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第二十七話

 アルマの闘いは囮。


 今のレフィーユの周りはオズワルドによって買収されていたらしい。


 『彼女の動きは逐一連絡しろ』


 …そんな感じだろうか、オズワルドの指示のおかげでレフィーユは捜査をする事が困難になっていたらしい。


 アルマはどこでそんな事を知ったのだろうか、先ほどの連絡はその買収された治安部員の解放とオズワルド配下の警備員を一掃するのが目的だったらしいのだが…。


 アルマのそんな提案を持ちかけられた時、彼女と二人で思った事。


 それは気味が悪い…


 という一言に尽きなかった。


 「どうして、後を尾いて来たのだ!?」


 「あはは、良い気味だね。


 無能な警備員に買われた治安部、それらを捕らえられて身動きが取れないかい?」


 「ちぃ」


 そんな自分はそんな三文芝居を少し離れた場所で、警戒のために闇で作られた法衣を身にまとったまま見守っていた。


 あまりにも軽率すぎるアルマの行動を、公園を一望できる建物より上から見下した後、周囲を警戒するがアルマの狙いが何なのか理解出来ないのは、最大の『不利』には変わりない。


 まだ茶番は続いている。


 レフィーユも話しながらでもあるが周囲を警戒しているのが、ここからでも違和感が感じ取れる。


 それだけあまりにもアルマの描いた台本通りに進みすぎるのだ。


 治安部の一人が何とか反撃の糸口を掴もうとアルマに迫る。


 しかし、これも台本だ。


 アルマの攻撃をくらい。その場で彼女に半ば羽交い絞めに取り押さえられる。


 その拍子にアルマは夜だと言うのに自分のいる場所を見たような気がしたので慌てて身を屈めて、様子を見るが、どうやら気のせいだったらしく。


 アルマは次の展開に身体を動かす。


 当然、自分は見逃さないと先ほど捕らえた治安部員を背後から傷を負わせるという話だ。


 「背後からなら、防御本能は作用しないからね。


 不意のタイミングで人質を傷つける事など、普通の人でも簡単だってキミは知ってるよね?」


 そういうアルマの一言に、レフィーユは舌打ちをして、頷きざる終えない状況の作り、オズワルドを睨みつけ、後の展開を優位に展開させる。


 まだアルマの台本の展開どおりに進む、レフィーユもまだ冷静だ。


 おそらくレフィーユの携帯番号を教えてもらおうとした、そのやりとりでアルマは自分の存在がどこかにいると考えられていると思っていいだろう。


 さっきからアルマもキョロキョロ動いていたのが見て取れたからだ。


 気味の悪い茶番が続く中、月明かりが自分を照らされ影がゆっくり伸びる。


 そしてここにはもう一つの影があった。


 その影は自分を見ていたのが解ったので、ゆっくりと身体を起こした。


 「やはりいましたか…」


 自分より頭上を見上げると、虚空を浮いていた人物が飛び降りながらハルバートを振り下ろす。


 「私の方こそ、やっぱりいたわね…」


 後ろに飛びのきながら見ると、その人物はくるくるとハルバートを身構えた、そこに立っているのはレフィーユの妹、セルフィッシュ・アルマフィだった。


 「いい勘をしていらっしゃると言いたいのですが、私に構うほどの貴女は暇があるのですか?」


 眼下では茶番、目線には純粋に立ち向かおうとする戦乙女(ヴァルキリー)は同じように眼下に広がる景色を眺めた。


 「尾行して手柄を横取りなんてしようとするから、ああなるのよ。いい気味じゃないの」


 「随分とオズワルドさんの事をお嫌いになっていますね?」


 「はっきり言って嫌いね。世間じゃ、トラン家の御曹司だけど、実質、ワールド・ゼロの七色同盟の記念館の館長、その警備部隊の部隊長」


 「立派な肩書きじゃないですか?」


 「ふん、アンタね。


 私は見たから言わせてもらうけど、あんなのただ命令しているだけの人よ。


 現場も知りもしないで、部下の日誌も見ないで判断する。


 あんなの部隊長じゃなくて、愚隊長よ。


 それでいて、七色同盟の肩書きであぐら掻いて税金やらで収入を得られるのだもの。


 そのお金で『幹部会』なんて宴会を開いているのだから、姉さんと感じた印象は一緒よ」


 「いい税金泥棒ですね」


 「言い訳はしないわ。


 でも、この町に来て思ったけど、私にとって貴方はもっと嫌いな人物よ」


 セルフィはハルバートを構え、空を見上げながら言った。


 「静かな夜よね?」


 そう言われたからだろうか夜なので視界が悪いためか、景色を見回す。


 「初めてよ、夜に鳴く虫をここまで聞き入るなんて」


 『りんりん』と普段聞いている名前のわからない虫が、それが何が気に食わないのかわからないうちにセルフィが言う。


 「初めてよ、ここまで寝入れるなんて…」


 「それが何か?」


 「静か過ぎるのよ…」


 そういえば、レフィーユに聞いた事があった。


 この町の夜はとても静からしい。


 さすがに事件が起きれば騒がしい時もある。


 しかし、彼女のいた町、いや、今の世の中の『町』と呼べるものは、とても騒がしい。それこそ目を瞑れば、サイレンの音がするくらい。


 人間には環境適応能力ある。


 それは人間が日中、サイレンが鳴る日常を睡眠をとらせるほど。


 だが、レフィーユの言う異常は妹のセルフィも感じたのか…。


 「レフィーユさんの活躍のおかげではないのですか?」


 そんな返答にも軽々と答えた。


 「違う、アンタの存在のせいよ」


 「どういう事でしょうか?」


 「ふん、考えれば簡単よ。


 所詮、治安部には学業をおろそかにしないように活動時間の限界があるように、正義には限界があるからよ。


 そんな中でアンタは『無差別』だわ。


 正義に加担すると思えば、こんな感じで悪にも加担する…」


 セルフィはアルマに指を差したまま、そして、昔、レフィーユと出会った時の答えを言った。


 「その証拠に姉さんは、私のいる町でこんな夜を作り出せてない。


 …私は認めない、貴方の存在のせいで良きも静まるもおろか、悪しきも黙る、この町を!!


 だから、貴方を認めるワケにはいかないわ」


 『私は私のやり方で正してみせるわ』


 そして、彼女のそんな一言にやはり姉妹だなと思ってしまいセルフィを見ると、知る由もない彼女は身構えていた。


 こうなると言うしかないだろう。


 「『この前は、油断をしただから負けた』とは言わせませんよ?」


 「ふん、アンタだけには絶対、油断はしたくないわね」


 そんなセルフィの一言は、逃げられない事を感じ取らせていた。

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