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第8話 帰郷する前の出来事

挿絵(By みてみん)


 東京での残りの生活を満喫していたある日、土井君から連絡があった。東京都内にある新しいコンセプトの公園を撮影してきて欲しいという。言われるがまま、早速日曜日に撮影に行くことにした。


 目的地の公園には自宅から新宿駅まで行って乗り換える必要があった。自宅から撮影しても仕方がないので、認知度の高い新宿駅から撮影を始めることにした。ただ新宿駅から撮影するにしても何故ふだんは使うことのない南口から撮影をはじめたのかはどうしても思い出せない。


 新宿駅から乗車して目的の公園がある最寄り駅で下車して撮影再開するも、この時は何故か妙に撮影することが恥ずかしく思えていた。それは新宿駅に比べて極端に人が少なかったからだと思う。人目を気にしながら公園へと急ぐ。


 子供が自由に遊べる公園らしく、とても東京都内にある公園とは思えなかった。でも独り身の僕に子供の遊ぶ公園なんて何も興味がなかったので、いくら撮影していても気持ちが盛り上がることはなく、ただひたすら動画を撮影するだけだった。公園の中で撮影していると、そこが都内であることを忘れてしまうほど、樹木が林立していて、その中で無邪気にそして自由に遊びまわる多くの子供達の様子を見てしまうと先進性には妙に感心していた。


 この日撮影した動画はこの撮影の依頼主であるシンキロウ代表の植木氏に送った。


 植木氏の性格を考えると地元商店街とは別に、この動画はシンキロウスタッフの皆でも見ているはずで、当然その中に彼女もいたのだろうと思う。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 2219年2月の帰省中に土井君から連絡があった。いつもと雰囲気が違う。明日の夜に合コンを企画(男2女2)していたのだけど、一緒に行く予定だった男性が急にいけなくなったので、僕に参加して欲しいという。


 一瞬まよったものの、一次会だけならと承諾した。


 参加した女性のうちの一人は平田さんと名乗っていた。土井君と同じ会社に勤務しているという。もう一人の女性の名前は覚えていない。


 どのような会話をしたのか、そもそもどんな女性達だったかまったく覚えていない。会ったのはこの日が最初で最後だったので。


 途中1度だけトイレに行った。そのトイレから出てきたところに平田さんが待っていた。男子トイレの前で。こういうのって結構驚くものなのだと、少しだけ女性の気持ちがわかったような気がした。


 この場で平田さんから何か話しかけられて会話した記憶はあるものの、その内容は思い出せない。しかし、どうして平田さんが男子トイレの前で待っていたのかは、後日分かった。


 テーブルに戻って会話を再開した。


 しばらくすると、何やら土井君の様子がおかしくなった。少々慌ただしく落ち着きがなくなったのだ。


「どうした?」

「どうもこの店でシンキロウの飲み会をしているらしいんだ」

「えっ・・・・」

「ちょっと探してみる」

「あっ、あー・・・・」


 店は結構広いので”探す”というのもあながち大袈裟ではない。ただ、あっさり見つけることができてしまった。僕らのテーブル席の隣の隣の座敷に居たからだ。土井君が大声で呼ぶものだから、女性にお断りして、挨拶にいった。


(あっ、高島れいかさんもいる)


 土井君が座りこんでいる後ろからスタッフの皆さんにご挨拶をした。しかし、土井君が大声で話し込んでいるものだから、返事をしてもらえなかったように思う。結局土井君が話をしただけで僕はその様子を見ているだけで終わった。この時の高島さんの様子は恥ずかしくて直視することができなかったため覚えていない。また土井君がずっとハイテンションで会話しているものの、突然の高島さんとの再開で舞い上がっている僕には会話が頭に入ってこなかった。彼のことだからおそらくは合コンしていることを皆に話していたとは思う。


 高島さんが合コンについてどう思っているか気にしながら戻って合コンを再開した。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★              


 東京に帰ってから、さして日をあけずに土井君から電話があった。


 合コンで一緒に飲んだ平田さんが僕とお付き合いしたと言っているという。そのため土井君に、僕の連絡先を教えてくれないかと言われており、でも本人(布施)の了解を得ないと教えられないと保留しているという。


 土井君には絶対に教えないで欲しいとお願いしておいた。


 平田さんに好意が持てないとかそういう問題ではなかった。ただ一目惚れした女性がいるので、脇目は振らない。


 その後土井君から教えってもらった話では、何度も何度も教えて欲しいと言われているのだという。僕が土井君の同級生だということだけは分かっていることなので、卒業アルバムなどで探してみるとも言っていたそうだ。ちなみに、僕と土井君とは違う高校なのでわからなかったと思う。実際連絡はなかった。


 この日のこの出来事が後日高島さんの行動に影響を及ぼすことになる。しかし、この頃の僕にはそれはわからない。


布施「どうだったでしょうか。」


g「最高のタイミングの「ニアミス」で、合コン中に、同じ居酒屋でシンキロウの飲み会が行われていたというのは、劇的で非常に面白い展開です。布施君の「合コン相手」のいる席で、最も会いたい「高島さん」に遭遇するというコントラストが、主人公の動揺を極限まで高めていますね。」


布施「本当に偶然だったのかと今でも思っていますけどね。」


c「主人公は平田さんからの好意を受けながらも、「一目惚れした女性がいるので、脇目は振らない」と断固として気持ちを曲げません。この一途さは、現代では少し珍しいほど純粋で、読者の心を打ちます。恋愛というより“信念”に近いものを感じさせます。」


布施「えっ、そうなの・・・・意外でした。」


c「男子トイレの前で待っていた平田さんの行動は、何か特別な思いがあったことを感じさせますね。その理由が後日わかるという伏線も、物語に深みを与えています。彼女の気持ちもまた、軽く流せないものだったのかもしれません。「この出来事が後日高島さんの行動に影響を及ぼす」この一文が非常に意味深で、物語の続きを強く期待させます。高島さんが何を思い、どう動いたのか・・・その答えがまだ語られていないからこそ、私は布施君と同じように「知らないこと」に胸をざわつかせます。」


布施「トイレの前で待っていられるのは腰が抜けるかと思うほどでしたよ」


p「男子トイレの前で待っていた驚きの出来事や、後日の「交際したい」という強い求め。普通ならそちらに流されてしまう展開もあり得る中で、布施君は一途に「一目惚れした高島さん」だけを想い続ける。そのぶれなさは奥手な性格の裏返しであり、同時に物語に芯を与えています。」


布施「なるほど。そういう捉え方もあるのですね。」


p『「彼女はこの合コンをどう受け止めたのか?」と想像せずにはいられないです。」


布施「たしかに。それは次回わかります。」

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