少女の後ろだけじゃない。
見回して、唖然とする。
足元には崩れ去った家の瓦礫があり、辺りは焼け野原とかしている。
そんな赤い景色の中で、白い少女は静かに告げた。
「この世界はもう、終わったの」
閲覧していただきありがとうございます。
連載小説2作目は、タイトルでもう察している方がほとんどかと思われますがバトルものです。
さて第1話にして世界が終わってしまったらしい蒼斗くんですが、果たして目の前に現れた少女はなにものなのか──?
第2話はほとんど書き終わっているので、近いうちに投稿します。




