第五十話
「もともとと言えば、貴方が原因だろう…」
「また、それかよー。
『貴方が婚約を破棄しなければ…』ってかー?
いい加減にしてくれよ、わかるだろー?」
「『血筋はもっと枝分かれするべきだ』、なんてそんなのは言い訳に過ぎない」
「ちょっと、二人ともやめなさい」
さすがにこう言った険悪なムードが見て取れたので、セルフィはシャンテをなだめていた。
レフィーユはシャンテからオズワルドに呼び出しを受けたと言うので、この場を任せここにいなかった。
「なー、ミンが死んでんだぞ?」
だが、チェンバレンは意外と冷静だった。
「俺は、ミンとは国は違うけど警察で同僚だー。
少なくとも、こいつを殺した犯人は知りたいてーんだよ。
ここいらで協力でもしてくれよー」
少し間延びした口調の中に、ずっしりとした重みのある声で聞いてきたが、しかし、シャンテは気にもしないのか『それで』と言った対応をとる。
「…あの事件が起きる前よー。俺、ミンに会ってるんだわー。
『ちょっと、オズワルドに会ってくる』ってなー。
『口論』になったそうだな?」
警察らしく、事情聴取を進めるチェンバレン、シャンテをじっと見て言う。
「なー、なんでお前がオズワルドのトコロにいるんだよ?」
「何を証拠に…」
「複数の目撃証言を確認したんだぜー」
「お前は、私との婚約を破棄した人間だ…」
「そうじゃねー、そこでどうして事件前夜のその事を、オズワルドが多額の金で、その事を隠したって事だよ」
シャンテは言うつもりもないのだろう、黙りこむが少し聞いてみた。
「あの、念のため聞きたいのですが、レフィーユさんが一人でどこか行った時、貴女はどこにいました?」
「名誉を汚すような、お前に何も言うつもりはない」
そう睨み付けられるが、チェンバレンは言う。
「なー、それは駄目だ、警察としてその証言は認めねーって、権限があるくらい知ってるだろー?」
また黙るがしばらくして言う。
「あくまで私を疑っているようだな…。
オズワルドから出動の連絡があったが、私は体調が悪くて寮の自室で休ませてもらっていた…」
「フン、それを照明してくれる人は?」
「いない…」
自然と周囲は怪しむのは無理がないだろう、しかし、シャンテは言う。
「…それがどうした、それで私が犯人だとでも言うか?」
あくまで強気のシャンテにセルフィとチェンバレンは自分を見た。
「まあ、失礼でしょうね」
「物分りがいい、もう何もないな?」
そう言って、シャンテは立ち上がる。
まだ聞きたいことがあった、だが、その時に気になったのは自分を嫌に凝視していたからだ。