第三話
「はい?」
「おや、ここはイワトの部屋ではなかったのか、どうしてお前が対応に出てくるのだ?」
「私はただ、入り口の近くにいたため、イワトさんの代わりに出ただけですよ。レフィーユさんこそ、威圧感を遺憾なく噴射させて、何をしているのですか?
気のせいか、男性のすすり泣く声や音が徐々に大きくなっているような気がするのですが?」
「ふっ、気のせいだろう、だが確かに今は何かを最中だ、ここを出ないでほしいモノだな」
「えっ、どうしてですか?」
「…どうしてもだ」
そう言って、自分の後方をみて人数を確認しながら。
バタンッ!!
「ふう…」
レフィーユに『見張りは置いておくからな』と言われもしたが、ここにいる六人全員、安堵の息を吐き出し、マサカズ・サイトは答えた。
「なあ、ガトウ、やっぱレフィーユさんの狙いはコレなんやろか…」
「…だろうな」
そう言って、ガトウ・レオナは隣に座るイワトと負けず劣らずの身体を捻り、先ほど言った『コレ』に視線を向ける。
すると双子のキリウとシリウがハモって答えた。
「「回覧板…」」
そして、イワトが六人目の自分に向け、こう頼る。
「アラバ、どうにかならんのか?」
「無理ですね、ああなったレフィーユさんは誰にも止められませんよ」
そして、再度、ため息が充満したため、思わず全員が『回覧板』に目を向ける。
通称、男の回覧板…。
まあ、最初にあったような本を集めたモノと、今はそう言っておこう。
だが、何故これを『回覧板』と呼ばれるようになった経緯を説明しておこう。
男という生き物は、その手の本を買うに至るまで、様々な抵抗があると思う。
だが、男は勇気を持ち、買うに至る。
しかし、その勇気が時折、災いする。
女性が想定しているより、『過激な』内容の本だと知らずに手にしてしまうという事だ。
本来なら『捨ててしまえば話は済む』と思うだろう、しかし、情けない話だが捨てれない男が世の中には確実にいる。
しかも内容が『過激』だ。
家族、母親に見られたら…。
机の上にも置かず『頑張ってね』と間違いなく肩を叩かれるだろう
そして、そんな危険なモノを捨てに行くのを誰かに見られでもすれば…
そこで数代前の先輩達はコレを作ったのだ…。
「確か、この回覧板って、見られたら…自己責任ですよね?」
実際、その混沌、いかがなモノかと垣間見た事があるが、大した量になっているとは思う。
その募りに募った『混沌』は、男子生徒全員、普段口にする事はない。
バレたら、自己責任なのだ。 誰だって、不幸な学園生活は送りたくないだろう?
だが、この目の前に圧倒的な存在感は噂として息をしており、ユカリからレフィーユへ、そして彼女は単刀直入、自分に聞いてきた。
「なあ、アラバ、男の回覧板って知っているか?」
多分、自分はその時、うまく誤魔化したと思う。
だがしかし、周囲の男子生徒全員が確実に氷ついたのだ。
そして、彼女は理解したのだろう。
この男は、嘘を着いていると…。
「しかし、今回ばかりアカンやろ、これを守るにしても、相手はあのレフィーユさんやん、素直に降伏した方がええって」
レフィーユ・アルマフィを敵に回す。
それがいかに困難な事か、六人全員、理解はしていたのだが…。
「そこの全員、動くな!!
っ!?」
この引くわけ行かない、戦いは…。
バケツが彼女の目の前にすべり降りてくる事で静かに始まったのであった。