第三十四話
閉めていたはずの鍵はいつの間にか、開場されており突然の来訪に周囲が凍りついた。
「なあ、アラバはん、呼んだんか?」
「とんでもない、これは秘密の会合じゃないですか呼びませんよ…」
「ふっ、この学園に転校してきてからだが、この学園内の非常食の廃棄する際、時折だが、現存する非常食の廃棄分が少ない事が、昔、とても気になっていてな。
最初は災害時における、過分、減分の表記ミスかと思いもしたのだが…災害にあった時、とある事を耳にした。
『ここの非常食は、おいしい』らしいな?」
じっとレフィーユに見回され、それを言った事があるのだろうか自分以外は目を逸らした中、レフィーユは微笑みながら言う。
「リスティア学園にいた頃に、非常食は食べた事はあるから言わせてもらうが『アレ』は味気の無いモノも多い。
なのに、どうしておいしいとみんなは言うのだろうな?」
顔は笑顔だが、この独特のプレッシャーはこの場を押しつぶさんとしていたので、唯一動ける自分は変わりに聞いた。
「結論から言ってほしいですね」
「どこかで味見している集団がいるという事だ」
「それが私達とでも?」
「そうだ」
よほど確信があるのだろう、一言そう言ったまま周囲をさらに見回すとさらに重圧が増す。エドワードも黙ったままである。
「じゃあ、その通りです」
「ふっ、随分とあっさり認めてくれるな」
「それはそうでしょう、ここまで来たら何を今さらってヤツですよ。
私達が『鍋の会』です。
というワケで…」
「『出てけ』と言いたいのだろうが、お前は家庭科調理室を無断で使っていいと思っているのか?」
確かにごもっともだったので、とうとう自分も黙ってしまう。
確かにここは家庭科調理室だったので、エドワードも最初は心配をしていたのだろうが、どうも状況に流されて今に至ったらしく、エドワードはさらに縮こまっていた。
そんな中、レフィーユは自分で椅子を持ってきて、隣に座った。
「…どうした、始めんのか?」
「あ、あのレフィーユさん、いいんですか?」
「ふっ、エドワード、そんな事をいちいち指摘していたら、こっちの身が持たん。
普段はほっておくが、今回は良い機会だ、私も参加させてもらうと思ったのさ」
構う事なく『入って来い』言うと、さらにセルフィが入って来た。
「アンタ、こんなトコロで何やってんのよ?」
「白鳳学園、鍋の会です」
「ふん、随分と神経の図太い事をやってるじゃない、学園の非常食を勝手に使っていいと思っているの?」
「これでも先生一同には許可もとってます、それに一応、賞味期限すれすれの廃棄になるのを選んで、こうやって料理に放り込んでますよ」
「ふっ、なるほど先生も協力していたとはな、見つけ難いわけだ」
「姉さん、笑い事じゃないわ。結局、この人は、これから賞味期限すれすれの鍋を、食べさせようとしてるのよ?」
「腐っているかどうかくらい、確認してますがレフィーユさん、それが嫌なら帰っていいのですよ?」
「面白い冗談だな」
そう答えて改めて席を座りなおすので引く気はないのだろう、そんなセルフィを尻目に姉は『私の小皿どれだ?』と言って来たので、それを見たセルフィは呆れながら言った。
「これでも私、エドワードさんを探してほしいと言われてに来たのだけど?」
「頼まれた?」
セルフィが『入ってきなさい』目を配らせたのだろうか、そこからやって来たのは…。
「エドワード、七色同盟の一人とあろう人が…」
アイーシャだった。