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第七話

 「まさか、こんな事になるとはのう」


 「イワトさん、それは言わない約束ですよ」


 「じゃが、アラバ、いくらレフィーユさんが目的地を知った可能性があるとは言っても…」


 イワトは窓から景色を眺めていった。 


 「目の前に銀行があったんじゃ、電車で移動する事はないじゃろう?」


 「一応の用心ですよ。


 正直、悪く言うつもりはありませんが、イワトさん、足が遅いですからね。


 それを預けようとして手続きをしている途中で、治安部がやって来たらアウトだったと思いますよ。


 大切なのはイワトさんの持っているモノを銀行に預ける事にあるワケであって、イワトさんは口座を開いてはいますが、物品を預ける『金庫』は持ってないでしょう?」


 全員が魔法と言う、武器を手に出来るこの時代、銀行は『金庫』という物品を預ける事が出来るようになっていた。


 昔から、この『金庫』と呼ばれる銀行の機能はあったらしく、その歴史は企業、団体、果てまではお金持ちが貴金属を預けるという、手段ではあったが、それが一般市民で適用されるようになった。


 だが、この金庫という機能には、それを探る事は治安部は権限を持っていない。


 警察にしても、よほどの事…死亡、殺人など、重大な犯行が行なわれない限り、探る事が出来ないのである。


 そもそも、この計画はサイトのラジコン趣味が講じて、金庫を持っていた事で考え付いた計画でもあったのだ。


 だが想定以上のレフィーユの活躍で、自分たちは手続きというタイムラグを踏まえた上で銀行に向かわなければならなくなり。


 イワトと二人になった、今となっては、隣町まで電車で移動しなければならない羽目になっていた。


 しかし『ガタンガタン』と揺られながら、少しの休息を得られる事はかけがえの幸せを味わってはいた。


 「今なら、逃亡犯の気持ちがわかりそうな気がするわい」


 「物騒な事を呟かないでくださいよ」


 「じゃが、落ち着くわけないじゃろ。


 今、前に座っているおばちゃんだって、スパイじゃないかと、なんか身体が緊張しとるんじゃぞ?


 のう、警戒の為に『斧』作っときたいのじゃが?」


 「別件で補導されますよ?」


 「がはは、じゃがこういう時というのは、落ち着かんからのう。


 本気でそう考えていた方がよさそうじゃわい」


 「だから、本気でやめてくださいよ?」


 「…いや、ワシはここまでじゃ」


 「イワトさん?」


 「今、白薔薇の戦乙女(ヴァルキリー)の一人がこっちをずっと見とっての…。


 今、ワシの周りが囲まれとるわ…。


 どうやらあの人、仕業のようじゃの…」


 白薔薇の戦乙女(ヴァルキリー)…。


 正式にはリスティア学園というが、白い学生服から『白薔薇』と呼ばれて、それを引き立てる紺色の制服を着た治安部精鋭部隊、ヴァルキリーの活躍で、白鳳学園より広い活動管轄区域を持つに至った。


 その東方術で統一された戦闘能力は、良い体格をしたイワトが無抵抗のまま降伏がわりに両手を上げるほどであった。


 そして、通信機越しにセルフィの声が聞こえた。


 「大人しく、それを渡しなさい。


 あと…もしもし、聞こえるかしら?」


 通信機からはっきりとセルフィの声が聞こえたので、一瞬戸惑いはしたが出ることにした。


 「…はい、なんでしょう?」


 「ふん、何をしでかした知らないけど、ああなった姉さん相手に抵抗は無駄な事くらい、知っているでしょう?」


 「セルフィさん、まさか設定を超えるなんて思いもよりませんでしたよ。


 妹の貴女でも何とか出来ませんかね?」


 「無理ね、まあ、アンタだって諦める気なんて毛頭ないと思うから、私は勝手に姉さんの言伝を言わせてもらうわよ」


 「言伝?」


 「ふん、最終警告よ。


 アンタの出方次第では、今回の件は見逃してやるそうよ?」


 「それは、ありがたいですね。ロクな事、要求されないでしょうけどね?」


 「どうかしら、まあ要求としては、


 貴女の持っている『回覧板』見せてほしいそうよ?」


 「それって、状況が変わらないじゃないですか?」


 「ふん、違うわ。


 『貴方個人が持っている回覧板』よ」


 「セルフィさん、それは出来ませんね」


 「あら、貴方が辱めを受けるだけで、周りに迷惑が掛からないのよ?」


 「セルフィさん…」


 「何よ?」


 「今まで、どれくらいの人が犠牲になったと思っているのですか?」


 「死んでないわよ?」


 「私の仲間内でも、自分の能力を発揮しないで死んだ者、そして、戦い抜いて死んだ人、今、貴方が殺したイワトさん。


 そんな犠牲者達におかげで私は今、立っているのですよ?」


 「殺してないし…」


 「ですが、その手の本は捨てたので、その交渉は飲めないのですよ」


 「あら、男の人って、こういう本を捨てれないと聞くけど?」


 「まあ、理由はあるのですがね」


 「理由?」


 その理由を言おうとした時、何故か息使いが増えたような気がしたので思わず黙ってしまった。


 「どうしたのよ?」


 「セルフィさん、貴女の周りに誰かいますか?」


 「ヒオトさんと、ミュリさんがいるけど?」


 「ああ、そうですか…」


 「どうしたのよ、まさか二人に言えない理由とか?」


 「まあ、そういうトコにしておいてください」


 「ふん、大した理由なんでしょうね。


 まあいいわ、交渉決裂という事で姉さんに連絡しておくわよ」


 そういって、通信は切れたのであった。

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