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第五十二話

 「その中の一つに、ある出来すぎている話があったんだ。何だか解るかレフィーユ?」


 「さあな」


 「我々、先祖の最後の視察の時、核兵器のある基地を視察にやって来たのは出来すぎた話ではないのか?


 というのだ、確かに場所は機密。そこを視察にやってきて、核のテロに巻き込まれるのだから、実に出来すぎた話だ」


 そう言ってオズワルドは、水を口に含みジロジロと私を眺めて言った。


「君の家系は、実に優秀だ。


キミは治安部のリーダーにしても、妹のセルフィ君は天才機構インテリジェンス、親は財務高官に、他にも政治家、社長秘書…などなど。


 二千前、七色同盟の結成時の君の先祖に至っては、とある国の防衛庁の長官だ」


 「…オズワルド、要点だけを言え」


 「レフィーユ、その防衛庁、どこの国だと思うかね?」


 オズワルドの話は実を言うと、本当は察しがついていた。


 「…フォルグナート公国」


 だが、呟いたその態度に、勝利を確信したかのようににやついたオズワルドは言う。


 「当時、七色同盟は犯罪者、その集団による核テロリズムを危惧していた。


 しかし、核の排除、それは全世界、いや、核保有国にとって、減少はするにしても大きな課題だった。


 実際、視察の許可など下りるわけも無く、『抜き打ち』でこそ視察にいかなければなからなかったそうだ。


 だが、そこで『事件』が起きた。


 ここまで言えば解るだろう。


 つまり、キミの先祖が核兵器のある場所を教えなければ、我々の先祖は死ぬ事はなかった」


 「オズワルド、二千年も前の過去(こと)を、現在(いま)に引き込むな」


 「だがキミの先祖はエドワードの先祖を巻き込み、そして、殺した事にもなる。それは決して軽い事ではないだろう?」


 そして、そう言うとオズワルドはサインをこの店の従業員に送る。すると、にこやかにその従業員が小さな小箱を持ってきた。


 「私はただキミとキミの家の名誉を守りたいだけなのだよ。


 どうか、受けとってほしいな」


 詳しく先ほどの会話を聞いてなかったらしく、笑顔で小箱を開ける。するとそこには指輪が入っていた。


 だがその従業員は、さらに困惑した。


 それは、私が『笑顔』だったからだろう。


 「何がおかしい?」


 「すまん、すまん、つい笑ってしまった。なるほど全てを知っているようだな」


 そうなると性格なのか、素直に感想が漏れた。


 「正直、見直したよ」


 人間とは弱みを握られたら、それを利用しようとする輩は必ずいるからだ。


 ただそうなるとあの時に気になった事が、思い出してきた。


 「当然だろう、第一、キミの秘密を私だけだ。あのカリフとて…」


 「おそらく知っていたのではないか?」


 「なんだと?」


 「オズワルド、どうしてアルマは『全部』『全て教えた』というのを、あの時、強調したのだろうな?」


 「そんな事、わかるわけが…」


 「オズワルド、どうして私とお前だけに内容を聞かせる事を条件に、アルマは自分に盗聴器を仕掛けさせたと思う?


 それは私とオズワルド、アラバが知っている事を話そうとしたからだ。


 なるほど、そんな状況下、あの女の言うとおりどっちがいい男か私はわかった気がするよ」


 そう言って、今度こそ立ち去ろうとすると、オズワルドに呼び止められた。


 「レフィーユ、キミは家の名誉を汚すつもりか!?」


 「ふっ、何を言うかと思えば、生憎と私の家では『七色同盟』の名誉はアテにせず。


 自分自身で別の名誉を勝ち取れいうのが、私の家のやり方でな」


 「レフィーユ!!」


 「オズワルド、その同盟の名誉がなくなったら、貴様に何が残るのだ?」


 この会話の意味が近くにいる従業員に気を使わせてしまったので、この場を沈めるために今度こそ立ち去ろうと最後に一言だけ言った。


 「これ以上、何か言うと私はお前にそこの水を引っ掛けてしまいそうだ…。


 いや、やめておこう。


 もしそうしたら、アイツの名誉に関わる」


 

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