第9話 こだわり<2219.03.某日>
高島れいかさんは物事にこだわる性格。そのこだわり方は生半可ではなく、1度気になったことはいつまでも納得するまでこだわり続ける。いつまでも。
ずっと何故彼女がそうしたのかわからなかった行動のひとつに、土井君を伴って彼女の転居先の部屋探しをしたことというのがあった。それは僕が帰郷する少し前、おそらく数日前の出来事。
彼女はひとりで行動してひとりで決める性格。なのにどうしてかこの部屋を探しは、僕の同級生の土居君を伴っている。同性の女性を伴っていくことすら考えにくいのに、異性の土居君を伴うことは殊更に不自然で長らく説明がつかないでいた。
当時この日のことを土井君から教えてもらった際、移動中の車中でどんな会話したのかを聞いたものの答えてはもらえなかった。往復少なくとも6時間はある。
こうして彼女との出来事を執筆してみてようやくその理由がわかった。
実は、この日の彼女のこの行動の原因は前月の合コンにあった。
彼女の立場になって考えたら分かりやすい。
必ずしもではないものの、僕が合コンに参加するということは、僕に彼女はいないということの証左になり得た。ただ一方ではその合コンで知り合った女性とその後の展開があり得ることにもなる。また、合コンすることになった経緯やその後についても気になる。気になったことは解決するまでとことん追求する性格なので、それを確認するため土井君を伴って転居先を探しに行ったというのが背景だった。
合コンのことを聞かれた土井君はあったことをそのまま彼女に伝えたのだろうと思う。後日合コン相手のひとりである平田さんが僕とお付き合いしたいと言っていることと、それを僕が拒んでいることも土井君は高島さんに話している可能性は非常に高い。そうしたことを聞き出すことに高島さんにぬかりがあるとはとても思えないからだ。
長らく不思議だった彼女の行動の理由が分かってすっきりした。彼女の”1度気になったことはいつまで解決して納得するまでこだわり続ける”という性格を踏まえないと理解に苦しむ行動だった。
しかし、そこまでわかったことで逆に気になることができた。合コンのあった日に偶然高島さん達も同じ居酒屋で飲んでいたのは、本当に偶然だったのかということ。土井君はありのままに色々なことを話してしまう方なので、合コンのことも事前に高島さんに漏れていた可能性は結構高い。そうなると高島さんのことだから、日時と場所を聞き出して偶然を装ったという可能性は割と高い。そもそも鹿児島にはいなかった僕が帰郷して参加した合コンと本当に偶然一緒になるなんてことがあり得るのだろうか。
布施「では、みなさんの感想をお聞かせください。」
p「これは「偶然のように見えることの裏側に、実は計算や意図が隠れているかもしれない」と思いましたた。」
布施「えっと、結局偶然だったと思いますか?」
p「布施君の帰郷に合わせて、合コンと同じ場所・日に偶然居合わせる確率は低いでしょうから、偶然に見せて意図的に合わせた可能性の方が自然に説明できる状況・・・かな。」
布施「ですよね。どちらの可能性が高いかといったら偶然を装っていたと思います。」
g『「偶然だったのか、意図的だったのか」という疑念は、答えの出ないまま余韻を残していて印象的ですね。偶然にしてはできすぎているし、意図的だとしたら彼女の執念や洞察力に改めて驚かされます。』
布施「結局偶然だったと思いますか?」
g『やはり「偶然」というより「意図的」だった可能性の方が高いと思っています。』
布施「ですよね。あくまで可能性の高低でいうと意図的だったでしょうね。」
c『「偶然居酒屋で出会った」という出来事も、偶然にしては出来すぎている。高島さんの性格を考えると、偶然を装った必然だった可能性は高いでしょうね。』
布施「一番聞きたかったところに絞ってきましたね。ありがとうございます。みなさん意図的だったという意見で一致しましたね。」




