第七十一話
それは学園内でも、騒然となっていた。
皇太子が普通に授業を受けていたのだ、無理もないだろう。
鍋に誘った、五人は凍りついていたが、さらに皇太子をさんざんと痛めつけた自分に至ってはどう表現すればいいのだろう。
「皇太子…、という事は王子さまという事ですよね?」
「どこから声が出しているのだ?」
顔全体が水量になっていた。
「そもそも、お前が誘拐された時、アルマがいろいろ教えてくれたと言っていたから、知っているとは思ったのだがな?」
「これは教えてくれませんでしたよ。
という事は王家復興が、アルマさんの狙いだったのでしょうかね?」
「『だった』とは、妙な言い方だな?」
「それはそうですよ。
結局、後手に回ったのは仕方がありませんでしたが、私も貴女も手が出せない状況ですよ。
日記帳が無くなって、エドワードさんが王家の人だアルマさんの考えもわかりますが、これにあやかって、王家を守るカリフになれるワケですよ。
そんな絶好のタイミングで、この後、彼女は発表もしない訳じゃないですか、レフィーユさんはどう思って見ていたのかと思いましてね」
「なるほど確かにお前の言っていた、墓荒らしという不名誉な名前を抱えたアルマにとっては、このチャンスは最大の機会だ。
どんな考えがあったか、私にもわからないさ。
そして、王家すら復興しないとなると、さらに疑問が残るさ。
そこでだアラバ君」
「なんでしょうか、隊長殿?」
「さっきから聞き耳を立てている、あの後ろ姿はなんだね?」
「あれは前、迷った時に道を教えてくれた土産屋の店員ですね」
しばらくの間、二人は土産屋の前で備え付けてあるテレビを眺めて話をしていたせいか、その店員は気にはなっていたのだろう。
「いい加減に教えてほしいですよ。アルマさん」
その店員は、ゆっくり振り向いて答えた。
「…どこで気付いたんだい?」
「あの時、別行動している私を探し当てたにしては随分と早い登場だと思ったのもありますが、人間と言うのは自分の一人称を言う時に『ボク』って言ったでしょ。
『もしかして』と思いもしたのですが…」
「なるほど確かにココなら、今回の動きを眺めるには、これ以上、最適な場所はないな」
「レフィーユ、ワザとらしいよ?」
『ふっ』といつものように笑い、レフィーユは立ち位置を変えて逃げ道を塞ぐとアルマは呆れながら答えた。
「キミ達に囲まれて、逃げれると思ってるの?」
「どうだかな、今までが今までだからな?」
「まあいいや、こうなったのはボクが原因だからね。
じゃあ、ちょっと待ってて、良い物を見せてあげるよ」
すると携帯電話を取り出して、アルマは誰かを呼びつけた。
状況を察するに同じカリフのメンバーだとわかったが、少し違うのはその男が小さなアタッシュケースを持ってやって来ていた。
『ご苦労さま、下がっていいよ』とアルマは事情を説明すると、男は自分達を一瞥してホントにその場を去った。
「レフィーユ、これが何だかわかるかな?」
丁寧にアタッシュケースを開けて、カウンターの上に開けて見せるとレフィーユは驚いた。
「どういう事だ?」
「さすがレフィーユ、これは本物だよ。
赤色のアルマフィ家、オレンジ色のチェンバレン。
緑に青はエドワードにアイーシャ、そして、藍色のシャンテ、紫色のミン、黒はトラン・オズワルド。
そして、黄色いスカーフ…」
「何故、八色目がある?」
するとアルマはテレビを電源を切って、自分達を手招いて椅子を用意して言った。
「これはボクのお母さん、おばあちゃんが語り継いだ昔話だよ。
かつて魔力による核テロの危険性を訴える国があった。
それは当然、誰も耳を貸さない訴えだった。
『私の国は安全だ。そんな不徳を誰が起こすか』
そんな意見が一方的に飛び交う中、世界各国の名家、有力者がとある国のその意見に賛同したんだ」
「それが七色同盟…ですか?」
「いや、その時の名前はなかったんだ、極秘でみんなで『虹色同盟』と名づけたそうだよ」
「ふっ、どっちでもいいだろう、そして、彼等の行いは廃核、廃戦記念日と称される行いをするのだな?」
「そう、そして、その後に起こった事件が、今回の事件に発展した」