第五十四話
「アンタさ、私が、前にどこにいたか知ってるわよね?」
「確か、天才機構インテリジェンスでしたか?」
「そう、私は姉さんを手伝うために白薔薇に入ったのよ。転校してたなんて、予想外だったけどね。
それで私は白薔薇の治安部で精鋭とされている戦乙女に選ばれて確信したものよ。
自分の実力は姉さんの助けにもなれる、なんて思ったりもしたわ」
するとセルフィは『ふん』といつものようではあるが、少し顔を曇らせて言った。
「でも実際はどうかしら、そういった役目はいつも貴方が横取り。
…ごめん、言い方が悪かったわ。
何も出来ないでいる私がいて、いつも時間切れとばかりに随分とやってくれている」
「そんなに大した事をしてませんよ?」
「ふん、私からみれば謙遜よ」
そう言って、『立ってないで、座れば?』と言うので、先ほどパソコンを弄っていたためかパソコンの前の椅子に座る。
「あのままだと、アイーシャは勝手にあの集団がいるタンカーに帰ってしまいそうだったじゃない。
さらにその帰り道には、あの魔法使いがいるかもしれないのよ?
…何が可笑しいのよ」
「いえ、何でもありません」
「ふん、まあ、アンタが何か言ったおかげで、この学園の自分の部屋に帰らせたのだから。
胸を張ってもいいわよ」
「それこそ買いかぶりではないでしょうか?」
「でも、リザルトはそんなものじゃない。
その証拠に、私の方は誰かさんの捜査妨害もあって今も捜査が進まないし、結局、私は何も出来てないって事よ」
するとセルフィは立ち上がり伸びをみせて、ベッドに仰向けに倒れこむ。
「それに引き換え、アンタはどうせアルマって人と通じてるのでしょう?」
「よくわかりましたね?」
「冗談のつもりだったのだけど…。
ふん、それにしても、着実に私達より前に進んでいると思うわよ。
アンタですら捜査も進んで、気が利いて…。
私は、捜査も進まず、気も利かない…」
確かにセルフィ自身、戦闘能力もさることながら、捜査能力もそれを指揮するのも申し分ない。
ただ、今回のように目立つ事があった、それは。
「経験が浅さは、経験で補うモノですよ。色んなモノを見るのに時間は掛かる当然でして。
結局は時間が解決してくれると思いますよ?」
すると倒れこんだままセルフィは、
「…じゃあ、アンタは色んなモノを経験したって事になるわよ?」
こっちを見ずに聞いてきたので、彼女の表情はわからないがただ少し真剣さが伺えた。
「聞かせて欲しいわね」
「知りたいですか?」
「ふん、答える気なんて毛頭無いくせに…」
「そうですよ、悪いですかセルフィさん?」
『ふん』と寝返りを打ち、そのまま自分に背中を向けて起き上がったままセルフィは答えた。
「でも、いつか話してほしいわね。
アンタがどこでどんな目にあったか」
「別に誇るほどのモノではないのですがね?」
「私は、貴方の言葉で聞きたいのよ。
だから『いつか』よ」
すると携帯が鳴った、最初はセルフィの携帯だったが、続いて自分の携帯も鳴り始めたのでセルフィは
振り返る。
そしていつものように答えた。
「それまで私はせいぜい、いろんな事を経験しておくわ。
アンタに負けないくらいにね」
そう言ったまま携帯に出たので、自分も携帯に出る。
相手はアルマだったのだが。
セルフィが驚いた様子を見た上で思った。
『レフィーユが拘束された』
このアルマの言った言葉の信憑性はとても高かった。