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第五十五話

 「私事で面倒に巻き込んでしまって、すまない」


 レフィーユが謝り態度を伺うと、その女性は構わずと首を振るが動揺は拭いきれてないのが見て取れた。


 無理もない、立ち去ろうとした時にあの覆面集団に襲われ、切り抜けようと退避しようとしたレフィーユを止めるべく、人質に捕らえられたのだから。


 タンカーの一室に連れ込まれての軟禁状態、ドアの外には門番が眺めている限りだが、二名いたので聞いてみた。


 「ホントに事が済めば、彼女は無事に帰すのだろうな?」


 すると『事が終われば、安全に帰す』という決まり文句には…。


 支配人の身体に容赦なく『日本刀』を突き刺す光景が浮かんだのだろうか女性従業員は、さらに顔が強張っていた。


 レフィーユにしても自分の顔すら見ないでそんな事を言うのだから信用しない事にして、彼女を人質に取ったリーダーらしき人物の事を考えていた。


 あの支配人を斬りつけた事も気にもなるが何より気になったのは、そこで使用した東方術。


 「日本刀…か…」


 思わず呟くので、従業員は何を言ったのだろうかとこちらを向くが、何もなかったかのようにとりあえずレフィーユは思考を整える。


 まずは七色同盟…、自分のアルマフィ家、スカーフの色は『赤』。


 『黒』はオズワルド、『緑』エドワード、『青』はアイーシャ。


 『オレンジ色』のチェンバレンに、殺害された『紫色』のミン…。


 日本刀を作りあげ、その東方術を使った覆面集団のリーダー。


 『藍色』のスカーフ…シャンテ。


 その七色同盟を見守り続けた『墓守り(カリフ)』、アルマの存在も忘れてはならないだろう。


 七色同盟の七人に、カリフに、そして、もう一つの接点、日記帳。


 彼女自身、何が書かれているのかわからない、ただ『真実が書かれている』とされているその日記帳が盗まれたという事は確かに大変な事だろう。


 だが、何故、盗んだという事だ。


 そもそも一番、おかしいのだ。


 レフィーユとて『漆黒の魔道士』が盗んだというのは信じていない。


 しかし、そこが不自然である。


 アルマとて『彼の事を調べて』いたのなら。


 『ミン・チョンワという人が殺されたから、少し協力して欲しい』と言えば、賛否はわからないがこれで伝わるだろうと思った。


 だが、彼に関わらせようとしたやり方は、日記帳を見せて、その後『自分が決めろ』と明らかに託していたのである。


 そしてアルマから出された、新しいヒント…。


 『ボクが日記帳を盗み出す事なんて出来ない』


 では誰が盗んだのか…。


 彼女は『全部、教えた』という。


 「なかなか考えているけど、考えはまとまったかな?」


 そんな事を考えているとまるで息を飲み込んだようなうめき声と、一際大きく何か打ち付けたような音が聞こえたので聞いてみた。


 「ふっ、新しい疑問が浮かぶ始末だ、一つ聞いていいか?」


 「なんだい、ボクが答えるとは思ってないくせに良くそんな事が聞けるものだね?」


 『ひょこり』とドアにつけられた窓から顔を出したのはアルマだったので、レフィーユは言った。


 「だが、一つわかった事があるから、一つだけ聞かせてほしいだけだ」


 「なんだい?」


 「カリフはミン・チョンワを殺害したのか?」 


 あえてアルマと言わず、組織全体を指して言う。するといつも通り。


 「それはキミが決める事じゃないのかな?」


 そんな事を言うので仮説を立てて聞いてみた。


 「なるほど、では、その対応はお前は日記帳を『読んだ』からやっているのか?」


 少しの間だったが、アルマが黙るという動作をした。


 確信は無かったが『判断するのは、何世紀先の私たちの子孫に任せる』と言って、読むことを禁止されていたのだから。


 その日記帳には『他人に託す』という概念があったのではと思えたのだ。


 「さすがに鋭い…」


 するとしばらくして、いつも通りである。


 「言ったと思うよ、それはキミが決める事だと…」


 すると横から、聞きなれた声が聞こえてきた。


 「レフィーユさん、いました?」


 平静を取り戻した、アルマは返答した。


 「うん、人質も一緒、確認したよ」


 まるで迷い猫を探す私立探偵のようなやりとり、門番二名を倒したとは思えないテンションで話していた。

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