第三十二話
そうして、レフィーユにセルフィと共闘で、その謎の覆面男を撃退した事、自爆した事を話すと、レフィーユは言った。
「なるほど、確かにあの夜の内に、私も立ち会った上で現場検証はしたのだが。
セルフィが言った場所に地面にこげたような跡が確認された、だが、綺麗になくなっていたと考えれば納得がいくな」
「レフィーユさんの方にやって来た人たちも覆面つけてました?」
そう言って、誰も見ていないのを確認して、闇で、あの時に見た覆面を再現して、握りつぶすとレフィーユは頷いた。
「ああ、そんな感じのを着けていたな。おそらく同一の装備、同じ自爆装置がついていると思って良いだろう。
そして私の方にはボスらしいのも後方にいた」
「どうでした?」
「残念ながら、何が起こるか警戒していて動けない私をずっと目を離す事無く監視していたから遠目でしかわからなかったが、間違いないだろう」
「それでアルマさんは?」
「そのまま逃げた…と言いたいが、かなりの大勢が彼女を追って行ったからな。
だがお前の方にナンバー2が向かったため、他は雑魚で大丈夫だと思いたいがわからんな。あれから連絡もない」
「アルマさん達は、あの組織の存在を見せたかったのですかね?」
「だが、あそこまで大掛かりにやるのは疑問が残る。
確かにカリフという存在が、あの組織を知っていたなら、何故『見せる』必要がある?
あのオズワルドと拘束しようとした動きは、秘密の組織として、表なり影なりで動けると思えたぞ?」
「何かの陽動ですかね、エドワードさんは大丈夫だったのですか?」
「夫妻とも無事だ、カリフが陽動を要して危害を加えるという線はないのかもしれないな」
「そうですか…、ミン・チョンワ殺害の無実を自分達に証明させたかった」
「なら、どうして日記帳をお前に手渡した?」
『持っているなら返せ』とレフィーユは手のひらを見せたが『駄目です』とすぐさま言う。
すると『まあいい』と妹と同様にやけにあっさり引き下がるので気になりもしたが…。
「さすがに無理がありますか」
口の堅い彼女を突き崩すのは目に見えていた。
わからない事だらけだった。
カリフ、日記帳、どうやって盗んだのか、七色同盟、謎の集団、全ての状況、全ての情報はオズワルドの指示でほとんど制限されていた。
「八方ふさがり…か…」
「どうしましょうか?」
「ふっ、私に聞くな」
だが、微笑みながら言った。
「まあ、状況は変わらんだろう。
今はようやく治安部がオズワルドの傘下から逃れた事を、アルマに感謝しておくさ」
「随分と前向きですね?」
「昔、言っていただろう。まずは第一歩だ」
「あれ、そんな事、言いましたっけ?」
「ふっ、確かに言ったぞ。私がお前の言う事を忘れると思うか?」
「忘れましたね」
「なら、私の格言にさせてもらおう。ところで、イワトがお前の事を探していたぞ?」
「あれ、そうなんですか?」
「どうもエドワードの事で話があるそうなんだが…。
言っておくが一応『特別な』客人なんだからな、変な事はするなよ?」
「まあ、気をつけます」
そう言って、少し離れてイワトの携帯に連絡をいれた。
「もしもし、イワトさん、携帯があるのですから、そっちを使ってくださいよ?」
「はは、すまんのう。ワシは会うほうが良いと思ったんじゃ。
それで放課後、エドワードはワシが連れてくればいいんじゃろ?」
「はい、それじゃあ、よろしくお願いします」