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第五十六話

キーボード壊れる、バックスペースが打てなくなった

 「まあ、とりあえずその人質はこっちで預かるよ。


 こっちで責任を持って無事に逃がすから、安心してほしいな」


 そうは言うが、この従業員、突然やって来たアルマに動揺を隠せないのだろう。


 「安心しろ、この女はあそこで倒れている奴らよりかは信用出来る、君をちゃんと逃がしてくれるだろう」


 そういうとようやく腰を上げるとこっちを見た。


 「私はやる事があるのでな。残念だが、一緒には行けない」


 そう言って、後をアルマに託し人質を見送ると、まだ見えない気配に呼びかけた。


 「隠れてないで出てきたらどうだ?」


 すると小冊子を片手にプリントを読みながら漆黒の法衣を被った男がやって来た。


 「どこに旅行中だ?」


 「しおりに地図で、私はこんなトコロ、間違っても旅行はしたくはありませんね」


 「地図…まさか、この艦内全体のか?」


 レフィーユの興味を引いたのか手を伸ばしそれを受け取ると、感心しながら言った。


 「よく手に入ったな?」


 「ネットの検索サイトで検索したら、載ってましたよ。


 さっき確認しながら、こちらにやって来たので、この地図は正確でしょうね…。


 …どうしました?」


 「お前も顔が笑っているから聞かせてもらうが、どうして会社やこういった建物、ビルというのは『撮影』が禁止されているというのは知っているな?」


 「確か、泥棒や最近の犯罪者達に潜入ルートを計画されるのを防ぐためでしたね」


 「そうだ、この通り、ネットで内部構造を記載した地図など掲載はもってのほかだ。


 私が地図がほしいと言ったら、ここの案内役は『正式な手続きをしてくれ』と言った割に、ここの防犯意識はどうなっているのか、頭が痛くなって来てな」


 「それだけ、今の人に組織や企業に忠誠を誓う人が少なくなってきているという事なのでは?


 まあ、私としてはここの構造には手を焼きましたから、大助かりなんですがね。


 セルフィさんにも、渡しておきましたから、もう迷う事はないですよ?」


 「ふっ、ますます修学旅行だな」


 そう微笑んで地図をじっと眺めている彼女の姿に今になって気付いた。


 「どうした、ああ…」


 チャイナ服を模したパーティドレスに施された装飾は見るだけで、オーダーメイドというのが解る。


 そんな状態で彼女は足を組んで読むものだから、腰の辺りまで見えそうになっていたのがレフィーユも自分の視線で気付いたのだろう。


 静かに身なりを整え、彼女は聞いてきた。


 「それは何だ?」


 「オズワルドさんが、今日日付けで重大な発表があるから、ここで発表しようとしてこのタンカーで働いているみんなに送信されたデータをアルマさんが、小冊子にしてくれたモノです」


 今度は小冊子を受け取り読み始め、そして、静かに聞いてきた。


 「重大な発表とあるが、お前は何だと思う?」


 「…さあ、結婚を発表をするとかでは?」


 「そういう嘘はよくないな、だったら何故、この地図をデータではなく紙として持ってきた?」


 「セルフィさん達には『帰ってきていない』と連絡が入ったそうですが、私にはアルマさんから貴女が『拘束された』と連絡が入りましたからね。


 今までの状況を考えて、こうやって極秘裏に行動する方を…」


 「ふっ、それがお前の『しまった』という表情か…。


 そうだ、婚約も周知となっている。でも、私が賛成などしていない。


 オズワルドにも格好があるからな、そんな状況で結婚など迫れるわけも無いが、今日、急に『結婚をする』と言おうとしている。


 その意味がお前にもわかるはずだ?」


 「何か重要な事を握った…」


 「お前は知っているはずだ?」


 多分、彼女はプラフ(はったり)を言ったのだと思う、しかし感じ取れていた。


 「気付いていたのですか?」


 「お前は私が『それだけか?』と聞いた時、『それだけだ』と答えた。


 しかし、アルマはお前の事を調べる事が出来る人物だ。私の事など、調べるのには手を焼く事もないだろう。


 改めて聞かせてもらう。


 オズワルドは私と結婚したいために、何を発表しようとしている?」


 「貴女の、正確にはアルマフィ家のした事でしょうね…」


 『誤魔化せばいい』とこの時、まだ思っていた。


 でも誤魔化すにも気付くだろう、黙ってしまえばさらに気付くだろう。


 しかし、彼女にしても同じ事だった。


 そして、自分と違うのは…。


 「利用すればいいものを…」


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