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第四話

 「ちなみに『見つかったら、自己責任』と言った辺りから、もう移動を開始していました」


 「アラバ、誰に解説しとるんじゃ?」


 六人はイワトの部屋を窓から抜け出し、その部屋から見える白鳳学園、その屋上より引っ張り上げたワイヤーロープを縛り、揺れに反応したバケツが彼の部屋へと滑っていくのを見ていた。


 「どうやらドア越しから聞き耳を立てていたレフィーユさんには、ワイヤレスの拡声器に毛布を被せて話していたのが、そこで話したように見えたようやな?」


 「じゃが、アラバよ。『レフィーユさんを怒らせる』というには、まだ、少し無理があるんじゃないか?」


 「まあ、無理でしょうね…。とっさとはいえ反応されているでしょう。


 今頃『ふっ』と言いながら、叩き切ったサーベルで、この会話の発信源である毛布を取っているトコロでしょうからね」


 「スイッチ切れや、じゃが、それを知っててどうしてお前はこれをやろうと思ったんじゃ?」


 「そこですよ、だからもう一回、コレを取り付けまして…」


 シャアア…。


 そんな音を立てて、もう一度、バケツは滑っていく、その光景を見て双子の片割れキリウは言った。


 「解説付きでそんな事やったら、余計、無理だろ?」


 「でしょうね、またサーベルで真っ二つでしょう…。


 そこなんですよ…」


 何やら鈍い音がして、しばらくして部屋から何やら変化があったので、さすがに自分の部屋だからかイワトが聞いてきた。


 「おい、アラバ、ワシの部屋から白い煙が出てるが…?」


 「ちょ、おま、何やった?」


 「この日のためにチョークを砕いて溜めておいたのですよ。いやあ、いつかこういう時がやって来るとは思っておりましたのでね。


 『存分』に使わせてもらいました。


 今頃、調子にのって叩き斬った彼女は、顔を白くしているでしょうね」


 さすがにおかしくなったので『一人で』笑っていると…。


 「…メガホンがお前の笑顔のように変形して見えるが、私が真っ白になる事がそんなに面白いか?」


 硬直したのは自分だけではなかった…。


 「まあ、確かに私はお前の言うとおり叩き切った、調子に乗っていたのかも知れない…」


 古来より、争いと技術は比例関係にあると言われている。


 「だがな、ここからお前の位置まで、バケツとは言え、怪我をするくらいの距離を滑ってワケだ…」


 この拡声器だってそうだ。


 犯人の攻撃や、刺激をしないようにとワイヤレスになり、この位置でも綺麗な音や声を伝えるようになった。


 「するとそれを踏まえて私が避ければ、後ろの人間が怪我をする可能性が出来たな。


 だから、私は斬り付けたというのは、間違いだとお前は言うのか?」


 それは単純な作りであればあるほどに…。


 つまり、これには余計な機能の付いていない拡声器である。


 それはマイクから拡声器へ声を伝える事が出来るが、拡声器からマイクへは声が伝わらない道理がある…。


 道理があるのだが…。


 「レフィーユさんの声がマイクから出てるのですが、みんな『引いて』ますよ?」


 「ふっ、争い事に威圧感は必要だろう?


 …まあいいだろう、お前がこういう態度に出るのなら着替えてくるまでの間、せいぜい…足掻いておくのだな?」


 すると何故かマイクのスイッチが切れた事で、ここにいる六人は誰しもが事態の強大さを思い知っただろう。


 僕らは逃げ出した…。


 ……。


 「おい、アラバ、一旦、休憩を取りながら確認しよう。


 まず、最大の目標は銀行に駆け込み、銀行にコレを預ける事。


 俺たちは今、まとまって逃げているが、今、その集団を抜け出して先頭を走っているのが…ああ…」


 確認している最中のレオナだけではない、各自が耳にした通信機が鳴る。


 「もしもし、俺やけど、みんなと離れて走って、銀行まで5ブロック先ってトコまで来たで?」


 周囲は『おおっ』と、安堵した空気があったが一応『急いで』と言うと、彼は明るく答えた。


 「おい、アラバ、俺はお前より足早いんやで、そこじゃまだ車の音もしてへんのやろ、大丈夫やて」


 「そうですけど、それは甘いですよ。


 彼女は…」


 悪寒が走った…。


 思わず周囲を見回し、おかしさに気付いた。


 「車の音がしない。サイトさん、走ってください!!」


 「はぁ!?」


 サイトだけじゃない、だが一人だけ動揺している状態だったので、誰かしら何がどうなっているのか聞こうとした。


 その時である。


 ドゴッ!!


 イヤホンが何やら鈍い音を拾った。


 「…おい、サイト、何の音だ?」


 レオナの問いかけに、いつもならサイトの明るい声が入って来るのだが、それが無かったので一番早く、異変に気付いた自分にレオナが聞いてきた。


 「おい、アラバ、何が起きた?」


 「レフィーユさんです…」


 「おい、それはないだろう?」


 まだなんの冗談だと、みんなは思っていたのか笑顔があった。


 「……」


 しかし、笑えなかった自分がここにいたので…。


 「本当か?」


 「ホントです、おそらくですけど、この会話を今、聞いてますよ?」


 「じゃが、車も使わんで…」


 「隠密性を重視したのですよ」


 「それでも、この学園で一番早いサイトに追いつくって、距離的に無理だよ?」


 「彼女は、時と場合によっては、世界新で走る事が可能なのですよ?」


 時と場合によって…。


 この事が後に、いかに自分たちの戦いが無謀なのか思い知る事となるが…。


 「とりあえず、周波数変えませんか?」


 今はただ戦いは始まったばかりである。

なんだ、この超人レフィーユ…

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