第43話 避暑地の貸別荘へ<2220.07.22>_涙目
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土産物屋の広い駐車場に出て、三々五々談笑をはじめた。高島さんとの不自然な距離感は何も変わらないまま、どうすればいいのかがわからなくて、距離をとって、近くの誰かと話をぎこちなく続けた。駐車場には、そこから下に降りる階段があって、その先に何かがあるという話がどこからともなくでてきた。バラバラだった話題がこれでひとまとまりになった。みんなの関心は階段の先に何があるのかに集中していた。階段があることも、その先に何かがあるのも確かだけど、ただ何があるかが分からない。全体的には、このままみんなで下に降りて行ってみようということで話が纏まりそうな雰囲気になったものの、どうしても踏み出せないでいた。行くのか行かないのか、そこに論点が集中して加熱してはいったものの、階段を見下ろした感じから、戻ってくるのが大変そうという理由で結局断念することになった。結論が出たところで、高島さんが先に帰路につくという話になった。ここから彼女だけ帰り道が異なる。土産物屋を出た道を彼女は真っ直ぐに南下して約90分。僕らは右折して東へ、やはり約90分。
彼女以外のみんなは、彼女を見送るためだったのか、偶然だったのか、駐車場の出口にひとかたまりになって立っていた。彼女の車が僕らの立っている駐車場の出口に向かって、不自然なほどゆっくり近づいてくる。運転席の窓が徐々にさがって、車も更に近づいてくる。彼女の表情が見分けられるところまで近づいたところで、驚いた。目に涙を浮かべていた。はじめて見た彼女の涙目。わずかながら俯加減で、それでいて僕らに顔を軽く背けている。僕らと至近距離まで近づいたところで、見送るみんなからの声に合わせて、わずかにこちらに顔を向けて頭を下げるものの、下向き加減で表情を見ることはできない。でも確かに目頭に涙を浮かべていた。
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この日彼女が涙目だったのは決して見間違えではない。前日から様子がおかしかったことも、またしかり。妹さんの結婚がこの貸別荘での彼女の挙動にどの程度影響していたのかは分からないものの、少なからぬ影響はあったと思う。また、彼女の性格の強さを鑑みると、あるいはその影響は相当な程度だったのかもしれない。
僕から彼女に2回目の告白をしてから約半年。彼女からすると、いつまでたっても次の行動を起こしてはくれないことから、不安になっていた部分もあったのかもしれない。ただ、僕からすると、立ち直るにもそれなりの時間が必要なわけで、仮に立ち直ったにしても、過去2回のトラウマはそう簡単には解消できるものでもなかった。




