第六十九話
「一体、あの覆面達は何者だったのだ?」
そう言って、レフィーユは対面に座って飲み物に口つけて聞いてきた。
「あの女と戦う前に、覆面たちが立ちふさがって来たのでな、それで戦う羽目になったので感じたのだが、少なくともあれらには信念があった。
お前には、結局、このままでは最後までわからないままになってしまいそうだから聞いてみたのだが、ホントは知っていたのではないのか?」
「いえ、心当たりくらいですよ。
確かに思いがなければ組織は成り立ちませんし、ましてや、自爆をするほど信じれるモノがあるのですからね。
まるで裏で七色同盟を支え、陰で栄光を見守っていた組織…」
すると彼女も同じ答えに至ったのだろう。
「カリフか…?」
すると怪訝そうになりながらも、顔をしかめつつ聞いてきた。
「しかし、シャンテは否定していたが?」
『カリフと一緒にするな』とでも言われたか、ドレス姿の麗人が長いまつ毛を伏せながら、考え込むので、自分は想像の範囲ではあるが答えを出す事にした。
「カリフという名前には、二つの意味があったでしょう?」
「墓守りに墓荒らしだったな」
「そんな二つの意味を持った名前なんて、危うくて使う気にはならないと思ったのですが…」
「ふっ、どうした、最後まで言ったらどうだ?」
「あまり想像でモノを言うモノではないのですが、レフィーユさん。どっちだと思いますか?」
「どっちが『墓守り』で、どっちが『墓荒らし』だという事か、アルマの言うとおりなら、アルマが『墓守り』という事になるが?」
「そこでレフィーユさんにお願いがあるですが、アルマさんに聞いてみてくれませんか?」
「無理だ、どうせはぐらかされるだろう?」
「今じゃないと、今だから試してみたい事があると言ってもですか?」
「どういう事だ?」
「シャンテさん、今、チェンバレンと一緒にいるのですよね?
今、アルマさんがどこにいるのかで、答えがわかる気がするのですよ」
そうしてレフィーユは、まず、セルフィに連絡を入れた。
するとアルマはエドワードのすぐ近くにいたので、すぐに代わってくれた。
相変わらずレフィーユの質問には…。
「それは自分で考える事だよ」
と、相変わらずのらりくらりだったが、その事がレフィーユにも違和感を感じたのだろう。
「ここで自分が味方なのなら、『墓守り』だとはっきり言えると思ったのだが?」
そう言って、しばらくして、レフィーユはまた考え込むような態度をみせて咳払いをした。そうする事によって、自分が聞きたい事を今から見せるという無言の意思表示ではあった。
「……?」
そして、レフィーユの細く長い目が自分を捉えたまま、その口が自分の聞いて欲しい事に動いた。
「ふーん、さすがにレフィーユ、そこに辿りついたようだね?
なら、ボクはここであえて、言わせてもらうよ。
それはキミは考える事だ」
おそらく、アルマの周囲にはセルフィだけではなく、他の治安部員もいただろう。
そんな中で、その答えを出すので、レフィーユはある程度の雑談をして通信を切って聞く。
「これで答えは出たか?」
「想像程度ですが…」
今の状況は、あまりにもシャンテを殺害するには絶好の機会だった。
そんな中をも利用せず、ただホントの静観を行っている。
この状況だけなら、誰でも彼女は味方だと思うだろう。
「レフィーユさん、よく聞いてください…」
『弱ったシャンテを始末する絶好の機会だと思ったのだが…?』
その時の自分には、この質問をぶつけて、どうして『自分が考えなければならないのか』ようやくわかった気がして、レフィーユに話はしたが意外とレフィーユは落ち着いていた。
「冷静ですね?」
「ふっ、まだ想像の範囲だからな。
もうこうなってしまえば、後手に回るしかないだろう?」
彼女らしいごもっともな返答に頷きながら、次に心配にもなっていたのだろう。
「あとはチェンバレン、次第だな」
「大丈夫ですかね?」
「私では、彼女の自爆は止められなかっただろうからな。
私が、出来るのはここまでさ。
見届けようと思うさ、どんな結末であろうとな…」
そう言って、部屋の雰囲気を眺めるように首を左右に振ったレフィーユは微笑みながら言った。
「まあ、お前は自分の心配するのだな?」
「えっ、どうしてですか?」
何やら意味深げにレフィーユは、笑うだけだったがその意味がわかったのは、一週間後の事である。