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第八話


 「姉さん、これでいいの?」


 「ああ…、ふっ、セルフィ、不機嫌そうだな?」


 「ふん、いくら姉さんでも前の学園の治安部を動かすのは横暴がすぎないかしら?」


 「ふっ、随分とご立腹だな」


 「ただが二人を捕まえるのに、私たちまで動かす必要なんてなかったんじゃないの?」


 「『ただが』か、セルフィ、あの男に常識は通じないというのはお前自身が味わったと思うのだが?


 大体、今だってお前に連絡を入れなければ、危うく隣町に逃げられるトコロだったのだからな」


 『ふん』と言ったまま、セルフィはイワトから取り上げた、バッグの中身を見た。


 すると毛布に包まれた『はずれ』と書かれた張り紙と出てきたので、不機嫌そうに聞いた。


 「で、私たちはこの町の銀行を警備しておけばいいの?」


 「…いや、お前たちはそのままイワトを連れて帰って来てくれ」


 「どうしてよ、あの人の狙いは銀行に向かう事なんだから、まだ、別の方法でこの町にやって来る可能性だってあるでしょう?」


 「構わん、あの男だけは狙いは別だ。銀行に行く事ではない」


 「姉さん、狙いがわかったの?」


 「まあな、だからこそ、お前たちを使ったワケだが…」


 少し間が開いたので、どうしたのかと思い聞こうとするその前に声がした。


 「どうも、セルフィさん、ご苦労様です」


 「貴方!?」


 セルフィの驚くように、通信に出たのはアラバ本人だった。


 今、彼はレフィーユにサーベルを突きつけられ、自分の部屋にて座らされていた。


 「レフィーユさん、よくここにいるとわかりましたね?」


 「ふっ、私とてお前が自分の部屋に戻っているとは思ってもみなかったさ。


 だが『回覧板が何か?』と言う事には気付いたのでな。


 お前は、この学園のどこかにはいると思っていた」


 白々しく、まるでどこぞかのドラマのワンシーンを思わせるそぶり、そんな中で自分は言うなれば犯人役のようにとぼけてみた。


 「『何か』なんて、随分と大げさですね。


 回覧板なんて、レフィーユさんの想像通りのモノですよ?」


 「だからだ、アラバ…。


 だから、お前達は、そこで矛盾を生んでいる」


 「矛盾…ですか?」


 「噂によるとその回覧板は、何代も続く如何わしい本やROMを保管している象形を指すそうだ。


 だが、サイトはカバンだった。


 キリウ、シリウの双子は、小包…。


 レオナに至っては封筒だ。


 おそらくイワトも何かの入れ物に入れて、逃げ回っていたそうだが…。


 考えても見ろ、何代にも渡る大量の本やROMを運ぶにしては身軽すぎやしないか?


 だからレオナを捕まえたトコロで、セルフィに途中を任せて、ある場所に電話を入れてみる事にしたのさ」


 「あるトコロ?」


 「銀行だ。そこで私はこう聞いてみた。


 そちらに白鳳学園の名義で何か預かっていないか?


 …とな」


 「それで何かわかりましたか?」


 冷静に聞きながら、一生懸命に逃げる動作をとれるようにスキを伺うが、しかし、さすがレフィーユ・アルマフィという女である。


 その心理を読み取ったかのように、サーベルを肩に当てて『座れ』と押し付けて言った。


 「様々な白鳳学園という名義があったが『白鳳学園男子』という名義が一件、目立つようにあったさ。


 当然、私達、学園内の事とはいえ、治安部に金庫の中身を探る権利はない。


 だが、しかし…確信に変わった事がある。


 回覧板とは何か…という事だ。


 回覧板とは、その金庫を開ける事が出来る権利、すなわち白鳳学園男子という『団体』である証明書と、その暗証番号だ。


 そして、お前のホントの狙いは、五人を囮にして、その回覧板を私達に気付かれずに隠す。


 それがお前の本当の作戦だ」


 思わず回覧板に目をやってしまうが、幸い彼女には気付かれはしなかった、しかし、ここにある事は間違いないことである。


 おそらく、彼女はそれを見つけてしまうだろう。


 そうなれば残る手段は一つである。


 「レフィーユさん、私がそう言われてすんなりと渡すと思いますか?」


 その一瞬の隙を見逃すまいと、神経を尖らせる。


 しかし…。


 「ああ、思ってないさ。


 今だって、お前は隙を伺っている感じがするからな。だから、今回はお前の弱点を突かせてもらおう」


 『入れ』と言うので、後ろを振り向こうとする。


 そこには…。


 「お前は人がいると、実力を出せない男だ」


 レフィーユの他にぞろぞろと治安部員が入ってきた。


 そう、漆黒の魔道士である彼の事を知っているのは、レフィーユだけなのだ。

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