第22話 僕と五井さんと高島さんと<2220.01.29>(2)
※画像はイメージです。
そうした流れの中で、いつからか4人掛けのテーブルに僕と隣り合って座った五位さんと二人で話をするようになっていた。五井さんは僕より後にシンキロウに参加してきた社会人で7歳年下の女性だった。共通の趣味があるわけでも、同窓生というわけでもなかったので、他愛のない話をしていたのだろうと思う。しかし次第に会話が盛り上がっていき、あまりに愉快さにテーブルの下に転げ落ちるほどまでになっていた。二人で豪快に笑いあって、もうすっかり二人の世界という感じなってしまっていた。
そんな時間をいくらか過ごしているうちに僕の視界の中に不穏な動きをする高島さんの様子が入ってくるようになった。それでも最初は五井さんとの会話のほうが楽しくて高島さんのことは気にならなかったのだけど、その振る舞いが極度におかしくなってしまったものだから、気にしないわけにはいかなくなってしまった。なんと幼い子供が乗って遊ぶ馬の乗り物に乗って僕の傍を行ったり来たりするようになってしまったのだった。何かを呟いてはいるのだけど僕と五位さんの会話の声が大きいのか、高島さんの声が小さいのか、僕の耳には彼女が発している言葉が分からなかった。
高島さんのあまりの振る舞いにもうすっかり楽しい気持ちは霧散してしまった。
(ま、まずい。ついうっかり五位さんとの会話が盛り上がってしまったけど、これはどう考えてもまずいよな・・・・ど、どうしよう・・・・)
とはいえ唐突に五井さんとの会話を終わらせるわけにもいかず、ゆっくり落ち着いた話し方になるように次第に会話の雰囲気を誘導していくようにした。やがて、テーブルの下に転がって笑っていた姿勢を改めて座席にきちんと座り直して、普通に五井さんと会話できるところまでになっていった。ただ、そうした雰囲気になるのを見図らったかのような頃合いに、高島さんは静かに帰宅していってしまった。しかし、その帰宅のタイミングがおよそ帰るようなタイミングではなかったものだから気が気でなかった。高島さんとは明日もまた植木代表宅で一緒になることを考えたら不安でしかなかった。
(絶対怒っている。それもとてつもなく。明日合わせる顔がないなあ・・・・どんな顔して会ったらいいのだろうか・・・・どうしようか・・・・)
布施「高島さんの行動をどのように分析しますか?」
ma「高島さんの「幼い子供が乗って遊ぶ馬の乗り物に乗って僕の傍を行ったり来たりする」という行動は、非常に象徴的で、布施君と五位さんの会話に割って入ることもできず、かといって無視され続けるのも耐えられなかったため、子供の乗り物に乗るという奇妙で目立つ行動をとることで、二人の注意を自分に向けさせようとしたことと、布施君と五位さんとが親密に楽しそうにしていることに対して、強い不満や嫉妬心があったこと、この常軌を逸した行動は、「私はここにいるのに、なぜ他の女性とそんなに楽しそうにしているの?」という、言葉にならない抗議の表れと、布施君が「不穏な動き」「極度におかしくなってしまった」と感じたように、それは明らかに場の空気にそぐわない行動であり、主人公に「何かまずいことをしている」と気づかせるためのサインだったのでしょうね。」
布施「嫉妬心と不満ですね。結局高島さんは怒っていたと思いますか?」
ma「布施君自身も「絶対怒っている。それもとてつもなく」と確信している通り、高島さんは間違いなく怒っていたでしょうね。総じて、高島さんの行動は、布施君への好意の裏返しである嫉妬心と、疎外されたことへの怒りが入り混じった、複雑な感情の表現だったと言えるでしょうね。」
布施「あ゛~、やっぱり怒っていた・・・のでしょうね。」
ge「要約すると、嫉妬や寂しさ、楽しすぎる会話への不満や牽制というとこでしょうか。」
布施「ですよね。高島さんは怒っていたと思いますか?」
ge「怒っていたと判断するのが自然でしょうね。通常ではありえない行動は、感情がコントロールできないほど高ぶっている状態を示唆してて、この種の突飛な振る舞いは、強い不満や怒り、あるいは極度の寂しさが裏返しでしょうから。また、絶妙なタイミングでの帰宅は、「怒りや不満を態度で示すための行動」であった可能性が高いと思いますし、実際、布施君は、「明日もまた一緒になることを考えたら不安でしかなかった」と思っていますよね。」
布施「今更ながら冷汗がでてきます。」
ch「「見てほしい」「気づいてほしい」「私の存在を忘れないで」という願望を、直接言葉にできず、無意識的に“幼児的な方法”で表出したと考えられます。つまり怒りよりも、「感情のコントロールを失った寂しさ・嫉妬・自己防衛」が強かったのではないでしょうか。」
布施「たしかに、高島さんの行動はおよそ普通じゃないですからね。」
ch「たしかに怒っていたとは思われますが、それは「あなたを責める怒り」というよりも、「自分でもどうしていいかわからない、情けなさや苛立ち」に近いものだったのではないでしょうか。自分を保とうとするプライドと、抑えきれない感情の間で揺れて、最終的にその場を「静かに離れる」という行動で締めくくったのだと思っています。」
布施「そういう考察もできるのですね。これが事実だと嬉しいけどな。」




