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第34話 とても大切なこと、でも分からなかったこと

挿絵(By みてみん)

※画像はイメージです。


 どうしても高島さんの性格で分からないことがあった。社交性が高く拘りの強い性格で、気が強くて、何をやらせてもそつなくこなす。そんな高島さんの、とても大切な何かが理解できている気がしない。同じ職場で勤務する人なら頼りになる職員だろうし、同時にしっかりしている分怖い存在でもあるかもしれない。彼女のこの掴み切れない性格が、僕にとってはとても大切な部分である気がして仕方がなかった。でも雲をつかむようで、さっぱり分からない。分からないのは僕の洞察力の限界なのだろうと思っていたけど、そう単純な問題でもなかった。何故ならそれは彼女にとっては恥部であって知られたくない部分だったのだから、彼女としては他人に知られないように振る舞っていたわけで、そう簡単に理解できるわけもなかった。あるいは彼女自身も理解したうえでそうしていたわけでもなかったのかもしれない。

 五井さんと僕が楽しそうに会話していることに、ひどく嫉妬して動揺した彼女は、どうしても、どうあっても僕の気持ちを確かめたくなった。だから僕からの告白を誘導した。にもかかわらず彼女は僕と交際をはじめることをしなかった。それからさして日を開けずに僕と彼女は植木代表夫妻らと旅行に行くことになる。当時旅行を楽しむ余裕などなかったので気付かなかったのだけど、この旅程はとても計算されたものになっている。最初の湾内クルージングでもスムーズに乗船できたのはあらかじめ調べてあったからで偶然ではない。この後すぐに観光バスに乗らなかったのも同じ理由で、きちんと下調べして計画してあったからだった。かなり強行なスケジュールになっているものの、宿泊することなく充実した旅程となっていたのはかなり精緻な企画力だと思う。ただこの高い計画性の性格は後にあだとなり、彼女にとって耐えがたい禍根を残すことになる。

 しかし、おそらくこの日の彼女の誤算はあまりに僕に元気がなかったことだろうと思う。僕のことだから全般的には明るく振る舞っていたろうとは思う。自分の心理状態を周りの人に気付かれることが極端に嫌いなので、悲しかったり辛かったり、怒っていたり動揺していたりする場合、必要以上に明るく振る舞って自分を装ってしまうからだ。ただ時折みせていたのかもしれない、普段とは違う様子が彼女には目についた。だから昼食時の彼女なりの”やさしさ”を示してくれたのだろうと思う。

 この一連の流れの中の謎が、何故自分から告白を誘導しているのもかかわらず交際の申し出は受け入れなかったのかということと、普段の彼女からは想像もつかないこの感情の浮き沈みになる。これはもう推測でしかないのだけど、おそらく自己肯定感の問題なのだと思う。その自己肯定感の低さゆえに交際をはじめることが怖かったのではないかと。交際がはじまったら、その先の選択肢は2つ。結婚するか別れるのか。彼女からすれば別れることになるかもしれない恐怖があったのだろうと思う。そう考えないと、1回目の告白を受け入れなかったことは別にしても、2回目の告白を受け入れなかったことの説明がつかない。

 しかしこれが事実だとすれば、それはそれで考えようによっては僕に対して随分失礼という受け止め方もできる。僕の女性を見る目を低く評価しているという受け止め方もできるからで、ただ、原因が自己固定感の問題であるとすれば、仕方ないことなのかもしれないとも思う。なぜなら、かくいう僕自身も自己肯定感が低いから、理解はできる。

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