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第六十八話

 あれからどれくらい時間が経ったのだろう。


 時間の感覚がなくなるほど静まり返っていたタンカーに、ヘリがやって来て、少し騒がしくなったのでそんな事を考えていた。


 だが、それも少しの間である。


 また飛び去って行く音を聞いていると、警戒独特の半ば駆け足ぎみの足音が聞こえた。


 身を潜めて、動向を見ているとそれは戦乙女ヴァルキリーだった。


 「クリア!!」


 もう敵もいないと思われているが、怪しいものを見つけ出さんと捜索行為クリアリングの凛々しくもはっきりとした声が響いていた。


 おおよそこの動き出したタンカーにもう覆面集団はいないのなら、後は魔道士を探し出した方がいいと考えるのは、時間が経って落ち着いてくると誰かが考え付くのは無理も無い。


 「レフィーユさん、異常はありません」


 「そうか、悪いが、今から私は一旦離れる、お前達で探索の続きをしてもらえないか?


 この服では、どうも動き辛くてな。


 ここは私の部屋のようだから、着替えくらい用意してあるだろう」


 「しかし隊長、怪我をしてます。お一人になっては危険です。


 護衛に一人残します」


 「隊長ではない。


 それに三人一組、そのヴァルキリーの基本を崩すな。


 お前達のクリアは私が保証している。


 お前達が完璧にクリアを敢行すれば、私は大丈夫だ」


 そう言って、3人にクリアリングを再開させるように促すと、レフィーユは咳払いをした。


 「もういいぞ?」


 しかし辺りは未だに、静まり返っていた…。


 「おーい?」


 逃げ込むとすればここしかないと、今までの経験が教えてくれていたのだが…。


 「どうしました?」


 それは普通に先ほどの入り口からやって来た。


 「……」


 少し両者が見つめる中、やはりレフィーユが先に言った。


 「先ほど私が『完璧』と証したクリアを避わしてやって来たお前を褒めるべきか、それとも私が居なくなったから、そのクリアが杜撰になった部下を責めるべきか、お前はどっちがいいと思う?」


 「私がいたのは一個先の部屋でしたからね。


 貴女の話し声が聞こえたので、話をしている最中に一個前の部屋に隠れ直しただけですよ」


 「そうか、なら、さっさと入ったらどうだ?」


 「着替えるのでしたら、少し待った方が良いかなと思いましてね」


 「ふっ、あれは口実だ。


 こうでも言わないと、あいつ等が離れてくれるとは思わなかったのでな」


 そう言って、さっさと部屋の中に入るとレフィーユが少し高そうな机の上に招き。


 そこに座りながら法衣のフード部分を取って、レフィーユはそこにあった冷蔵庫を開けて飲み物を用意して来て向かいに座り、じっと見つめて言った。


 「エドワード、意識が戻ったそうだぞ?」


 要点だけを言うので、彼女にも伝わっていたのだろうと思いながら飲み物を口にしていると、レフィーユは言った。


 「すまない、手間を掛けさせた」


 おかまいなく、首を振るがさすがにエドワードが気にはなったので少し黙る。


 「だが、そこまでする必要は無かったのではないのか?」


 「それは私にはわかりませんよ。


 あの時、エドワードさんは確かにアイーシャさんを探してました。


 ですが、例え見つけたとしても、アイーシャさんは動く事はなかったと思いましたからね。


 セルフィさんは、うまく事態を切り抜けてくれるでしょう。


 貴女はシャンテさんを倒すでしょうが…」


 「ふっ、随分と過大評価だな」


 「こういう時の貴女は不思議とああいった場面で、しくじるような女性(あなた)ではありませんでしたからね。


 ですがエドワードさんは…。


 だから、せめてアイーシャさんが別れると知っても、戦うって事を選べる人だった事くらい教えてあげたかったですが…」


 やはり、やりすぎたかと思いもした。


 ただそこにいた当人同士しかわからないが、あの時、確かに手加減してはならない空気が確かにあったのだ。


 しかし、これ以上、言うと言い訳になってしまいそうだったので、飲み物を口にするとため息をつきながら肩をすくめながらレフィーユは言った。


 「それは初めて聞いたな、やはりそうなるか?」


 「そこまではわかりませんよ」


 一撃、一撃、彼の攻撃は確かに躊躇もありもした、未熟でもありもしたが、どれも本気で自分を殺しに掛かった剣であったのは間違いは無い。


 その一撃にどんな気持ちがこめられているのか、エドワードしかわからないのだ。


 「その選択はエドワードさんがするべきですよ」


 そう言うしかなかった。


 「そんなエドワードから、伝言だ」


 「なんでしょうか?」


 「『やっぱり強かった』だそうだ」


 そう微笑みながらレフィーユは、手袋を机の上に畳んで置いていた。おそらく、彼女の方はその通りに勝負を決したのだろう。


 しかし、腕の辺りから血が出ていたのに気付いた。


 「大丈夫ですか?」


 「ああ、シャンテの『幻覚』を倒すまで、間合いを計っていた代償だ」


 「幻覚?」


 「お前も戦った事があるからわかるだろう、シャンテの目の事だ」


 「ああ、あの感情の無い?」


 「そうだ、あの女が付加能力を発動させる際に、目に感情が入らなくなるのさ。


 おそらく嘘の攻撃するイメージを思い浮かばせながら、同時に、本当の攻撃を繰り出すからなのだろうな。


 こういった場合、どう対処するか限られてくるだろう?」


 『体当たりして、怯んだところを切り伏せてやった』と言った彼女に…。


 「…どうした?」


 自然と笑みがもれるのは、言わないで置こうと思った。


 「それで、今、どうしているのですか?」


 「チェンバレンが介抱しているよ。


 あの男も色々と言いたい事もあるだろうしな」


 聞くところによると、チェンバレンがオズワルドの相手をしていたそうだ。結果はチェンバレンの圧勝、オズワルドはさっさと救助されていたらしい。


 「あの西方術者嫌いのオズワルドの性根だ、しばらくは立ち上がれんだろうよ」


 「嬉しそうですね?」


 「まあな、これでアイツも『永久に』私に言い寄って来ないのなら、気分も良くなるモノだ」


 強調するのだから、よほど気分が悪かったのだろう。


 「ふっ、さて、どうしたモノか…」


 「チェンバレンさんの事ですか?」


 「いや、それも気になるが…一つ、聞いても構わないか?」


 

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