第五十七話
「利用ですか?」
「そうだ、あんなにいい情報が転がっているというのに、どうして利用せんのだろうなと前から気になっていてな」
「まるでアルマさんが前に言ったような事を聞いてきますね?」
「なら『お前なら良いと思っている』と言えば、お前はどうする?」
突然、真っ直ぐ見つめてそんな事を聞いてきた。
しかしレフィーユとて、次に自分の言う事を知っているのだろう。
「そう言われて、する人だと思いますか?」
予想通りに台詞を言うと、ゆっくり答えた。
「だがお前とて数々の事件に出会った。この状況を利用する輩など山ほど見てきたはず、どうして利用しない?」
「大した理由ではないですよ」
「それでもだ。
それでも、聞かせてくれないか?」
「日記帳を読んだからでしょうかね」
するとタンカーが動き出し、景色が動き出した。
「…そういえばお前は読んだ人間だったな」
「まあ、誰が書いたのかわかりませんがね。読ませてもらいました。
やっぱり凄い人が書いたのだなって、思える内容でしたよ」
「ふっ、それはそうだろう。
今の同盟は気に入らないが、核兵器の排除、戦争の撤廃など今の七色同盟は訴えは出来るだろうが、実行など出来もしないだろうからな」
「そうですね、内容もそうでした。
核テロの危険を訴えて、考えたり、そんな中、なにより始めから読ませてもらって、わかったのはこの人は『足掻いて』ました」
「ふっ、それは一生懸命とは違うのか?」
「…いえ、足掻きです。
何よりその考えは全世界の反対意見だという事も理解した上で。
そこで悩んで、ずっと訴えるたびに何が悪かったか反省したり…。
やっぱり出来もしない意見だったとか、諦めかけたり…。
さっきの事を心無い議員に言われて怒りを覚えたりとか」
「まるで、子供の日記だな」
「確かに、ですが、これを書いた人は何より頑張ってて。だから、他の六人も着いていこうと思ったのでしょうね。
例え…」
一瞬、声を詰まらせてしまい、周囲を見回すとレフィーユはこちらをみたまま聞いて来た。
「どうした?」
「いえ、何でもありません。
要するに私も足掻いてみようと思ったのですよ」
するとレフィーユは微笑んで答えた。
「かなり遠回りする男だ」
「ようするに私は貴女とは対等でありたいのですよ。
言いたい事を言って、怒りたい時に怒って泣いて…。
一個人として、貴女と向き合っていたいのですよ」
するとレフィーユは笑いだすので少し『ムッ』としたがレフィーユは言った。
「やれやれ、このまま一緒に脱出をしようと思ったが、どうやら残らないといけないようだな」
そう言うと、先ほど気絶させた二人が目を覚まし、驚いたままこちらに掴み掛かるが、
「手を出すな!!」
そう一喝したまま、先に行けと促したので、理由を聞こうとするが、微笑みを浮かべて答えた。
「心配するな、私も少しばかり足掻いてみようと思っただけだ」