第18話 髪を切った彼女の想い<2219.08.下旬>(2)
※画像はイメージです。
話し合いの当日が来た。いくら気をもんでも、時間は容赦なく過ぎてしまうもの。できればスキップしたい日が訪れた。いつもなら実家から徒歩1分のバス亭から東京出張に出掛けるのだけど、この日は植木代表の車で話し合い会場まで。そして何も知らないのか、全部知っているのか、植木代表の車で会場へ到着した。
この会場で、高島さんとあの日以来の再会をする。この日の高島さんとどのように再会したのかは覚えていないのだけど、高島さんは驚くほど短く髪を切っていた。もともとそれほど長くもない髪を切って、それでいて髪を切ったと僕でも理解できるほど、かなり短い。
(失恋したということか・・・)
高島さんが髪を切ったということはそういうことなんだろうなと思った。失恋したことを念押しされているようで、余計に高島さんに視線を向けることができなくなってしまった。
会議室に入った。20人ほどの人が集まっていただろうか。ロの字にレイアウトされていたので、残念ながら見通しがいい。この時高島さんがどこに座っていたのかは思い出せないけど、少なくとも高島さんと僕との間に植木代表が座っていたのは間違いない。
会議がはじまったものの、もはや何も頭に入ってこない。県主催の真面目な会議なのでただでさえ重たい空気が更に重く感じられていた。話し合いは淡々と進んでいくものの、次第に中座する時刻が気になり始めてきていた。今の高島さんの表情を見てみたくて仕方ないものの、とてもとても視線を向けられそうにない。視線の端にわずかに存在を確認するのが今の僕にできる精一杯だった。
そうこうしているうちにいよいよ中座する時刻になった。進行中の会議を中座するのは後ろ髪を引かれる思いもあるものの、バスや飛行機は待ってはくれない。植木代表に目で合図して、席を立ち、その場で一礼してドアまで歩き、振り返ってもう一度一礼して会議室を出た。この一連の動きの中で彼女を確認しようとしたものの直視することまではできなかった。ただおぼろげながら視界におさめることはできた。おぼろげながらにも、彼女と視線が合うことはなかった。




