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第四十九話

 「そうだ、それで最後に二行くらい開けて、名前を書いて…。


 そうだな、その前に白鳳学園男子生徒と書いて、その後に名前を書いた方がいいな。


 そこで左人差し指で拇印を押しておしまいだ」


 そうレフィーユに指を指され、自分の教室にて書こうとしているのは『始末書』である。


 今回の起きた自分の失態を書こうとした時、レフィーユの隣にいた、セルフィは何かに気付いた。


 「ねえ、アンタ、ちょっといい?」


 「何でしょうか?」


 「アンタ、さっき『初めて書くので、教えてほしい』なんて言ったけど、私が見る限りアンタって、けっこう始末書沙汰になるような事、結構してるわよね?」


 言われて気付くというのは、こういう時だろう。


 それに自分も一瞬、気付いたのだが、一瞬で元凶に気付いた、その元凶は短くまとめた黒髪を掻き揚げて言う。


 「ふっ、セルフィ、私を誰だと思っている?」


 そうして、セルフィは呆れた。


 「姉さん、職権乱用にもほどがあるわよ?」


 「そう苛立つな。まあ、今回ばかりはアラバも理由付ける意味を込めて格好くらいつけておけという事だ」


 とりあえず、オズワルド達を納得させるような言い訳を考えておくより、始末書を書かせたからいいだろうと言う事でカタをつけてしまおうという魂胆だろう。


 「ええと、国が違うのですから、年号は西暦でいいのかな…何月ん日、この度、私、白鳳学園生徒シュウジ・アラバは今回、重要参考人であるカリフの首領、アルマを取り逃がしてしまいました。


 …ええと、これだけではさすがに格好がつかないですね」


 「今後、繰り返さないためにどうすればいいか、書いたらいいと思うわよ?」


 「なるほど、じゃあ…。


 心より深く反省をしてますと同時に今後、このような事を繰り返さないために今回のように口頭で注意するだけでなく、その事態に最適な行動がとれるよう努力も怠らないようにいたします。


 白鳳学園生徒、シュウジ・アラバ」


 「アンタね、静かに書きなさいよ?」


 「読者に分かりやすいようにしているのですよ」


 「何をワケのわからない事を言っているのよ」


 そう言いながら、出来た始末書を受け取り読み終えて言った。


 「まあ、当たり障りの無い反省文よね。


 私からしてみたら、アンタの迂闊な行動は控えてほしいのだけど?」


 「それは出来ませんよ。レフィーユさんだって、この始末書はそれを面と向かって注意されるのを避けさせるつもりで書かせているのですよ?」


 「ふっ、鋭いな。


 始末書さえ出してしまえば、後はどうとでもすればいいさ」


 「それはそれは感謝しております」


 「感謝したまえ…だがな…」


 今度はレフィーユが自分の書いた始末書を見て、その両端を掴んで真っ二つに破いて自分の机の上においた。


 「だが、まだ、これでは受け取れないな」


 「何でですか、私はせっかく書いた書類を破られて、地味にショックを受けているのですけど?」 


 「ふっ、それはお前が全部話してないからだ」


 そう言われ、セルフィは半分睨みつけるような態度でこっちを見た。


 「そうなの?」


 「レフィーユさん、私は全部を話しましたよ?」


 「ふむ、そうだな、だがお前は私に何かを隠してないかと思ってな。


 それを聞かせてほしいのだが?」


 自然と周囲が緊迫する中、その緊張をやぶったのは…。


 「レフィーユ、こんな男の相手をしている?」


 シャンテが中断するように、教室に入ってきた。


 「こんな男とは、酷いですね」


 「身を粉にして、私達、七色同盟の役にたてない役立たずが、今回の首謀者を取り逃がしておいて何を言う。


 そもそも、今回のアレは、お前が思いついた提案だそうだな。


 だから、エドワードは大変な目にあったのだろう?」


 「ですが、その際にアルマさんは、私達を助けようとしたのですよ?」


 「あの女は日記帳を盗んだと言うのに、それを信じろというのか?」


 「彼女は『日記帳を盗んでない』と言ってました」


 「お前は名誉ある私達より、容疑者の方を信じているのか?」


 セルフィが、さすがに言いすぎだと詰め寄ろうとしたが、その前に手で制して言った。


 「そうですね、ただならぬ関係のオズワルドさんと、貴女達が名誉と言われましてもね」


 「お前…」


 その一言で空気が一気に冷たくなる。


 「私はその事に関して、少し話を聞かせてもらいたいのですが?」


 「どうもお前は私達を疑っているようだな、それは七色同盟に対する侮辱だぞ?」


 「それがどうしたのですか、別に構わないでしょう、レフィーユさん?」


 するとレフィーユは、微笑みながら了承した。


 「どうしてだ、レフィーユ、お前には七色同盟の誇りというものが…」


 「私はこの男の事を信じているからだ」


 「馬鹿馬鹿しいっ!?」


 シャンテは怒って、教室を出ようとした。だがまた教室に戻ってきた。


 「シャンテ、俺もー、お前にいろいろ聞きたい事があってなー。


 参加させてもらってもいいかなー?」


 チェンバレンが入ってきた。


 「チェンバレン、貴方まで…」



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