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第六十三話

 「凄い事になりましたね?


 私が日記帳を盗んだという騒ぎが、実はそれが殺人事件で、そんな中で彼の誘拐…」


 「彼…?」


 「ああ、知りませんか、アラバと言ってましたが…、おや、ご存知でしたか。


 まあ、その時、私も影にいたので色々と教えてもらっていたのですよ」


 「私達の事とか、今回の事とかでしょうか?」


 「そうです、まあ、あの後、彼と同じように誤魔化されましたが、どうしてそんな手間のかかるような真似をするのだろうかなと思ってましてね」


 「そんな事を言っても、ホントに状況を教えただけというのもあると思いますよ?」


 「まあ、それもそうなんですが、エドワードさん、影の組織と言うのは影で動くから影の組織なんですよ。


 あの時だけではないですがね、一般人はともかく『漆黒の魔道士』を巻き込むのは、あまりにも不自然ではありませんか?」


 「そういわれて見れば、今、日記帳はアルマさんの下にあるのですから…、下手すれば貴方も仲間と思われてしま…い…ますよ…ね」


 一瞬怒らせたかなと思ったが、また呆れるように魔道士は話を続けた。


 「どうして世間で『墓荒らし』と証された集団が、そんな危険を冒してまで私に接触を図ったのか、おそらく、それを聞こうとすればアルマはこう答えるでしょう。


 『それはキミが考える事だよ』


 と…。


 これも影の組織として、気味の悪い対応の仕方なのですが、日記にも同じような事が書かれていた事なんですよ。


 『この世に聖人君主はいない。


 正しいかどうかを判断が出来るのは第三者だ』


 …似ませんか?」


 どうやらこの魔道士は、自分が思っている以上に思慮深いようだった。


 それは頷いている自分が、本当にこの人は悪い人間なのか少し疑問に思ったほどだった、そんな中、静かに答えた。 


 「そもそも覆面集団や、カリフ、七色同盟、ミンさんの殺害と、この事件は複雑そうに見えますが、これは七色同盟の内輪もめみたいなモノです。


 何故、第三者、カリフはどうして私に判断を委ねたのか…」


 再度、考え込んで、その魔道士は『あるドア』を見つめていたので、


 「複雑な事情が、あった…」


 妙にコレだけは、はっきりと言えた。


 多分、魔道士も『気付いて』いるのだろう。


 自分を方を見つめて、まるで気を使うように答えた。


 「…あの日記帳はどうやって盗まれたのか、わからないままでした。


 金庫もダイヤル式、監視カメラが働いていたとはいえ、その日記は盗まれました」


 そこで自分の頭の仲で『影の組織』という台詞が、とある人物の行動を思い浮ばせた…。


 初めて会ったと言うのに『自分達の事』や『自分達がどんな魔法が使えて、どんな付加能力があるのか』を、あの時、影の組織が人懐こく色々と答えた、アルマの行動。


 「…あの金庫、番号さえ合えば女性でも開く事が出来るそうです。


 そこで…」


 彼は調べたのだろう。


 レフィーユの『残像』、チェンバレンの西方術『風』、自分の『武器の伸縮』、ミンの西方術『土』、オズワルドの『武器の湾曲』、


 そして、シャンテの『幻覚』と、まるでアルマの言った順序を真似ているかのように聞こえてきたが、最後は狙っていたのだろうか、


 「アイーシャさんの東方術『小太刀』、その付加能力は『物質の分析』だそうですね。


 その能力って、どういう事なのでしょうかね?」


 言わせようとしているのだろうか、何故かこの時、彼が気を使っていたのだけがわかった。


 だから『気付いていた事』を話そうと思った。


 「…タイミングはおそらく、結婚式の時だと思います。


 披露宴の際、途中で立ち上がって…、どこかに行ってましてね」


 「おかしいと思わなかったのですか?」


 「思いました。


 でも、何かあったら警備が気付くと思ってましたから、それに私は正直、嬉しくて…」 


 「ですが、彼女は貴方の事を…」


 「わかってます。


 ですけど、どうすればよかったと思いますか?


 まず親に相談しました、でも、それを世間に大々的に公表され。


 『私の息子は、立派な夫になろうと日々努力をしている』


 なんてアイーシャさんの心境すら知らないで、偉そうな親が嫌いになりました。


 そこで色んな人に相談しようとすれば、そんな人ばかりが私の周りを…囲んでました」


 「なるほど、そこで頼れたのはレフィーユさんだけだったという事ですか」


 恥ずかしい話だった…。


 自分の周りには友達がいないという告白と、さらに国外に居る人物にこんな話を持ちかける。


 これ以上のない恥ずかしい話、だが、魔道士はじっと自分を見ていることに気付いた。


 「な、何か?」


 「ああ、いえ、なかなかうまくいかないモノだと思いましてね。


 頑張って、認めてもらおうとして、足掻いて、でも、何が足らないのか…。


 いつの世も人は苦悩なんてものには気付きもしないのでね」


 「貴方にも、そんな事があったような言い方ですね?」


 ふと、そう感じたので聞いてみたが、魔道士が正面、自分に向かい合って立っていることに気が付いた。


 「エドワードさん、では、貴方は何しにやって来たのですか?」


 確かに言うとおりだった。


 自分がやって来ても、彼女は動かす事は出来もしない。


 「わかりません…」


 「…おそらく、あの日記帳はアイーシャは捨てたトコロを見ていたカリフが回収して、私の手に渡ったのでしょう。


 でも、あの日記帳を手にしたせいで『漆黒の魔道士(わたし)が日記帳を盗んだ』になりました。


 私は自分を利用した人間を許しません…」


 その時、何故か『許さない』と言ったわりには憎悪を感じ取れなかったが、


 「エドワードさん、貴方は何をしなければいけませんか?」


 「……」


 それに何も言えないでいた。


 「私は貴方の手に握られたモノは何か、知っているつもりですよ?」


 しかし、私が弱いからだろうか、そう言って促したのだろうか、彼の顔はわからなかない。


 でも、背中を押されたような気がした。


 自分はここで戦わないといけないのだ。


 「行きます!!」



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