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第三十話

 セルフィの攻撃を慌てながら覆面男は転がりながら避けると、セルフィは言う。


 「放ちなさい!!」


 そう言われたからか、それとも始めからそのつもりだったのだろうか、覆面男の見た光景は魔道士が闇を放った後だった。


 間髪入れず、自分を捕らえに放たれたアナコンダは、大きく頭上へ弧を描くので余裕で逃げられると覆面男は思っただろう。


 …しかし、そのアナコンダは三叉(ヒドラ)八叉(オロチ)に、セルフィによって作られた足場に当たるたびに蛇は神話へ進化する。


 覆面男が刀剣でその蛇に対抗する時には、無数(メデューサ)を相手をしていたのかのように足が石になったのかと思われたくらい、空中で何かに躓いた。


 「や、やめるんだ、お前は七色同盟である名誉を汚すつもりか!?」


 何とかこらえきり、覆面男はセルフィをもう一度、説得しようとするがセルフィは冷徹に攻撃をしながら答える。


 「うる、さいわねっ!?」


 思い切りフルスイングして、受け止めた男を吹き飛ばしながら自分の作った足場に飛び乗り、逃げた方向に再度飛び掛る。


 逃げた男は地をはって自分を捕縛しにかかる『闇』に対応を追われている間に、セルフィの攻撃も相手をしなければならないのでさらに不利は続く。


 「まさか、操られているのか?」


 セルフィは攻撃を加えるなか、ハルバートを構えなおしながら答える。


 「ふん、私は自分が納得出来る行動がしたいだけよ!!」


 その様は、まさに自分で行動しているという、いい証拠だった。


 「せいっ!!」


 そんな最中にそんな歓声が聞こえて、セルフィの横を、闇がまた地を這う。


 「それにそんな人が、覆面をとれず…」


 それを追っかけるように、ハルバートも襲う。


 「素性も明かせず…」


 逃げた方向にさらに闇が、地を這う。


 「それで人を見下すなんて!!」


 ハルバートの一撃の後にさらに闇が…地を這う。


 「アンタ何様よー!!」


 さらに攻撃、その後に闇が地を這う。


 「……」


 セルフィは怪訝そうな顔をしながら、ためしに攻撃をする。


 空振った…、そんな自分の足元を、いや、その横を『シャー』と滑走していくので、覆面男も怪訝そうにあっさり避ける。


 「にゃー」


 「待ちなさい」


 もう一回、横を通ろうとした闇をまるで、サッカーボールをトラップするように踏みつけてこっちを向いた。


 「何でしょうか、セルフィさん?」


 「まじめにやりなさい」


 「やる気出したいのですがね…」


 「…どうしたのよ?」


 そういいながら、セルフィは自分の視線の先を追ったその先は公園だったが、先ほどより静かになっていた。


 自然とアルマとその仲間達は逃げたのだろうか、それとも捕まったのだろうかとも思いもしたが、聞きなれた声が状況を報せた。


 「まて追うな、今は安全の確保が先決だ。


 みんな無事か!?」


 「どうやら、終わったようですね。セルフィさん…」


 「何よ?」


 「これ以上、手間を取ったら騒ぎを聞きつけてこっちにやって来かねませんから、代わってもらえますか?」


 「何、言ってるのよ。


 それを私がやってるのでしょう?」


 「まあまあ、そう言わずに、私なら10秒も掛からず、行動不能にできますよ」


 「ふん、面白いわね…。


 じゃあ、いいわよやってごらんなさい」


 「いやにあっさり引き下がりますね?」


 「ふん、何事も効率が良いに越した事はないでしょう?」


 納得しながらセルフィと入れ替わり『どうも』と軽く頭を下げたのが気に食わないのか、覆面男が答えた。


 「笑わせてくれるな、これでもこの組織でナンバー2と呼ばれた私を10秒で捕らえるだと?」


 刀剣を握り締めて、膝が曲がる。飛び掛ってくると同時に答えた。


 「やってみるがいい!?」


 一撃を法衣で包まれた腕で払い、更に立て続けに放たれた連撃を腕や身体を捻り避ける。


 「やるな、だがまだっ!!」


 一旦、距離が離れた、しかし、覆面男はそれを読んでいたのだろう。いち早く距離を詰めよう身を屈めた。


 その時だった…。


 「はい」


 何かが放り投げられたので、物質的なモノだったので覆面男は反射的にそれを受けとると驚いた。


 「こ、これは…」


 驚きながら、魔道士の方を見るが、その魔道士は背中を向いていた。


 「にっぎゅ!!」


 何を言おうとしたのだろうか、途中で覆面男の腹部に後ろ回し蹴りが見事に決まる。


 魔力による防御本能も効かない、完璧な一撃にお腹を押さえ悶絶する中、魔道士は言った。


 「セルフィさん、『確保』お願いします」


 「ふん、14秒掛かってるじゃない?」


 「ホントに計ってたのですか?」


 そう言いながらセルフィはハルバートで器用に覆面男を組み伏せ手錠を男の後ろで掛けると、自分が拾ったモノが見えたのだろう。


 「信じられない、アンタ。『日記帳はここにはない』って、言ってたじゃない?」


 「一応、こういうのは油断させる手口としては最適ですからね」


 「アンタね、言っておくけどそれ国宝なのよ?」


 手を広げてこう言った。


 「それを返しなさい」


 「それは出来ませんね」


 『ずぶずぶ』と音を立てながら日記帳を懐にいれながら身構える。


 しかし…。


 「あっ、そう、ならいいわ。大切に持っておく事ね」


 普段なら、突っかかってくるセルフィは引き下がった。


 「貴女もですか…」


 「何よ?」


 「今回の事に関してですよ。レフィーユさんにしても、貴女にしても今回の騒動には少し無頓着なのでは?」


 「どういう意味よ?」


 「あの金庫の前で、レフィーユさんも貴女のように『よこせ』と言いましたよ。


 ですが、貴女の様にあっさり引き下がったので、とても気持ち悪いじゃないですか」


 「ふん、あの沈黙ってそういう意味があったのね」


 ホントはそういう意味ではないが、今回、レフィーユ、いやこの姉妹は『七色同盟』の言葉が出ると嫌そうな態度をとるので少し、遠まわしに聞いてみた。


 しかし、遠まわしすぎたのか、それともバレバレだったのだろうか。


 「まあ、気にしすぎじゃないの?」


 うまくはぐらかされたのを呆れていると、覆面男が目を覚ました。


 「ここまでか…」


 「動かないで、もう一度言うわ。


 所属と…」


 「私は捕らわれただけで、我々は決して口を割らん!!」


 セルフィの言葉を遮り、覆面男はまるで口をかみ締めるように思い切り首を曲げる。


 「な、何?」


 何か『不味い』と思った。


 慌てて、セルフィ駆け寄り、覆面男から引き離した。


 ドンッ!!


 その時、覆面男の身体が大きく痙攣した。


 自分にしても爆発して自爆をすると思ったので、衝撃の備えていたが、そんな鈍い音しかしなかったので、セルフィをかばったまま後ろを振り返る。


 「ぐ、あっ!!」


 覆面をしているからわからないが、おそらく血を吐いたと思った。


 何故なら、男の胸の辺りが大きく穴が開いていたのだから…。


 ドン!!


 「るうううううう!!」


 そんなうめきをあげ、肩がまるで抉られたように爆発したのでセルフィもたじろいだ。


 その様を見て思わず、自分の後ろに引き下げたのは幸いだった。


 ドンドンッ!!


 顔より上、その頭部が抉れたのだから。鈍い爆発の中、男の痙攣がおさまる。


 「な、何なの?」


 「秘密維持のための…自爆…でしょうか…」


 男の着ていた装備や覆面にもそういう機能がついていたのだろうが、あまりにも趣味が悪かったので、少し困惑していた。


 「いつまでこうしてるのよ?」


 そう言われてようやく、セルフィを抱いていた体勢であったが状況が状況なので、セルフィは何も言わなかった。


 「何だ、今の音は?」


 「あっちから、聞こえたぞ?」


 外部にも爆発音が聞こえたのか、男のいた場所を視線を戻すと、ここで数分前まで戦闘があったのが不思議なくらいが何もなかった。


 「ありがとう、一応、礼は言っておくわ、特別に見逃してあげるから、もう帰りなさい」


 そう言ってセルフィも現状は理解しようとしているのだろうか、腕組みをして考え込んでいた横を通り過ぎた。



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