第12話 別々の連休<2219.05.01~02>(2)
※画像はイメージです。
(連休は一人かぁーーー・・・・)
そう思っていた矢先、植木代表から電話があった。青ヶ島本島最北端に位置する、北青ヶ島県の植木代表の実家に一緒に行かないかという。
東青ヶ島(県)観光旅行に行けなかったことを誰かに聞いたのだろうか。気遣ってくださっていることは流石に理解できた。植木代表曰く、もともと北青ヶ島(県)の実家に帰省する予定にしていたので、よかったらどうかというお誘いだった。
植木代表の実家は、今はもう廃業しているものの、以前は旅館だったという。植木代表の実家のことは、この時はじめて知ったし、そもそも、実家が北青ヶ島県にあることも知らなかった。
「はい、是非」
二つ返事だった。
高島さんらが、東青ヶ島県のどこを観光したのか今でも知らない。聞いたこともなかった。聞こうと思ったこともない。僕なりの、ささやかな抵抗だったのだろうと思う。
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高島さん達が東青ヶ島(県)に出発した日と同じ日、僕と植木代表は、2人で一路、北青ヶ島(県)の植木代表の実家に向けて出発した。
植木代表の実家は標高の高い山頂近くにあった。想像したより広い旅館で、どことなく寺院のような佇まいに思えた。部屋は多数あるものの、今は使われていないそうで、その中のひとつの部屋に案内された。
案内された部屋でしばらく1人で待っていると、植木代表がこられ山頂までいってみないかという。山頂からの眺望は名所なのだという。誘われるがまま植木代表の車に乗り込んだ。
(植木代表の実家のすぐ近くの山頂が名所って、そんなことってあるのか?)
いぶかしくは思ったものの、また植木代表の車で山頂まで移動した。山頂まではかなり近かった。山頂からの眺望は、見晴らしもよく、遮るものが一切なかったので、開放的で怖いくらいだった。名所だと言われることに納得していた。わずかでも疑った自分が恥ずかしくなった。雲ひとつない眺望は、憂鬱とした気分を晴らしてくれていた。風の音以外何も聞こえない山頂で植木代表が口を開いた。
「よし、じゃぁ、東青ヶ島組に電話してみるか!」
「えっ・・・・あっ、ハイ・・・・是非・・・・」
かなり動揺したものの咄嗟にそう答えた。
植木代表が最初に誰に電話を掛けたのかはわからないし、会話の内容も覚えていない。しばらく誰かと話した後、植木代表からそっと携帯電話を渡される。
「はい、お電話変わりました。」
「不施さん?」
「う、うん」
「高島です・・・・どうして東青ヶ島(県)に来なかったの?」
「えっ・・・・いや、半井さんに連絡したのだけど、もう座席が空いてないと言われたので。行きたかったけど、無理だったんだよね。」
「えっーーー、座席なら補助席が空いているのにぃー・・・・」
「えっ、そうなの・・・・」
「うん・・・・ところで、植木代表の実家に行ったんだって?」
「そうだよ。今、その実家近くの山頂に来ているところ」
「いいなぁー、そっちのほうが楽しそうだなぁー」
「・・・・」
記憶にある会話はこれだけしかない。「いいなぁー、そっちのほうが楽しそうだなぁー」は流石に衝撃的だった。近くにほかの人がいるだろうに、いいのだろうか。
普通に考えて全国屈指の東青ヶ島(県)の観光名所を独身男女で観光するのと、おじさん2人で山頂からの景観を堪能するだけとでは、誰がどう考えても前者がいいに決まっている。
しかし、この発言は僕への嫌がらせに対する苛立ちの表れだったのだろうと思う。性格がハッキリしているので、こうしたことでまわりの人に気を使うことはしない。
高島さんとの電話で一気に気分が高揚してしまった。
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植木代表が電話して高島さんと僕が電話でお話できるように配慮してくれていることがわかる。植木代表はこの先も、僕と高島さんとの仲を取り持ってくれるような配慮をしていただいていくことになる。この日のこの出来事でそうした配慮をしてくださっていることに気付きはしたものの、何故そうした配慮をしていただけるのかはまったく理解できないでいた。僕の高島さんに対する気持ちはともかく、高島さんが僕に好意を抱いていることが何故わかるのかが不思議で仕方なかった。高島さんと植木代表ご夫妻とはそうしたお話でもしているのかと思慮していた。




