第六十一話
セルフィらしき掛け声と同時にレフィーユは、サーベルをシャンテに振り下ろす。
「ちぃ!!」
シャンテ側の攻勢に出るタイミングが完全にズラされたとは言え、シャンテは持ち前の身体能力でその一撃を避け、身構え直しながら周囲、自分の作り出した東方術『日本刀』を眺め、悪態をついた。
その武器を作り出すのを、二人は待っていたのだろう。
レフィーユも、アルマにも指摘されたので、オズワルド配下の警備員の全員が治安部と一緒にマスコミの避難に協力していた。
こうなると誰かを人質に取ろうと、シャンテはエドワード達を見たがもう遅い。
「させるか!!」
凛々しく、しかし、獰猛に飛び掛るレフィーユに阻まれ、アルマが完全に進路を塞ぐので苛立つように一撃を加えるが軽がると受け止められ、とうとうその場を下がるしかなかった。
何故なら、シャンテの周囲に広がる光景は排除しようとその場に潜ませた、部下に呼びかけもしたのだが事前に取り押さえられる始末。
まだ、この会見場は取り囲みはしていたが、カリフ率いる、セルフィを含めなだれ込んだ治安部数名、シャンテは完全に後手に回っていたのだ。
レフィーユと目が合い、再度、飛び掛るシャンテ…。
レフィーユもそれに応じようとした。
その時、彼女の目が感情を失っている事に気付いたので、彼女は慌てて思い切り後ろに跳び下がる。
彼女の付加能力を味わいながらも、距離を取ってしまったのでシャンテはすぐさま近くの出入り口に駆け出していた。
「そこを動くな!!」
その付近に偶然にも配備されたイワトが戦斧を手に果敢にシャンテに挑むが…。
「駄目だ、下がれ!!」
レフィーユの叫びと同時に目が感情を失い、再度、彼女の付加能力が作動した。
「ぐあっ!!」
横に受けようとしたイワトの肩を切られ、片ひざを付いた。
幸い構わずシャンテは逃げたので駆け寄って、他の治安部員が戦っている集団の輪を見つけてそこにレフィーユはイワトを引きずり込んだ。
「大丈夫か!?」
『だ、大丈夫、油断したわい』と明るく言うが、肩から出血が制服を濡していた。
「どいてて…。
出血はしてるけど、どうもあの『付加能力』は、それなりに問題があるようだね、軽く切られてる程度ですんでるよ」
アルマはそう言って、手際よく止血を完了させて、レフィーユはアルマに聞いてみた。
「カリフは全滅したのじゃなかったのか?」
「あの事件から、呼び寄せようとして、今日やって来たばかりだよ。怪しまれず、入国出来たのは四人だけど腕が立つのを選んだつもり。
それよりレフィーユ、日記帳は?」
「すまない、シャンテが持って行った。オズワルドは、それを追っていった」
「じゃあ、追うんだ」
「しかし…」
「言ったはずだよ、ボクの部下の四人は今日日付けでやって来たんだ。
所詮、四人というのもあるけど、誰が身内なのか頭に入ってないんだよ。
突入の際、事前に従業員は逃がせるような手はずは整っている事だし、エドワード達もここを出たんだ、ここでボク達が彼女を探すより。
キミが追う方が手間が掛からない。
今はここを防衛をする、ひと段落着いたら追うよ」
それを聞いたレフィーユはイワトから通信機を受け取り言った。
「各員、タンカーに残ったマスコミの脱出を最優先にしてくれ、なお、今回、警備員とカリフと共同でその任務に移れ、カリフは味方だ!!」
そう言って、そのまま通信機を自分に取り付け、レフィーユはセルフィに視線を送るとセルフィは交代するかのように空中から舞い降り、その背後を駆け出した。
「さて、囲まれてはいるけど…。
腕前を見せてもらおうかな、セルフィ君」
「見くびってもらってほしくないわ、こんな包囲網どうって事はないわよ」
「まあ、そうだろうね…」
包囲されたという環境の中、治安部員や、カリフ、警備員が緊張している中、アルマは頭領らしく笑っているので、ハルバートをくるくると回す。
そして、柄の辺りで床をトントンと叩く、
「なるほど、こうやって微調整してるんだね?」
「ふん、感心してないで相手の『首の辺りにある』から、とっとと行きなさい」
普通の会話だが、セルフィの言葉には見えない足場を教える能力があるので、アルマはそれに飛び乗って感心しているとセルフィは聞いてきた。
「ねえ、聞きたいのだけど?」
「なんだい?」
「あの魔道士も言っていたけど、これって、凄い事なの?」
すると感心していたアルマは呆れたように、
「キミがそう言うと、嫌味に聞こえるよ」
そう言ってカタールを構えて飛び掛って行くので。
それを見送るように、身構えるとセルフィの通信機に通信が入った。
イワトはレフィーユに通信機を取られたのを、思い出し頭を抱え始めたセルフィに聞いた。
「エドワードはそれを追ってるそうだけど、アイーシャがはぐれたそうよ」