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第三十三話

 そうして、そんな携帯でのやりとりがあった、放課後の事である。


 「アラバ、エドワードを連れてきたぞ」


 「あ、あのアラバさん、これは?」


 エドワードが見回すと自分を他に、サイトにレオナ、キリウ、シリウがいたので答えようとした自分の代わりにサイトが答えた。


 「いやな、歓迎会を開こうと思ってな。アラバはん、準備はどうや?」


 「あとは材料切るだけです」


 「じゃ、はよしてや」


 「手伝ってくださいよ」


 「え~」


 「料亭の跡取りがこんな事を嫌がらない」


 だが、元々手伝う気だったのかサイトは元々集まっていたテーブルより少し離れ、材料を切っていた自分のテーブルの方に向かって行ったので、未だに立っていたエドワードに着席するようにレオナが促した。


 「何かゴタゴタしてて、すまんな、もう少し待っててくれ」


 そういうレオナ達のテーブルも筆記用具、教科書、ノートが広がっていたのがバツが悪かったのか、それを各自で片付けていると、ようやく準備が整ったのか食材がテーブルに運ばれてきた。


 「レオナ、もう火を付けていいんじゃないの?」


 「そうだな、後は音頭をとれば丁度いいぐらいに煮えてるだろうな」


 そんな中、自分も一通りの作業が終わり席に付くと、レオナは咳払いをした。


 「では、これより『白鳳学園、鍋の会』、特別集会を開く、今日はエドワードという仲間に出会えた事を感謝して、乾杯!!」


 『乾杯』と一斉に、声が上がるなか、未だにエドワードは戸惑っていた。


 「あ、あの大丈夫なんですか?」


 「ええのええの、構わへんよ。どうせ賞味期限すれすれの学園の非常食が材料だから、実質タダや、気にせんでええで」


 「わ、私の言いたい事は、そういう事でなくて…」


 聞こえなかったのか、サイトは鍋の蓋をかけると程よく、煮立った鍋におたまを突っ込んでいた。


 「ワシらは、こういう会合を開いては親睦を深める集団じゃからのう。まあ、気にするなや」


 「実質、六人しかいないけどね」


 キリウのつっこみが、緊張をほぐしたのかエドワードもようやく小皿に盛られた鍋の食材を一口入れて答えた。


 「おいしい、これ、ホントに非常食なんですか?」


 「まあ、鍋やからな。ダシさえしっかりしてれば、何でも煮込めばうまいモンやろ?」


 しかし、戸惑いながらエドワードは答えた。


 「す、すいません、鍋ってあんまり食べたことがありませんから…」


 サイトも周りも最初は冗談かと思ったのだが、エドワードの沈黙が答えだった。


 「信じられへん、もしかして焼き肉もか?」


 「す、すいません」


 「何という事だ。エドワードお前は、8割を損していると言っていいぞ?」


 「8割もですか!?」


 「そうだ、というワケだ。みんな今日は盛り上げていくぞ!?」


 そう言って、レオナの号令は『エドワード歓迎会』の始まりを高らかに宣言していた。


 そして、ようやくエドワードに笑顔が戻り、従来に戻った頃。


 「みなさん、やっぱり凄いですね」


 「何や、突然?」


 「いえ、こんな私でも気軽に接してくれて」


 「なんだ、お前のいる学園でも友達くらいいるだろう?」


 「いえ『七色同盟の一人』という性もあるのでしょうが、正直、私の周りによってくる人は、ほとんど社交な人たちばかりでした。


 でも、みなさんは何ていうかそんな事も気にしないで、私の国の事を教えてくれと気軽にやってきますし。


 皆さん、良い人ばかりです」


 それがレオナの機嫌を良くしたのか、ジュースをエドワードのグラスに『まあ飲め』と注いだ。


 「そういえば、エドはんの国で思い出したんやけど、七色同盟の謎って知ってる?」


 「何ですかそれ!?」


 笑いながらエドワードが興味を持ったのが解ったのか、サイトはさらに聞いてみたのだろうがテレビで昔、見た事があった。


 昔から『七色同盟』は謎がある。


 どうやって、集まったのか?


 誰が日記帳を書いたのか?


 カリフという組織も、その謎から騒がれてもいた。


 しかし、最大の問題があった。


 『何故、核弾頭がある施設を視察できたのか?』


 そして、昔から騒がれているのだ。


 『視察した、その日に核によるテロが起きるというのは、出来すぎているのではないのか?』


 「てか、アラバはん、さっきから黙ってはるけど、聞いた事があるやろ。


 みんな知らんって、言うねん」


 そんな事を考えていると、サイトは聞いていたのに気が付いた。


 とりあえず、嫌そうな顔をして言った。


 「サイトさん、確かに聞いた事ありますけど、一応、噂話じゃないですか、迷惑なのはエドワードさんですよ?」


 「確かにそうじゃのう!!」


 周囲が笑いに巻き込む中、エドワードは笑って言った。


 「いいですね、なんていうか強くてうらやましいです」


 「…別に、大した事はないだろう?」


 「ですけど、レオナさん、昼食の時、私が食堂に並ぼうとした時、警備員の人たちに止められた時に


 『嫌がっているだろう、やめてやれ』


 なんて屈強な人たちを前にそんな事を言ってくれた人はいませんでした」


 エドワードのいう事は自分でも気になっていた。


 七色同盟の一人だからか、エドワードだけではない、アイーシャの周りにもあまりにボディガード、SPに匹敵するほどの警戒をしていた。


 そんな中、エドワードは聞いてきた。


 「どうやったら、皆さんのように強くなれるのですか?」


 「強い…な、エドは強くなりたいんか?」


 「はい」


 「難しいな、でも強くなくて、ええやろ?」


 「ですが、いざという時、守れる人も守れなかったら、嫌です」


 「嫌って言われてもな、多分、無理や」


 またエドワードが黙ろうとするのが、わかったのかサイトはすぐさま言った。


 「多分、これは経験が作るもんやからな」


 「経験…ですか?」


 「悪くいうつもりはないんけどな。場数を踏んでないでないからな。多分、エドは訓練しても弱いままやで?」


 「それじゃあ、どうすれば良いのですか?」


 「場数を踏めと言いたいけど、無理やろうしな。でも、ずっと気にしてればええと思うで?」


 「それじゃあ、答えになってません」


 「答えになってへんでええよ。その好きな人を守ろうっていつも思ってんやろ。それでええと思うで?」


 少しエドワードは困惑していたが、レオナは言う。


 「わからなくてもいいがな、自分に気にしているトコロを気にすると言う事は自分を見つめなおしていると言う事だ。


 やっぱりお前は、他の金持ちとはどこか違うようだ。


 エドワード一ついいか?」


 「なんでしょう?」


 「お前はあんな女のどこが好きなんだ?」


 「と、とんでもない、いい女性(ひと)です。


 もともと私なんかにもったいないくらいなんです、一緒になれると知った時はどれくらい嬉しかったか」


 少し早口に告白という名の弁明するので、男性陣は一気に興味が沸いた。


 「よし、エドワード、今日は飲もうじゃないか?」


 「そうじゃのう、どう好きなのか教えてほしいのう」


 色恋沙汰に花が咲くというのは女だけではないのだ。


 その時である。


 「ふっ、随分と楽しそうだな」


 レフィーユが入ってきた。 

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