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第13話 湖畔ライブ<2219.05.08>(4)

挿絵(By みてみん)

※画像はイメージです


 湖畔ライブの打ち上げのため、植木代表宅から徒歩5分ほどのカラオケボックスへ。

 集まったのは7~8人くらいだろうか。もう少しいたかもしれない。このうち覚えているのは、僕と高島さん以外では、戸塚氏だけで、あとはまったく思い出せない。

 僕はモニターから最も遠い座席に座った。どうしてそうなったのか、僕の隣には戸塚氏がいる。わざとだと思う。とても偶然そうなるとは思えない。

 いつのまにか戸塚氏は、何かをドラムの代用として叩き始めた。流石に上手だとは思った。

 僕と高島さんと戸塚氏だけは歌わないものの、後の参加者は楽しそうに歌っている。音痴な僕には何が楽しいのかわからないし、こうした時間は苦痛でしかなった。

 しばらくした後、戸塚氏から唐突に「やってみて」とそのドラムのかわりに叩いていた物を渡された。

 心の中で激しい動揺と驚きが一瞬で広がった。叩くこと自体は面白そうだとは思ってはいた。ただ、それを当たり前のように、そして唐突に言われたことが、非常に挑戦的に感じられたことと、何かとてつもなく見下されているように感じられた。

 やるのかやらないのか、選択肢は2つあるにはある。しかしやらない選択肢は男としてない。それに断れば断ったで、苦手な歌を歌わなければならないという恐怖もあった。

 やるしかない。

 戸塚氏から受け取った代用ドラムを叩いた、思い切り叩いた。


「うまいじゃないか」


 戸塚氏から思いもよらない言葉を掛けられた。「やってみて」と言われたときに抱いた感情は思い過ごしだったのだろうか。

 しばらく後、カラオケは終わり店を出た。カラオケ店の前は堤防だった。店を出たみんなで堤防を同じ方向に歩いていく。僕は意図的に最後尾から一人になって、ついていくことにした。でも、店を出てすぐに猫を発見した。よんでみたらすぐに近寄ってきてまとわりつくので、その場でしゃがみこんで、猫と遊び始めた。


(なんて人懐っこい猫なんだ。猫はかわいいなぁ。ましてこんな人懐っこい猫は特にいい)


 そうやって猫とじゃれていると、僕より先を行っていた高島さんが引き返してきた。一気にぎこちない動きになる。傍まで戻って来た高島さんもしゃがみこんで僕と猫の様子をながめている。


「ずるいなぁ、不施さんに撫でてもらって・・・」


 唐突だった。そして自分の耳を疑った。あまりのことでかえってどうしていいのかわからない。これには参った。この言葉をどう捉えればいいのだろうか。頭はフル回転しているものの体は緊張しきっていた。幸せな時間はあっけない。彼女ごしに見えた夕日が忘れられない。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★   


 戸塚氏と高島さんの関係の深さはこの当時の僕は知る由もなかった。

 今にして思うと、打ち上げに何故高島さんと僕が参加しているのか不思議で仕方がない。特別何もしていない僕らが参加することに不自然さしか感じない。あるいは高島さんはここに至るまでに何かしらお手伝いをしていたのかもしれないと考えても不自然ではない。また戸塚氏からすればそうしてもらうことに意義があるだろうから尚更だとは思う。


布施「では、皆さんのご感想をお聞かせください。」


g「ライブに誘う葉書や、最後の「ずるいなぁ、不施さんに撫でてもらって・・・」という破壊力抜群のセリフは、あなたの心を一気に高揚させる、非常にチャーミングな女性像を際立たせていますね。」


布施「”破壊力抜群”とはこういう時使うのですね。しかし、ドキッとしますよね。ただこの時の彼女のこの振る舞いは少なくとも普段彼女が見せているキャラじゃなかったのですよね。」


p「彼女は「戻る理由もないのに戻ってきた」ように見えて、実は意識のどこかで布施君との距離をもう少し縮めたかった。猫をきっかけに、その距離の詰め方を自分でも試してみた・・・そんな心の揺れがあったのではないでしょうか。」


布施「ちょっとタイプではないかもと思っていたりもした時なので、高島さんが引き返してきたときの指心境は複雑でしたね。」


g「写真撮影の依頼は、戸塚氏と高島さんとの親しい関係を誇示する意図や、高島さんとの時間を邪魔したりする意図があったのではないかという推測します。」


布施「僕もそう思っています。ありがとうございました。」



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