第四十話
「おや、キミは嘘をついて、私は思わずキミの命を狙おうとしているというのに、どうしてそう思うんだい?」
「貴女は『自分で決める事だ』と言いました。だから、私は『自分で決めたのですよ』。
貴女の言う事を信じない事にしてレフィーユさんの捜査の協力する事に利用させてもらう事にしたのですよ」
振り向くと、まだカタールを突きつけていたが、何故か確信があった。
「これは『自分が決めた事』なのですよ。貴女に命を狙われるのは、おかしいのでは?」
失礼な事を言っていると思った。
仲間を殺され、しかもその死体を利用されているのだ。
普通ならアルマの行為は正しい、ここで襲われたのなら、アルマの真相が聞けると思った。
だが、いつも通り…。
「そうだね、キミを責める事は出来ないね。
結果としてはレフィーユがここを捜査をするのだから、まあ、いいや」
「おや、怒らないのですか?」
「別に…じゃあ、悪いと思っているのなら、付いてきてほしいな」
挑発代わりに言ったつもりがにこりと避けられ、構わず彼女はカタールを消して、一旦、階段を下りて彼女はその上にある窓に目をやった。
その通気に使用されている窓に素早く飛び上がり開錠してそのまま中に入って一瞥した。
視線の意味はわかったので、彼女の後を追うようによじ登ると少し高いトコロにいるのだと実感するように強い風が吹いた。
そして、一本道のように道が伸びていたのだが、先導を勤めるようにアルマも進んで目的の場所に着いた頃には…。
「あれ、アラバくん、どうしたのかな?」
怪訝そうな顔をしていたのだろう、そのとおりだった。
裏からだがこれだけは理解していた。アルマが立っているその場所は、エドワードの部屋だったからだ。
「勘違いしてほしくないな。ただ、彼の部屋には秘密があるからだよ。少し後ろを向いてくれないかな?」
再度、東方術でカタールを作る。どうやら、彼女の東方術の付加能力を使って、彼の部屋に入るようだった。
付加能力は知られたくないのは、よくある事だったので、後ろを向こうとする際、少し状況を覚えておいた。
彼女が潜入すると思われる窓は開いているが丈夫そうな鉄格子で潜入は不可能。
他にも窓はあるが、カギは掛かっているのが見えた。
本来、ここは人が通るような道ではない。場所が場所のせいで、ドアなどない。
その状況を覚え、言われたとおりに後ろを振り向いた。
その途端、また強い風が吹いた。
思わず、身を屈めてしまったが、背後で声がした。
「何をやってるの?」
振り向いて窓を見ると、すでに潜入を果たしたアルマが鉄格子のない方の窓を開けていた。
「どうやって、入ったのですか?」
「付加能力だって事くらいは知ってると思もうけど。そもそも、手品みたいなモノだよ」
「手品、ですか?」
「タネがわかるとつまらないって意味なんだけど…」
入ろうとした時、彼女はぐいっと、引き寄せて言った。
「動かないで…」
窓枠に股を挟むような状態で引き寄せられたので、自分の身体は転げ落ちた。
何ようなが起きたのか理解出来なかったが、衝撃で歪んだ視界が捉えたのは、状況をつかめないままのエドワードだった。
「エドワードくん、彼が怪我をさせたくなかったらわかるね?」
そして、彼女は続いてエドワードにもこう言った。
「大人しく引き下がってくれれば、ボクとしてはありがたいけど、彼がどうなるかはわかるよね?
だけど、困ったね。
キミをここで逃がしたら、エドワードくん、キミは応援を呼ぶよね?」
エドワードにもこう言った。
「エドワードくん、よかったら付いて来るかい?」
そして、戸惑うエドワードをじっと見たまま、エドワードに判断を任せていた。