第五十九話
接続不良で、書き直される拷問…
セーブはこまめにね
レフィーユの視線は的確にアルマを捉えていたらしく周囲のマスコミはまるで大きな穴が開いたように遠巻いた。
それを見た彼女は笑みを浮かべ、もう一度。
「アルマ、私は間違っているだろうか?」
「何をしている、確保、確保だ!!」
オズワルドが焦りながら、嬉々として先ほどの事を誤魔化すようにアルマを指を指すので、レフィーユが素早くサーベルを作り上げて投げつけた。
「かっ!?」
それはオズワルドの頬をかすめ、後ろの椅子に当たってゆっくり倒れるので、オズワルドは『確保』の『か』を言ったトコロで姿勢を硬直させ、周囲もまた静かになった。
そんな中、アルマが拍手をしていた。
「レフィーユ、何度も言うようだけど残念ながらボクは質問に答える事なんて出来ないんだよ。
とりあえず、拍手は贈っておくよ」
そう言ってアルマは懐に手を突っ込むので、周囲のマスコミはフラッシュを焚いていた。
だが、興味はあるものの遠ざかっていく、そんな感じだろう、そんな中でアルマは何かを取り出した。
「ようやく、これを読むまでには至れたようだ」
日記帳を手にしていたので隣にいるセルフィは驚いて自分を見たが、すぐに視線を下ろすとアルマはレフィーユの壇上の前に立っていた。
そして、レフィーユに差し出すと思いきや。
「さて、誰に読んでもらおうか?」
品定めをするように、六人を眺めると、先ほどの投擲に腰を抜かしたオズワルドが立ち上がったが、アルマは一切顔を向ける事なく、ある人物に近付いて答えた。
「シャンテ、キミに黙読してもらおう」
受け取りながら驚いた様子でシャンテは聞いてきた。
「…どういう事、何を企んでる?」
「心配する事はないよ。キミには読む権利が出来た。
だから、こうやって手渡しそうとしてるだけだよ」
「…なら、これはオズワルドが読むべきだ」
「そうは行かない、レフィーユ?」
そう言い終わるのが早いか、レフィーユはサーベルを作り直して、オズワルドに突きつけたのでオズワルドは怒りを浮かべたままだった。
「レフィーユ、キミは何をやっているのかわかっているのか?」
「確かに私も日記には興味はある。だが、アルマの選択にはとても興味があるのでな」
「そういう事、良いかい声を出しちゃ駄目だよ。
『黙読』するんだよ」
場内が騒然となる中、気が付くとセルフィは自分の方を見ていた。
「機嫌、悪そうね?」
「おかしいなと思いましてね」
「私にとっては、あの日記帳がアルマの元にあるのがおかしいのだけど、アンタが持っていたんじゃないの?」
「それはここに潜入した時に偶然出会った際に、少し貸してくれと言われたから返したのですが。
その時、アルマさんが、日記帳を手渡した人物が、覆面集団の元締めだと言ってくれたので、承諾したのもありますけど…」
セルフィはまた息を呑んでシャンテを見下ろした、だが、すぐに視線を戻して聞いてきた。
「じゃあ、何がおかしいのよ?」
「どうして読ませる必要があるのかなと思いまして」
「どんな組織にも派閥はあるものでしょう。
カリフっていう組織と、あの覆面集団。
どちらも七色同盟を守るっていう組織なのよ?
なら、自分の組織の正当化を訴える証拠みたいなモノがあれば強力なカードになる事は間違いないわ。
日記には、それが書かれていたから、アルマは読ませようともしているのじゃないの?」
「セルフィさん、私はその日記帳を読んだ人間なんですよ?
はっきり言わせてもらいますが…」
そういい終わると、シャンテは『そこ』に触れたらしく。
「そ、そんなバカな…」
普段、感情を表に出さない彼女が、感情の揺れが見て取れた。
そして、ここになってアルマは狙っていたのだろう、笑顔でシャンテに聞いてきた。
「さあ、どうする。
この会見も含めてそうだけど、確か、キミはオズワルドに『この日記を発表すれば、オズワルドの地位は安泰する』と言って計画していたそうじゃないか。
読んだ上で聞かせてもらうけど、発表していいモノだと思うかい?」