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第九話


 漆黒の魔道士…。


 それは武器を作り出す、東方術に対して、火、水、風、土といった『現象』を作り出す西方術にて、『闇』を生み出す者の呼び名である。


 世界唯一、闇を構築する使い手にして、しかし、その実態は犯罪者と『世間では』認知されている。


 様々な悪評を積み重ねてきた、そんな人物の部屋をただの学生と思い、自分の部屋を捜索される。


 そんな奇妙な光景を目の当たりにしていたが、他にも気になる事があった。


 「レフィーユさん、随分と嬉しそうじゃないですか?」


 相変わらず、後ろに立ち座らされたままの体勢ではあるが妙に嬉しそうだったのがわかった。


 「そんなに大の男の部屋を探索するのが面白いですか?」


 「ふっ、お前は特別さ。何しろお前には『昔から』煮え湯を飲まされていただからな。それに何しろ、お前の鼻をようやく明かせたのだ。


 嬉しくないわけがないだろう?」


 まるで勝利を確信したように勝ち誇るが、実際その通りだった。


 そう、漆黒の魔道士である事は、この学園ではレフィーユしか知らない秘密。


 それは自分が『闇』を使わない事だけで隠せる問題ではない。自分の元々ある身体能力を使わない事で成り立つのだ。


 つまり彼女以外、他の生徒が見ている前では、自分はまったくの無力なのだ。


 「ふっ、相変わらず、不便な男だな」


 なおも時と場合によるレフィーユの反則設定が猛威を振るう中。


 「レフィーユさん、それらしき箱を見つけました」


 とうとう見つかってしまい、絶体絶命の時、彼は祈った。


 作者(かみ)よ、どうして私にあのような反則設定はないのでしょうか?


 「そうか、良くやった」


 作者(あなた)は、わかっていたハズです…。


 「ダイヤル式か」


 いつかあの反則設定が私の身に降り掛かる事くらい。


 「番号を吐かせますか?」


 ほら、おかげで私は数年間築き続けた男の回覧板の暗黒(せきにん)を背負わなければならないといけません。


 「いや、この程度なら…」


 どうか、私の事を哀れに思うなら…。


 「切り裂ける!!」


 私に力を…!!


 回覧板の入った小箱の重量を測るように、彼女は軽く放り投げた時。


 「……」


 「ん、なんだ?」


 「ま…」


 「ふっ、待つわけないだろう?」


 なおも彼は…。


 「魔道…ぃ…」


 意味不明な呟きに怪訝しょうになるが揺ぎ無い勝算の中、構わず自分の目線まで小箱を放り投げた。


 はじめの敗因といえた。


 敗因とは、彼からサーベルを離した事か、それとも自分が何も出来ないとタカをくくった彼女の慢心にか、彼の心が今の心境を捉えていた。


 味わうがいい、自由の暴君よ…。


 そして、彼の初めてとなる、時と場合による反則設定に心から声が出た。


 「魔道士キッーク!!」


 攻撃しないという前提により、安心しきった油断か漆黒の魔道士という前提のとび蹴りは、男子生徒がふざけてやるようなスピードのないとび蹴りではなく。


 「うおっ!!」


 本当に人をけり倒す事の出来までに至る洗練されたスピードのある強襲に、レフィーユは体を捻って避けるしかなかった。しかし、身体と一緒に行動できないモノがあった。


 「しまった!!」


 両者が視線が一瞬交差して目が合う、宙に浮いたままの回覧板をレフィーユは取られると思ったのだろうか、自分の捻った身体でもっとも近い左手を伸ばすと触れた途端、重みが増した。


 考える事は同じだった、両者の右手と左手が回覧板を中心に右手と左手が合わさるような体勢で硬直していた。


 「ふっ、無駄な抵抗だと…言ったはずだ」


 その時、更なる敗因が…。


 「コイツを取り押さえろ」


 彼女を襲った。


 「なっ!?」


 見るとレフィーユの指先がゆっくりと持ち上がっていた。


 「レフィーユさん知ってますか、人間、バスケットボールは片手で掴む事が出来ても、握る事は出来ないらしいですよ?


 つまり、貴女がこうやって握るという行為から、掴むという一つ前の行為に戻す事が私は出来るという事を貴女は知っているでしょう?」


 闇が彼女の手の平を押して生じた勝機を文字通り『むしり取り』全貌に群がる治安部、しかし、今日の彼は一味違っていた。


 「待ちなさい」


 「魔道士キッーク」


 「逃がさん」


 まるで新たな技に酔いしれるように…。


 「魔道士キッーク」


 それしかないのを露呈させるかのように…。


 「魔道士キッーク」


 「えっ、どうして魔道士なの?」


 「…キーク」


 治安部、数名を蹴散らし、着地と同時に玄関から逃げていった。


 「追いましょう」


 そう言って周囲は士気が上がる中、レフィーユは冷静に言った。


 「いや、もういい…」


 「レフィーユさん?」


 「もう検討は付いている、ここからは私一人で行かせてもらおう。


 お前達は、他の連中の手伝いをしておいてくれ」


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